リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

武力行使が認められる最低条件

2018-04-16 | 政治
アメリカ軍が英仏と共同でシリアを攻撃した.シリアが化学兵器を使ったことをその理由に挙げている.アラブ諸国の反応はシリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑は強く非難する一方,攻撃については「注視してる」と述べるにとどめた(4-16夕刊).懸念ばかりでなく攻撃を支持する国もあったためだ.朝日新聞の社説(朝日新聞2018-4-15)などは「無責任な武力行使」として批判しているが,化学兵器使用は「一戦を越えた」という主張もわからないではない.日本も中長期的に国際紛争と無縁ではいられないと思うと,どのような場合に武力行使が許されるのか,朝日社説をヒントに検討しておきたい.(今回は専守防衛については考えない.)

・まず,攻撃の理由とされたシリアによる化学兵器の使用について,証拠が示されていない.かつてアメリカのブッシュ大統領が「大量破壊兵器」を理由にイラク攻撃に踏み切ったが,その情報は誤りだった.敏速な対応が必要な場合もあろうし,公開できない情報もあるのかもしれないが,少なくとも後日の検証に堪える証拠確保は必要だろう.

・次に国連安保理の同意を得ていないという問題がある.アメリカの言い分は,シリアによる化学兵器の使用に対して安保理決議の採択を目指したが,「6度もロシアの拒否権に阻まれた」ということだ(4-16朝刊).たしかにロシアや中国などの拒否権(逆の立場から見ればアメリカなどの拒否権)のため,大国の利害が対立する事案では安保理は機能不全に陥りがちだ.

・そこで,国連安保理決議を飛び越えてまで武力行使する以上は,十分な外交的努力がなされたかを検討することになる.場当たり的なトランプ外交にあってこの点は疑問が大きいが,ロシアのプーチン大統領の態度も国際社会の批判を意に介さないようなところがあり,難しい.

・朝日社説が強調するのは,武力行使の先に見据える目標だ.社説は,今回の軍事行動は単発的な「懲罰」であって,「流血の停止と秩序の回復という本来の目標が見えない」と批判する.そして1年前にも化学兵器を理由に空爆したが,事態に改善はなかったことを指摘している.今回も,シリアの化学兵器使用能力に打撃を与えたのかもしれないが,それはロシアとの対立を決定的にしてまで行なう価値のあることだったのか,検討が必要だ.

・朝日社説は,今回の攻撃でまた事態を等閑視する姿勢に戻るのでは意味がなく,武力攻撃に踏み切る以上,それをシリアの戦乱を収めるための外交戦略を伴ったものにしなければならないと説く.それ以上の具体的な提言はないが,これだけの重大な決断をする為政者は,単に特定の兵器を破壊するという短期的な目標ではなく,戦乱の終結まで見据えたビジョンを持っていてほしい.


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