goo blog サービス終了のお知らせ 

遠い家への道のり (Reprise)

Bruce Springsteen & I

We Are Scientists @ UAlbany Corner Cafe (11/14)

2008-12-17 09:55:26 | In the U.S.A.
ある日の午後に大学にWe Are Scientistsというニューヨークベースのロックバンドがやって来ました。学内の小さなカフェ(その名も'Corner Cafe')でアコースティックライブをするという白黒のポスターが寮の周りに貼ってあったのを見つけて観に行きました。日本の音楽雑誌で見かけた事があるバンドでしたし、ロックだけでなく、できる限りの音楽経験をしたいと思っていたし、無料だというので観に行く事にしました。

元々小さなカフェですが、時間通りに行ってもそこそこの人出。後から思えばそのせいだったのでしょうけれど、待てど暮らせど始まりません。それなりの人だかりはできているので1人また1人と観客が増えるので暑苦しい。特に期待をしていた訳でもなかったし、授業後に1人で寄っていたので予定時刻を30分も過ぎると時間を持て余してしまってうんざりでした。前に長身の人が並んでしまったのでステージもよく見えなくなってしまいましたが、時々すき間から覗くと、ステージには小柄でややハンサムな男の人がそのコーヒーショップのコーヒーを飲んでいました。何だか雰囲気があるなあ、とマネージャーか誰かかと思っていたら、結局彼がバンドのボーカリストでした。それなりにメディアにも出るレベルのアーティストというのは、何かちょっとしたオーラみたいなものがやはりあるものだろうかと思いました。だけどその時は、いるならどうして早く演奏しないの!という気持ちの方が強かったです。

バンドはボーカル兼ギター、ベース、ドラムのトリオで、それなりにいい演奏をしていたと思います。曲もアコースティックで聴いてもキャッチーなフックのあるものでした。オーディエンスは通りがかりや私のような興味半分の人の集まりだったので楽ではなかったはずです。健闘していたと思います。だけど待たされて疲れてしまったのもあって、結局6曲くらい聴いて帰りました。

落ちも何もない記事ですみません。これは私の体験の備忘録です。

</object>



Don Byron Quartet @ UAlbany PAC (11/21)

2008-12-16 23:59:25 | In the U.S.A.
無事にアメリカ留学の秋学期を終えたのでこれから数回に亘って、授業や音楽経験について総括的な内容を書いていきたいと思います。

私のとった4つの授業のうちで、「Poetry of Everyday Music」は最もハードでした。学問的に難しいというよりも先生の独特の発音(ブルックリン出身だそう)と、あまり計画性のないランダムな授業展開についていくのが大変だったからです。この先生がドン・バイロンDon Byron)氏というアヴァンギャルドジャズ界では一目置かれたクラリネット/サックスプレーヤーだと知ったのは授業も半分以上済んでからでした。エルヴィス・コステロのバックを務めた映像も1度見せて下さいました。あまりにもカジュアルな外見で初めての授業でも「この人が本当に先生?」と思うような方です。

タイトルに書きましたように実際に彼のライブも学校内のコンサートホールでで観ました。でも、正直に言って私にはとても難しかったです。ただ先生のコメントから、耳馴染みのないアヴァンギャルドのようなサウンドでもインスピレーションはコミックやテレビで観たオリンピック選手など、身近なところに存在するのだという事が分かって新鮮でした。

</object>

この先生が授業で最も強調しようとしたのは、一般的な人々(私達生徒)が音楽に対していかにナイーヴであるかという事でした。音楽はauthentic(聴いたそのまま)なものではない。意図して作り上げられたものであり、商業的な意図が必ずある。例えば、ある学生Modest Mouseというバンドのプレゼンテーションをした時のこと。このバンドが日産のCMに曲を提供した事に対して一部のファンはセルアウトだと批判している、と発表者の方が言うと、先生はすかさず、「どうしてそれがセルアウトなのか」と問われました。ミュージシャンとしてより多くの人に自分達の音楽を聴いてもらう機会を得ようとする事の何が間違っているのか。また、バンドを生業としている限り、その音楽はある程度売れなくてはいけない訳で、そもそもある点ではセルアウトなのではないか。誰にも買って聴いてもらわなくてもいいのなら、何故レコードやライブのチケットに値段をつけて売る必要があるのか、と。音楽はそんなナイーヴなものではなくて、もっと現実的なものなのだというのが先生の主張でした。

そしてアーティストのイメージというものが非常に作為的であるという事を示すために様々なプロデューサーの例を挙げられました。カントリーのThe Carter FamilyRalph PeerMotownを設立したBerry GordyClive Davisらは、アーティストが市場で成功するために綿密にそのイメージを練り上げたのだという事です。着る物、言動、歌う内容についてもしばしば干渉したのでした。つまり、私達がアーティストに対して抱いているイメージの一体どれほどまでがアーティストが生来的に持っている性質なのかは分からない。だけど私達はそのイメージによって音楽やアーティストに入れ込むのだというのです。

