弁護団声明

2006年01月30日 23時05分39秒 | Weblog
【以下貼り付け】
大阪市による野宿生活者に対する強制立退きに関する弁護団声明

 大阪市は、本日、靱公園と大阪城公園にテント・小屋を建てて生活している野
宿生活者に対し、都市公園法、行政代執行法に基づく強制立退きを実施した。

 大阪弁護士会が、本年1月25日に執行した「大阪市による野宿生活者に対す
る強制立退きに関する緊急要請」にもあるとおり、わが国も批准している「経済
的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(いわゆる社会権規約)第11条
1項は、「適切な居住の権利」を保障しているところ、この規定は、?高度の正
当化事由、?真正な協議等の適正手続、?適切な代替住居の提供という3要件を
欠く強制立退きを禁止している(国連社会権規約委員会の一般的意見4及び同7
等)。また、わが国の生活保護法第30条は、「生活扶助は、被保護者の居宅に
おいて行うものとする」とし、居宅保護(アパート等での生活保護)を原則と
し、施設や病院における収容保護はあくまでも例外と位置づけているのであっ
て、わが国における「適切な代替住居の提供」は居宅保護の実施が原則とされる
べきである。
 
 かかる、社会権規約、生活保護法等の規定に鑑みれば、強制立退きを進めるに
あたっては、当事者および関係者と事前に真正かつ十分に話し合うなどの適正手
続を尽し、適切かつ十分な代替住居を確保するなどの代替措置を講じることが必
要である。今回の強制立退きにあたり、大阪市は、居宅保護の実施などの適切か
つ十分な代替住居を確保するなどの代替措置を提示することなく、入所・設置期
間が限定されかつプライバシーが十分に保護されない集団生活を強いられる自立
支援センター等への入所を繰り返し勧奨しただけである。しかも、寒さの最も厳
しいこの時期に立退きを強制するのは、強制立退きは「特別な悪天候」のもとで
行われてはならないという上記一般的意見7・15項fの趣旨にも反する。
このように不十分な代替措置の提示を前提として、この厳寒の時期に野宿生活者
の生活の本拠を破壊して奪い去った今回の強制立退きは、人道上も極めて問題で
あるだけでなく、違法であると言わざるを得ない。

 また、大阪地方裁判所及び大阪高等裁判所は、当弁護団が採った各種の法的手
続について、本人の意向も直接聞かない極めて短期間の簡単な審理だけで、いず
れも却下又は棄却の判断をした。かかる裁判所の判断は、強制立退きを略式の手
続で行うことに懸念を表明した国連社会権規約委員会の最終見解(2001年8
月30日)30項、57項を全く無視し、公正な裁判を受ける権利(自由権規約
14条1項)を否定し、裁判所の条約遵守義務(憲法98条2項)に違反するも
のと言わざるを得ない。

 弁護団としては、大阪市の本日の強制立退きの実施と、これを許した裁判所の
判断に対して、強い遺憾の意を表明するものである。

  2006(平成18)年1月30日
              靫公園・大阪城公園強制立退き事件弁護団一同
【貼り付け終わり】


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