Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

命がけの出産

2017-12-25 00:01:43 | つぶやき

 昔も今も女性にとって妊娠・出産は命がけ。妊娠がわかった時は子どもを授かった喜びを感じるが、無事出産を終えるまで中世から近世の女性たちは死を覚悟して日々過ごしていた。

↓  「暮らしのイギリス史」 ルーシー・ワースリー著 (NTT出版) を読んだ。

 

 中世そして近世、女性が出産で命を落とす人数は、男性が戦場で死亡する数より多かった。しかも無事生まれた子どもたちの19%が2歳前に亡くなっている。さらに27%が18歳前に死亡。成人になる率は54%。政略結婚政策で領土を広げたマリア・テレジアは生涯に16人子どもを生んでいるが、そのうち5人は16歳前に亡くなっている。王侯貴族たちの子どもは、栄養面では庶民よりはるかに恵まれていたはずだけど、今と違って予防接種や定期健診などない時代、感染症で命を落とすことが多かった。アントワネットは4人身ごもったが、そのうち2人は幼くして亡くなっている。

 出産は命がけ…妊娠がわかった女性は、自分に万が一の事態が起きた時に備え肖像画を描かせた。もしものことがあったら、この絵を見て私を思い出してほしい…そんな想いをこめて。

↓  ルイ14世の母アン王妃、出産1か月前 1638年

↓  人物不明 1578年 イギリス

↓  人物不明 1595年、イギリス

↓  スペイン王女マルガリータ 17世紀

 ジャルジェ夫人はオスカルを含め6人出産。全員が成人になれたとしたら、これは当時としてはかなり奇跡的。アンドレは一人っ子のようだけど、もしかしたら彼にも兄弟姉妹がいたかもしれない。けれど何らかの理由で亡くなった可能性もありうる。

↓  陣痛が起こり、お医者さまを呼ぶよう依頼するジャルジェ夫人。この時代、出産は自宅で行われた。ルイ14世以前、出産を取り仕切るのは産婆さんで、男性医師がお産室に入ることは許されなかった。夫以外の男性に、体を見せたくないとの思いもあった。しかし17世紀後半、産道を出てこられない胎児の頭を引っ張る道具(鉗子)がイギリスで考案され、それを使える男性助産師が産婆に代わり、お産を仕切るようになった。ルイ14世は愛人の出産に際し、男性助産師を指名している。

↓  ジャルジェ夫人の出産を担当したのは男性医師。この人が初めてオスカルの体に触れた人。ジャルジェ将軍がもしオスカルを軍人として育てず、夫人に7人目の子を生むよう願ったら、夫人は命を落としていたかもしれない。

 今日はオスカルの誕生日。すべての人が平和で健康に暮らし、愛に満たされたくさんの幸せが訪れますように。

 おまけ

 帝国ホテルアーケードで12月1日から12月25日まで、第8回スイーツアート・コンペティション作品展が開催されている。毎年見ているけれど、どれも「これがすべて砂糖でできているの?」と思うくらい、イマジネーション豊かで夢のある作品ばかり。今年は「Royal Antoinette」と題した作品が出展された。

↓  こちらがアントワネットをイメージしたスイーツ。

↓  まるで本物の花のよう。ドレープの質感が見事。

↓  お茶目なアントワネット。さてお味はいかに?

 読んでくださり、本当にありがとうございます。



6 コメント

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彼女の誕生日に向けて (あまぞう)
2017-12-25 13:14:12
りら様を始め、皆様のブログやSSの更新があり、とても嬉しくなります。
今回はお産のお話でしたが、ジャルジェ家は、姉妹全員無事に成長していたと思いたいですね。アンドレの兄弟がいたとしたら、弟か妹っぽいです。その両方の役割をオスカルが担っていたという?
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あまぞうさま (りら)
2017-12-25 21:58:08
 コメントをありがとうございます。

