エンタメモンスターのひとりごと

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『東京夜曲』40代男女のほろ苦いラヴロマンス

2017-02-17 18:30:00 | 邦画
「ねぇ、お茶漬け食べてかない?」

物語の舞台は東京の片隅にある"上宿商店街"。
数年前に家族を残して街から出ていった浜中(長塚京三)がふらりと帰ってきて、何事もなかったかのように妻の久子(倍賞美津子)は優しく迎え入れ、やがて実家の"浜中電気"で働き始める。
浜中電気の向かいにある店"喫茶大沢"では
かつて浜中の恋人だった"たみ(桃井かおり)が店主をしている。
帰って来た浜中に対して適度に詮索するも、
ラフに受け入れる。

一方、久子に静かな想いを寄せている近所の青年・朝倉(上川隆也)は身勝手な浜中の行動に疑問を抱き、商店街の人々に浜中や関連人物の過去を聞いて回るようになる。
その中で〈浜中〉〈久子〉〈たみ〉の関係性が徐々に明らかになっていき、浜中が戻ってきたことによって周りの人々の生活や心に僅かな変化が訪れる_。


予告を観た時点で心を奪われ、
いざ見終わってみると胸に手を当ててため息が出るくらい作品の雰囲気に魅了された。
最近後味の悪い映画を観てしまってモヤモヤしていたので、こういった良質な大人のラヴストーリーで口直しができて良かった。ド不倫だけど。

まるでドキュメンタリーを観ているような、
演技してます演出してます感があまりなくて
余計な味付けは一切せずに素材の良さを大事にしている印象を持った。
ゆったりと流れる時間の中で台詞を味わう感じ。
ある人々の日常をそっと見守る形なので、
少し台詞が聞き取りづらく字幕を入れなければいけなかったり、元の音量が小さい点がネックだけども、
それさえも何か意図があるような気がするくらい作品の雰囲気に飲み込まれてしまったので気にならない。
とにかく風景も音楽もノスタルジックで美しいのだ。

また実在の人物名や作品名や店名が出てくるのだが、そういうものを取り入れることによって登場人物たちが物語の中だけではなく実在しているかのように感じられる所もドキュメンタリーっぽさを強くしている気がする。

そして浜中を演じた長塚さんがカッコ良すぎて苦しい。
役柄は人によって微妙に態度を変える、ミステリアスで気難しい、献身的に支えてくれる妻をキープしつつまだ想い続けている昔の恋人と喫茶店の2階で体を重ねるという奔放さが何とも言えず...。
でもどの表情も素敵で、大人の男性の色気を独り占めしているのではないかと思うくらい本当にカッコ良い。
あんな風に「こっちおいで」って言われたら確実に落ちる自信がある。理想。危険。


今後「お茶漬け」というワードを聞く度に
無駄にドキドキざわざわしてしまいそうだ。
『東京夜曲』予告