リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

元徴用工問題:請求権があるのになぜ国際法違反か説明を

2019-08-23 | 政治
韓国が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA:ジーソミア)の破棄を決め、日韓対立の負のスパイラルがまた一段進行した(朝日新聞2019-8-23)。GSOMIAは政府間で防衛上の秘密情報を交換するためのもの。日韓では2016年に締結されたばかりだ。実態としてどの程度使われていたのかわからないと破棄の影響も評価しにくいが、元自衛艦隊司令官によれば、GSOMIAを通じて多くの情報を得ていたのは韓国のほうとのことで、韓国にとって利にならないばかりか、米国も迷惑するという(同7面;追記参照)。
8月15日の光復節での韓国大統領の演説が日本批判を抑えるばかりか「日本が対話にでれば、喜んで手を握る」とまで述べていたが、韓国としてはこの演説が日本に対する重要な「シグナル」だったのに、要人からも外交ルートでも日本からは何の反応もなかったことに失望したことが今回の決定の決定打になったという(同2面)。
韓国大統領の国内での苦境も報道されており、私などはやや楽観的な気持ちもあったのだが、政府にとっても想定外(同3面)だったというのは困ったものだ。やはり光復節演説に対して何らかの反応をしておくべきだったと悔やまれる。
日本政府の立場は元徴用工問題をめぐる大法院判決によって韓国の「国際法違反の状態が続いている」というもので、たぶん正しいのだとは思うが、日本政府も個人の請求権が消滅していないことは認めていた(過去ブログの(2)および追記参照)。先日は韓国側からもその点の指摘がされていたが、請求権は残っているのに賠償を命じた判決は国際法違反というのはどういうロジックなのか。まずはこの点を説明して、問題点をはっきりさせた上で対話に臨むべきだろう。

追記:韓国大統領関係者のほうは、北朝鮮のミサイル発射に関し、日本からGSOMIAで「意味のある情報を受け取ったことはない」と述べているという(朝日新聞2019-8-25)。GSOMIAが日韓とも役に立っていないということであれば破棄は何の問題もないわけで、日本政府も先日言っていたと思うが、「静観」が妥当だろう。

追記2:韓国がGSOMIA破棄を通知した件について、韓国首相は対韓輸出規制強化などの「日本の不当な措置が元に戻れば」破棄を再検討すると述べたという(朝日新聞2019-8-27)。まあこれも和解に向けたサインの一つのつもりかもしれないが、それならまず韓国が元徴用工問題に関する解決策を何か提示するべきだ。(輸出規制強化は徴用工判決に対する報復ではないという建前なのかもしれないが、韓国がGSOMIA破棄を輸出規制強化への対抗措置と明言したのだから、ここは「日韓問題」というくくりで関連すると考えていいだろう。)ただ、ボールが韓国側にあると言い張るだけでは外交としては能がない。上記のように、請求権は残っていることは認めているのになぜ徴用工判決が問題になるのか、日本側ももう少し丁寧に説明してもいいのではないか。

追記3:かつて新日本製鉄が訴えられた事例での和解に携わった唐津恵一氏の談話が興味深かった(朝日新聞2019-10-31)。新日鉄は徴用工が働いた前身の会社とは別会社だと主張し、米英の艦砲射撃でなくなった徴用工の賃金は国に供託したので法的責任はないとの立場だったから、遺骨が返還できない点で人道的な対応が必要として和解したという。国も被告だったが、国に事前に報告したり、国から圧力を受けたりしたことはなかったという。
日韓請求権協定については、「協定は国と国の取り決めで、企業と個人のやりとりは縛っていません」とのこと。だとしたら、私も過去ブログで書いた「日本政府は対応しないが、日本企業の個人に対する賠償責任自体は残っている」という意味なのだろうか?



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