第157回けいはんなサロン開催
日時:平成24年7月20日(金) 午後2時~4時30分
場所:けいはんなラボ棟2階 天の川
テーマ:日本人の体臭の実態
話題提供者:マンダム中央研究所 基盤研究室 志水弘典氏
日時:平成24年7月20日(金) 午後2時~4時30分
場所:けいはんなラボ棟2階 天の川
テーマ:日本人の体臭の実態
話題提供者:マンダム中央研究所 基盤研究室 志水弘典氏
7月の第157回けいはんなサロンは体臭が気になる季節でもありましたので、男性化粧品でおなじみの株式会社マンダムから志水弘典氏をお迎えし、「日本人の体臭の実態 ~ 体臭の発生要因と効果的な対処法について」というタイトルで話題提供して頂きました。志水氏は同社中央研究所の基盤研究室主任研究員で、大学との共同研究も多く立派な論文を協会誌に発表しておられる方です。体臭とはどういう仕組みで発生し、それに対してどのような対処の方法があるかについて科学的な立場から話を伺い、参加者で考える場としました。
臭いに関してはすでに2月に資生堂から神田様をお招きし、第2回イグノーベル賞の受賞につながった「足の臭い」の研究についてお話し頂きました。その際は化学分析によりただ1種の物質(脂肪酸)が要因であることを突き止められたお話しでしたが、今回の体臭については、腋臭がその大部分であり、腋の下から集めた汗を同じ質量分析法という方法で分析して、326種の成分が認められたというところからスタートされました。さらに、日本人の男性の臭いで特に不快とされるのは酸臭(A型)とカレースパイス臭(C型)の2タイプがあるようで、それぞれの特異成分も解明されたとのことです。
汗は皮膚から分泌されるわけですが、皮膚には汗腺ならびにアポクリン腺の二種があります。しかし、足の裏あるいは胸、腋下というように部位によってはその分布が異なり、したがって、分泌物もそれぞれに特徴があるようです。一方、汗の量と臭いとの間には相関がなく、太っている人は体臭が強いようにイメージしがちですが、それは間違いとのことです。しかし、汗が体臭の要因になっていることは明白であり、どのような仕組で臭い成分が生成されるのかも研究されました。
それによると腋の下からの分泌物の分泌とそれを栄養源とする微生物の繁殖の2段階で臭い成分が形成されることが基本であること。そうであればそれへの対処の方法としては、頻繁にこの分泌物を除去すると同時に、それを餌とする特定の微生物の増殖を抑制する薬剤を開発することにつきることになります。こうした研究はボランティアを使って進められましたが、その様子をNHKの番組でも採りあげられたことが映像資料とともに紹介されました。
志水氏は、企業における研究開発者は常に生活者のニーズと向き合う必要性があることを強調されておられましたが、特性に応じた臭い取りのための拭き取りシート(ボディペーパー)など、上記を基本とする対処法に沿うかたちで商品も開発され、現在若い世代を中心に、幅広く受け入れられているようです。また、体臭といえば香水や香辛料が発達したヨーロッパを思い浮かべる人も多いかと思いますが、現在ではこうした体臭対策のための商品はアジアを中心にそのマーケットが拡大されているとのことでした。
要約すれば、臭いのもととなる皮膚からの分泌物は分泌直後は無臭ですが、これを微生物が分解することで臭い成分に変えられます。ということは寝ている間にもこれらの微生物の餌となる分泌物が皮膚表面に堆積しているわけで、出勤した頃に微生物の増殖が始まるということを避けるため、出掛ける前に、就寝中に堆積した分泌物をシャワーで洗い流すというのがもっとも効果的な対処の方法であると結ばれました。