goo blog サービス終了のお知らせ 

Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

エピソード5 ジェローデル編 後編 (3)

2014-11-08 12:43:31 | つぶやき

 フェルゼン邸で夜を徹して語り明かした二人に、別れの時が近づいてくる。

 既にジェローデルの家族は他国へ亡命。(うんうん、それは十分にありうる。あの一家ならギロチン行きの危険が及ぶ前に、ちゃんと逃げたであろう。)そして察しのいいソフィアは、ジェローデルがフランスに戻ることを見通してしまう。今回のエピソードを読んだ時、ソフィアと「オルフェウスの窓」のヴェーラが被って見えた。二人とも兄の身を案じつつ、自分の感情をしっかりコントロールして理性を保つ女性。なぜジェローデルがフランスに戻るのか、その理由さえも冷静に分析してしまう。ソフィアは言う。「今また死地に赴こうとしているあなたを続けて見送るのは、あまりに辛うございます。」

 死地---この言葉をジェローデル自身もパリに向かう馬車の中で呟いている。ソフィアは、ジェローデルが死ぬ場所を求めてパリに向かおうとしていることがわかっている。だから本人を前に「死地」という言葉を使っている。ジェローデルもそれを否定しない。お互い、今がこの世で言葉を交わす最後の時であると知っている。

 死ぬ覚悟はできている。けれど「いつか もしも生きて再びお会いすることがあらば--- 今度はあなたをこの腕に抱きしめてのくちづけを許してくださるか----?」ジェローデルの遺言ともとられるこの言葉を胸に、ソフィアはおそらく生涯独身を通したのではないか?「お見送りはいたしません。」と言いつつも、馬車が停めてある玄関先まで一緒に行き、彼が乗った馬車の車輪が軋み、フェルゼン邸をあとにするのを窓越しに見つめている。

 「もしかしたら---この世でただ一人 理解し合えた人だったかもしれない プライドの高すぎるところまで 私たちはそっくりだった。」ベルサイユで、そしてフェルゼン邸で、夜を徹して語り合った二人には、男女の垣根を越えた同志のような連帯感というか、「自分たちは似た者同士」との思いが通じ合っていたのではないだろうか?互いの生い立ち、人生観、オスカルについてなどなどもろもろ語り合っただろう。ジェローデルを崇拝する美しい乙女たちは数多くいた。しかしソフィアは、彼をありのまま受け止めてくれる初めての女性だったろう。きっとジェローデルはこれまで女性に対し、弱い自分を見せることはしなかったはず。けれどソフィアとは腹を割って何でも率直に自分の想いを語ることができたと思う。そしてソフィアにとってもジェローデルは、その優雅な身のこなし、高いプライドなどに加えて、魂の奥深いところで共鳴できるものが感じられた唯一の男性であっただろう。しかしソフィアは聡明だから、決して自分がジェローデルに惹かれているとは告げない。彼の心にはオスカルの死後もなお、強くその面影が残っているのが分かっているから。パリ行きを引きとめたいところだけど、それはできないことも知っている。だからジェローデルの最後の言葉をずっと胸に刻んだまま、その後もスウェーデンでひっそりと生きていったと思う。

 ラストシーン、断頭台に向かうのはジェローデル?と一瞬思ってしまった。これはルイ16世?それともギロチンの露と消えた貴族の誰かだろうか?

 その後 フローリアン・F・ド・ジェローデルの行方は、杳として 知れぬままである---

 杳として---「杳」という漢字は、PCの単漢字変換で出てきた。広辞苑で意味を調べたら「暗いさま、深く広いさま、はるかなさま、はっきりわからないさま」とあった。あとは読者それぞれの想像で、ジェローデルのその後についてお考えください---との池田先生からのメッセージだろうか?そしてジェローデル編はこれですべて完結したことになるだろうか?

 全然話題が変わりますが、本編でジェローデルがオスカルに求婚するくだり。私はてっきり、ジャルジェ将軍(夫妻)がオスカルの行く末を案じ、「誰かオスカルにふさわしい相手はいないだろうか?」とジャルジェ家主導で話が進められたと思っていましたが、今回のエピソードを読むと、どうやらジェローデルのほうから積極的に売り込んだ様子ですね。彼はオスカルが「ウイ」と返事をしてくれる自信があればこそ、果敢にアタックしたのでしょうか? 

 まだまだ読みが足りない。また今後気がついたことがあれば、綴っていきたいと思います。

 読んでくださり、どうもありがとうございました。



4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ジェローデルの最期 (サンボ)
2014-11-08 15:58:16
後編、最期のページのギロチンのシーン
王政派の人間かもしれませんが、理代子先生はジェローデルもあのように断頭台の露と消えた、と言いたかったのかなと私は思います。
民衆の盾になったときの、オスカルの鬼気迫る美しさにとらわれたとき、自分の首が体から切り落とされて恍惚さえおぼえたといって、ギロチンになることなど全く怖くないとソフィアにいっているからです。発売して手にとってから何度も読み返し、これはいまの見解です。また読み返し感想はかわるかもしれませんが。
本編初登場から、エピソードの主役になるなんてすごい出世ですね。オスカル様の大好きなショコラを飲みながら考えてました。
返信する
サンボさま (りら)
2014-11-08 19:28:48
 コメントをありがとうございます。今、手元には「わが身体から~」のページを開いたマーガレットがあります。
 
 ちょっと猟奇的でエロティック、そして自分の首が切り離された場面を想像して、若干酔いしれているような気持ちでいるのでしょうか?

 オスカルを守った結果、ジェローデルは官位を剥奪されて営倉に閉じ込められる。(オスカルは何のお咎めもなしでしたね。)そして彼が現実と離れている間に、最愛の人は戦死する。

 ジェローデルの行方は杳として知れず---。私はフェルゼンの時のように、どこかで名もなき民衆たちに襲われ、人々は彼が誰であるかわからぬまま、野垂れ死にしたかな---とも思ってしまいました。

 あるいはサンボさまのおっしゃるように、彼もまたギロチン行きになったかもしれない。

 今後も読んでいくうちに、違った考えが浮かぶかもしれません。でもそれでいいのだと思います。答えは1つではない。こうして自分以外の方のお考えを知ることができるのも、とても嬉しいです。ありがとうございます。
返信する
ソフィア (アナスタシア)
2014-11-11 20:44:18
ソフィア フェルセンで検索したらソフィアの肖像画や結婚歴が出てきました。二度結婚して二度とも死別だそうです。感想興味深かったです。どうもありがとうございました
返信する
アナスタシアさま (りら)
2014-11-11 21:37:03
 初めまして。コメントをありがとうございます。ソフィア・フェルセンの生涯について教えてくださり、ありがとうございます。検索で出てきましたか?実在の人物ですから、何かしら記録が残っているはずと思っていました。

 二度結婚して、二度とも死別。兄の不慮の死も経験し、ソフィアは結構重い人生を歩んだのですね。彼女は兄とアントワネットの仲をどう思っていたでしょう?アントワネットに出会わなければ、幸せな人生を送れたかもしれないのに---と思ったかもしれませんね。

 とても貴重な情報をありがとうございました。
返信する

コメントを投稿