マリー・アントワネットお気に入りの肖像画家ル・ブラン夫人は、アントワネットと同い年。ル・ブラン夫人はアントワネットよりも先に身ごもる。身重の体で、アントワネットの肖像画制作に取り組む夫人は…。
ル・ブラン夫人の評判を聞いたアントワネットから、「肖像画を描いてほしい。」との依頼を受けたとき、夫人は24歳。初めて王妃に出会った時の印象を、夫人はこう綴っている。
王妃さまにお会いになった事のない方に、あの溢れるような優雅さと気品の高さが1つに融け合った美しさというものを理解させる事は、とても困難です。お顔の中で1番魅力的なのは、その輝かしいお肌の色でした。こんなにも輝かしいお肌の色は、私、他に拝見した事がございません。何しろ、その透き通るようなお肌には、影も差すまいと思われる程でした。王妃さまの肌を表現する、どんな絵の具も私は持ち合わせていませんでした。
↓ 池田先生はル・ブラン夫人の回想を、劇画に取り入れている。
↓ 身重の体で、アントワネットの肖像画制作に取り組む夫人は、うっかり床に絵の具をばらまいてしまう。
↓ 床に落ちた絵の具を、おなかの大きい夫人に代わり、アントワネット自ら床に膝をかがめ拾う。何かとしきたりにうるさいフランス宮廷で、王妃がこのようなことをするのは異例中の異例。もしこの場にうるさ型のご夫人がいたら、「まあ、なんてことを!」と大騒ぎしただろう。
↓ このエピソードを別の画家 Alexis-Joseph Pérignonは、下のように描いた。「すみません、王妃さま。」「いいのよ、あなたはそのままでいなさい。私が拾いますから。」そんな声が聞こえてきそう。二人は王妃と画家という関係を越えた信頼関係で結ばれ、その後アントワネットは自分や子どもたちの肖像画の多くを、ル・ブラン夫人に委ねることになる。
↓ いつの時代も、女性にとって「生む・生まない(生めない)」はとても大きな問題。アントワネットに「母になるというのは きっとどんなにか幸せな気持ちでしょうね」と言われ、ル・ブラン夫人はどう返答したらいいか困っただろう。
アントワネットには良きにつけ悪しきにつけ、さまざまな言い伝えが残っているが、このエピソードから彼女はとても心優しく、いざという時は臨機応変に 行動に移せる女性に感じられる。人を悪く解釈しようとすれば、とことん貶めることができる。そしてなかなか良い話は伝わらぬもの。昔も今も「人の不幸は蜜の味」だから。
読んでくださり、ありがとうございます。
アントワネットの人柄や、2人の親密な関係がわかるすてきな絵ですよね!
>アントワネットの人柄や、2人の親密な関係がわかるすてきな絵ですよね
二人は同い年だったから、とても明るく盛り上がっていたはず。アントワネットはルブラン夫人には心を許し、何でも打ち明けていたかもしれません。モデルと画家を越えた親しい間柄だったように思えます。