 「ベルばら」ファンにとって、12月25日は特別な日。多くの人がオスカルを偲び、想いを表現しますね。

>その両方の役割をオスカルが担っていたという

 ああ、なるほど。そういうふうにも解釈できますね。ふたご座のカストルとポルックスでもあり、アンドレの妹兼弟的存在だったりして。この記事を書いていた時、アンドレってなんとなく一人っ子に思えなかったのです。またまた妄想が湧いてきます。
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りら様 (marine)
2017-12-25 23:24:46
Merry Xmas🎄!
今日はオスカルの誕生日ですね。
西洋には妊婦姿の肖像画が沢山あるんですね。日本では見たことが無いような気がします…文化の違いでしょうか。

話は変わりますが、私もアンドレに兄弟がいたとしたら、妹が弟のような気がしてました。アンドレ、良いお兄ちゃんのイメージがあります。

今年一年、色々ありましたが、心の拠り所の1つがりら様のブログでした。
お茶を飲みにカフェに寄るような気持ちで、とおっしゃるりら様の言葉通り、ふと、見てしまう。自分の知らない、でもとても興味のある事がいつも書かれていて、つい、コメントもしてしまう。丁寧なお返事をいつもくださり、嬉しいです。
今年も本当にありがとうございました。

クリスマスが過ぎればいよいよ年の瀬ですね。年とともに、あまり年末年始の忙しない感じが苦手になってきてます。怠け者みたいですが(汗)。
インフルエンザなどの風邪が流行り始めていますので、くれぐれもご自愛ください。
りら様はじめ、読者の皆様も、良いお年をお迎えくださいませ。
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ノエルですねえ (冬萌)
2017-12-25 23:39:30
かな~り、お久しぶりにお邪魔します。

>アンドレが一人っ子に思えない。
今まで考えもしなかったけど、あるかもしれませんね!
ちょっと目から鱗かも。

私の父(生きていれば85歳)は8人きょうだいの末っ子ですが、戦後には半分になってたようです。
ひとりは特攻に散ったのですが、それ以外は早くに病死したみたいです。
ほんの何十年か前でさえそうだったんですものね。

私自身は無事にひとりだけ出産を経験しましたが、おかげさまで命がけという程ではなかったです。
いろんな意味で、昔の人は偉かったなぁ、自分なんて甘いな、そう思います。

どんな小さないのちも祝福を受けますように。
そんなことを思わせてくれる聖夜です。




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marineさま (りら)
2017-12-26 22:37:00
 コメントをありがとうございます。

>日本では見たことが無いような気がします…文化の違いでしょうか

 着物だとあまりお腹が目立たないせいもあるのでしょうか?西洋に比べ、女性の肖像画が少ない気もします。

>アンドレ、良いお兄ちゃんのイメージがあります。

 とても面倒見の良い兄貴ですよね。それはアランとのやりとりを見ていても感じられます。妹がいたら、絶対に守ってあげたはず。

>心の拠り所の1つがりら様のブログでした

 そう仰っていただけると本当にうれしいです。独り言を連ねているような文章を読んでいただき、そのうえコメントをいただけると励みになります。限られた自分の時間を、いかに「ベルばら」に振り分けるかが難しいのですが、これからもゆるりと書き綴っていけたらなあと思っています。

 年末だから大掃除しよう…はやめました。マスコミや人の価値観に惑わされず、「自分は自分」で日々過ごせたらなあと思っています。marineさま、どうか良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。
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冬萌さま (りら)
2017-12-26 22:47:05
 コメントをありがとうございます。

>ほんの何十年か前でさえそうだったんですものね。

 今でこそ日本は長寿国ですが、80年くらい前までは、中世や近世と同じ状況だったはず。そんなに遠い昔ではありませんね。イギリスのヴィクトリア女王の場合、妊娠が分かった時点で側近たちが万が一の時、、政権をどうするか議論していました。医療技術が進歩し、救える命が増え、ありがたい時代に生きているんだなあと実感します。

>いろんな意味で、昔の人は偉かったなぁ、自分なんて甘いな、そう思います。

 我慢強いことが必ずしも良いとは思いませんが、それでも自分も精神的にも体力的にも、昔の人より劣っていると感じることがあります。

>どんな小さないのちも祝福を受けますように

 そして大きく育ってほしいです。
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