そして私達が入れ込むアーティストとは、自分の社会経験を多かれ少なかれ反映した人である事が多いそうです。だから40人のアメリカ人のクラスでそれぞれ自己投影するアーティストは誰かと尋ねた時、ラテンジャズのミュージシャンを挙げる人は1人もいないし、そうした音楽になかなか興味を示さないのだというのでした。この自己を投影するアーティストは誰か、そしてその理由は何かという質問はとても興味深かったです(英語での質問は「Who do you identify yourself with? and why?」)。多くの人の答えは出身地が同じだとか、服装が似ているとか、人種が同じだとかどこかしら納得させられる点がありました。だけど、ブルース・スプリングスティーンと答えた私に対して「でもあなたはちっともブルース・スプリングスティーンっぽくないですよね」と先生に問い返されて、私は戸惑いを感じました。「ブルーカラーの家庭出身ですか」と重ねて訊かれましたが、それも当てはまりません。私はアメリカ人でも白人でもないし、息子でもなければ、父親でもない。労働者階級出身でもないし、音楽の才能もからきしです。一体どうしてそんなにも深く共感するのかと改めて考えると不思議な気がしてきました。その時は英語ですぐにも答えなければならず、頭が真っ白になってしまい、うまく言葉にならなかったのが残念でした。よくよく考えると、小さな田舎町で育った事や、夢を追いかけてきたところ、いわれのない孤独や愛に対する自信のなさなど、生き方だとか考え方に共感するんだと思うのですが、それはあくまでも私自身のブルースの解釈であって、ブルースに思い入れの無い人に説明するのは難しい気もしたりします。ドン・バイロン先生にはそれは私が思い込んでいる(思い込まされている)イメージなのだ、と言われそうだとも思いました。だけど、結局暫く後に落ち込む出来事を経験し、ブルースの音楽がどれだけ支えになってくれるかに気がついた時、それがイメージか否かは関係ない、と実感しました。事実として私はブルースの音楽に助けられていて、それはもうその事だけで、音楽の力を十二分に証明しているのだと思ったからです。

また、ロックミュージック史の先生のボブ・ディランについての言葉にこんなものがありました。
彼が歌う内容は必ずしも彼自身の事ではなく、架空の物語である。しかし、それは問題ではない。inventionはrealityを超えられるものだから。

Don Byron Quartet:

Don Byron (clarinet/tenor saxophone)
Billy Hart (drums)
Ed Simon (piano)
Kenny Davis (bass)


Studying in the U.S.A.

2008-09-20 15:26:16 | In the U.S.A.


随分長い間が空いてしまいました。8月半ば過ぎに日本を発ってアメリカ、ニューヨーク州はオルバニー(Albany)での生活を始めて1ヶ月余りが過ぎました。(上の写真は大学のメインエントランスです。)オルバニーはニューヨーク州の州都ですが、ニューヨークシティ、マンハッタンからはバスで3時間ほど離れたひっそりとした田舎町です。ブルース・スプリングスティーンが生まれ育った国にいるんだと思うと何だか不思議な気がするけれど、大学の中に住んでいるせいかその感覚もまだぴんと来ないのが現状です。そして何よりもせっかくアメリカまで来たというのに、来た直後にMAGIC TOURが終了してしまった事に大ショックを受けています。けれど、私がこうしてアメリカに留学する1つの契機にさえなった2001年の同時多発テロの跡地(グラウンド・ゼロ)を実際に目にしたり、州の博物館(New York State Museum)でそれに関する展示を見たりして、また考え方を改めさせられる部分もあり、来た分だけ学び取っている点もいろいろあるようにも感じています。

それはともかく、これからは時間が取れればこちらに滞在している来年(2009年)5月までは少しずつ留学についても書いていければと思っています。ブルースに出会って以来、ロックミュージックと(特にアメリカ)社会の連関性に興味を惹かれ続けてきたのでこちらでは音楽学を専攻にしていて、以下がこちらで今学期受講している授業です。

Rock Music in Historical Perspectives
Jazz: America's Music
The Music Industry
Poetry of Everyday Music


こちらで1番嬉しかったのは、アカデミズムの場におけるロックミュージックの扱いが日本とはかなり異なると感じた事でした。やはり自国を代表する文化の1つとしてアメリカではロックに意味を見出していこうとする姿勢が日本に比べて大学という場でもずっとはっきりと見られます。日本ではまだまだきちんとした研究対象としては捉えられずに、一部のカルチュラル・スタディーズのようなどちらかというと新鋭の分野でキワモノ的な扱いを受ける事が多いことに一抹の苛立ちも覚えていたのでロック史の授業を受けられただけでも来た甲斐があったかなぁという気がしています。ロックの知識についてもいろいろなところで聞きかじったり、読みかじったりしてきただけだったのでこの機会に体系的に学ぶ事ができればいいです。

現在はロックの源流となった3つのジャンル(Mainstream Pop, Country & Western, Rhythm & Blues)とChuck BerryElvis Presleyといった50年代の最初のロックンロールの波が50年代末になって消えた辺りまで講義が済んでいます。私のフィードバックの意味も込めて授業で面白いと感じた事なども書いていければいいと思っています。


ロック史の授業で使っている教科書です。とても楽しい