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遠い家への道のり (Reprise)

Bruce Springsteen & I

Bruce Springsteen "American Land"

2008-12-11 06:11:36 | Bruce Springsteen Live
一体このアメリカという地は何なのだろう
それは多くの人が旅をしてやって来る
俺も出かけよう まだ若いうちに
ダーリン、向こうで会おう
幸運を祈ってくれ 落ち着いたら手紙を書くよ
そしたら俺達の家を建てよう アメリカの地に

そこでは女性はみんな膝まで届く絹とサテンのドレスを纏い
いいかい、子ども達、
聞いたところじゃ砂糖菓子が木に成るそうだ
金が川からその手に勢い良く流れ込んでくる
このアメリカの土地に家を建てるなら

歩道にはダイヤモンドがきらめき
側溝は歌で満ちている
栓をいくらひねっても一晩中ビールが湧き出るという噂だよ
仕事に励む者なら誰でも 宝物が自由に手に入る
このアメリカの地に家を持とうという者なら

光と尖塔の街のエリス島に舟をつけ
赤熱した鋼と炎の谷まで放浪した
俺達が汗をかきながらこの手で鋼鉄を作り、都市ができたのさ
そして俺はこのアメリカの地に我が家を建てた

マクニコラス家にポザルスキ家、スミス家の人々に、ゼリッリ家の人
黒人もアイルランド人も、ドイツ人もユダヤ人も
海を渡ってやって来る 故郷から何千マイルも離れて
空腹を抱え、熱意だけを携えて

彼らは鉄道を建設する中、骨と皮になるまで働いて死に、
畑や工場で命を落とし、風の中にその名前を散らしていった
100年前、この地に向かう途中で亡くなった者もいる
そんな人々は今その数を減らしつつある
この国を築いた人々を俺達はずっと抑えつけようとしているんだ

歩道にはダイヤモンドが光り
側溝には歌が溢れている
どれだけ栓をひねっても一晩中ビールがとめどなく出てくるそうだ
懸命に努力する者なら誰でも 宝物が自由に手に入る
アメリカの地に家を持とうという者なら
アメリカの地に家を持とうという者なら
アメリカの地に家を持とうという者ならば

ENGLISH


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『Live in Dublin』の中で聴くに相応しいこのアイルランド民謡風の作品は、"I Lie in the American Land"という詩からインスピレーションを受けています。
この詩はAndrew Kovalyという1899年にスロヴァキアからアメリカに移民としてやって来て、ペンシルヴァニア州の製鋼工場で働いていた人の作品です。(何となく『万葉集』にありそうな感じがする。)
詩の書かれた背景についてKovaly自身はこう語ったそうです。

「1人の仕事仲間がお金を貯めて家族をアメリカ呼び寄せたのだが、彼は家族がアメリカへ来る途中で、私の目前で工場の事故で亡くなってしまった。私は彼の妻と幼い子ども達を鉄道の駅に迎えに行った際、あまりに気の毒でどのようにしてこの知らせを告げるべきか分からなかった。そこでこの歌を書いたのだ。友人はアメリカを誇りに思い、誇りと幸福を感じながら子ども達をアメリカ人として育て上げる事を楽しみにしていた。」参考

後にピート・シーガーがこの詩を曲にして彼のレパートリーに加えました。元の詩はこちらで読む事ができます。ブルースの"American Land"は1連目が明らかな引用となっています。

私は11月の大統領選挙を経験して以来、この曲の魅力が益々増したように思います。オバマ氏の勝利宣言とも重なる部分の少なくないこの歌詞が今現在このアメリカという国でどれだけリアリティを持って聴く事のできるものか実感する事ができたからです。建国の歴史と伝統を振り返り、そこに愛情を覚えながら、現代にその純粋な思いをもう1度蘇らせたいという強い思いが窺える曲だと思います。アメリカの多様性は表面から見えるほど広く深く受容されているとは言えないかもしれません。オバマ夫人のミシェルさんが「初めてアメリカ国民である事を誇りに思えるようになった。」と発言した事は象徴的だったのではないでしょうか。人種の問題も、ジェンダーの問題も、地域性の問題も様々な観点や意見がある事をもっともっと議論と理解がされていいと思います。私にとってもアメリカは小さい頃から何という根拠もなく憧れを抱かせる国でした。決して簡単ではないけれど、そのような夢をアメリカ内外の人々に広く与えるような国にぜひ再びなってほしいと願っています。