アンクロボーグの世界

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ショートショート 【おねだり】

2008年12月28日 23時57分49秒 | ショートショート

《 自動創作プログラムが作製したショートショート作品です 》

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【おねだり】

2049年6月14日、小雨がふり続く秋葉原。ビックカメラ店の7階パパ売り場に母と娘がいた。

「ママー、このパパ買ってー。」

売り場には個性豊かな色々な外装を持つ複数のパパが展示されていた。
どのパパも展示用の仮の《心》をインストールされている為、感情を制限されたうつろな表情でお客に対応していた。
パパは台に固定されたまま自分を購入してくれる客を待っているのだ。
女の子に話しかけられたパパは、心細そうな瞳を左右上下にクルクル動かし買い物に来た二人を交互に見つめた。
「だめよ。これ!中身!空っぽじゃない」
「しっかり選びなさいね。3年間あなたのパパになるんだから。ルックスだけで選んじゃだめよ」
ずらっと並んでいるパパ達の仕様データを呼び出しながらあれこれ品定めをするママ。
「雨の日は、サービスデーなんだから今日決めて帰るのよ!」
マッチョタイプのパパに一言二言質問をしてママは、首を横に2,3度振る。「うーん。この店は、いまひとつ品揃えがよくないわねー」

「今日いいのが見つからないとすると3ヶ月間だけでもTSUTAYAでレンタルするしかないかなぁ~~」
「ねーっ!ママー!!これこれ!このパパどう?!」 娘が特売品コーナーから元気に手を振り叫んでいた。

そこには、1シーズン前のモデルのパパ《サムライブルー550-20F》が展示されていて娘と何やら会話をしていた。
かけ寄ってきたママは、値段表示を確認。「あら、意外と安いわね。スペックも・・・有りそうだし」
「経済力値もいいわね。耐ストレス値も劣悪環境耐用指数もまあまあの数字じゃないの!! 」

ママがディスプレイのタッチパネルを「ピッピッ」と何度か押し更に詳細な数値を確認する。
「うーん!」「よし!これにしましょう」
「わーい!\(~o~)/新しいパパだー!」
女性店員が展示台から指定のパパを解除させると、自力でゆっくりと歩きレジの方へ向かう。
もうひとりの女性店員に商談ブースへ案内されママは詳しい管理設定方法など説明を受けていた。
娘の方は、新しくパパになる《このモノ》にピッタリとくっつき正式のフル装備《標準心》がインストールされてゆく過程を眼を皿のようにしながら見つめていた。
いよいよ待ちに待ったパパ!急速システムアップが行われ心に灯が燈る。
女の子と新規パパの目が合った。
「はじめまして!よろしくね!」滑らかな自然なトーンで言葉が発せられた。

もろもろの手続きを済ませ、支払いをするために、ママが戻ってきた。
「お客様!お届けは、最短で明後日となりますが…いかがいたしますか?」

「いいわ!このままで。慣らし運転をかねて…一緒に連れて帰ります」 「いいでしょう!?」

母と娘、そして新しいパパの3人が7階のパパ売り場の通路を仲良く歩く。
「そうだ!夕食は食べて帰りましょうね」
「わーい!」 新しいパパの腕にくっついて歩いていた娘は更に体をくっつけ、とてもうれしそうだ。

買われたパパが居た展示台には、さっそく次のパパが載せられようと準備がなされていた。
仕様を表示するディスプレイは、次のパパ《ムサシ660-21C》への書きかえ準備がされる。
今回、ママがたくさん並んでいたパパ達の中から最終的に、あのパパにした決め手となった数値とは…

消されてしまうまでにそこに記載されていた元の表示内容とは。
《顧客満足度同価格帯製品第1位》
《ナイトライフ専用制御エンジン神経パワースクリュー搭載》
…と表示されていたのだった。

万世で食事を済ませた3人は、 秋葉原駅の高速電磁列車乗り場に向かう。
3ヶ月前まで使用していた前のパパは製造過程での生体チップ内細胞強度不足をおこしており、日常生活活動時に、たびたび精神不安定状態を繰りかえしていた。
それで仕方なく基本任期の3年間を待たずして買い替えせざるをえなかった。
今度のパパは、十分な基本スペック、内部安定性を持っている。
駅ホームで列車を持つしぐさも、落ちついていて、3年間家族となる妻と娘を見つめるまなざしもやさしかった。

電磁列車独特の作動音をさせながら特急車両がホームへ到着。
ホームへ降りる人々、列車に乗りこむ人々。そして発車し、列車の窓から見える町並みの中で暮らすたくさんの人々。
すべて皆、幸せそうな表情をしていた。
そう!今、地球上には人間である女性。男性という名の有機ロボットが暮らしていた。
20年前、突然、男性が死に絶え、この人間社会は女だけの世界となった。
幸い、遺伝子工学、生命工学の魔法のような進歩のおかげで、人類は絶滅の危機は回避できた。
子孫を残すことで特に男を必要とはしなくなったのである。
結果、形だけは、ロボットの男性を家族として参加させ3年毎に交換して行き今に至っているのだ。

「カチャッ」家のホーム知能がママと娘。そしてオンライン登録されたばかりのパパの存在を確認して玄関のロックを自動解除させてくれる。
「ただいま-」娘は元気よくリビングへ走る。
中には、おばあちゃんがやさしい顔でお出迎え。隣には、おじいちゃんが。
このおじいちゃんもそろそろ3年目。基本任期を向かえようとしている。

午後10時20分松戸の小さな小さな一戸建ての家には仲のいい家族5人の幸せそうな笑い声が響いていた。

そう、この世から人間のオスが消え、もう一つおおきな大きな…大きな出来事が地球上で起こっていた。
すべては、平和になった。大きな戦争も紛争も人種間の民族間の宗教間の争いは、無くなった。

争いの元であるオスをなくした、今、人類社会はおだやかな、ゆったりとした時の流れの中、皆、仲良く笑顔で幸せに暮らしているのでした…

《 お わ り 》