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日本歴史紀行

現代語訳 徳川実紀 42 桶狭間の戦い〜平八郎の夢



平八郎の夢

駿河の太守、今川義元殿が桶狭間で討ち死にしたという凶報がもたらされ、織田領に入り込んだ大高城で義元殿を待っていた元康君であるが、翌朝には勝ちに乗じた織田方が攻め込んでくることが考えられることから、闇に紛れて退去する決意を固められた。

元康君は、昨夜から夜通し戦い抜いた家臣らの疲れを思い、退去までの わずかばかりの時間ではあるが、休息をとらせた。


元康君の側を離れずにいた平八郎も束の間の眠りについた。

気負っていた心の鎧を解くと、忘れていた疲れから一気に睡魔が襲った。

夢の中で、平八郎は馬で駆けていた。
蹴散らしても蹴散らしても敵兵が襲いくるのをかいくぐり、死中を脱すべくひたすら走った。

やがて大河が行く手を阻む。
故郷、三河の大河 矢作川であろう。


川は雨の日の影響があったらしく、水量も多く、とても渡れそうもない。

このままでは敵兵に追いつかれてしまう。

平八郎は対岸にある守り神である八幡宮の社の方角へ、南無八幡…と一心不乱に祈りを捧げた。

すると、視線の先にある長瀬八幡宮の森から三頭の鹿が現れ、川へ向かう。

鹿は土手の松の大樹近くまで進むと、川の水量も気にせず、水面に脚をつけた。

鹿たちは何事もなく渡って行く。
鹿たちは、あの場所が浅瀬であることを熟知している。そして対岸の土手を登り、姿を消した。

平八郎の眠りはここで終わった。
僅か一刻近くの眠りであったが、若い平八郎には、充分であった、

〜平八よ、よいか。〜

〜はっ。〜

〜これから、与七郎(石川数正)と先駆けせよ。〜

〜先駆け。〜

〜このまま、敵地を脱するには、先駆けの物見が欠かせぬ、我ら三河者の運命は、その方らの先駆けにかかっておる。〜

〜若殿のお側を今、離れるのは心苦しゅうございますが、心得ました。直ちに参ります。〜


平八郎は与七郎らと共に大高城を出た。



つづく





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