《 自動創作プログラムが作製したショートショート作品です 》
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【年寄、川田修平】
私は川田修平。
私の前姿は元横綱《 日の錦 (ひのにしき) 》
5年前に引退をして、今は普通の人間の姿に戻っている。
当時18歳だった私が持っていたものは若さだけ。
うまく行けば6年後には高額な収入が見こめる力士という選択をし、協会と契約を結んだ。
私のように若くして力士になる事を希望する者は皆、新弟子検査という細胞検査を受ける。
最新の分析システムにより遺伝子レベルでの肉体的適正が測られ、それにパスした者は、さらに純粋な日本人としての精神性の分析選別を受ける。
力士生活の間で相撲という国技に携わる者が持っていなければいけない特性、忍耐力、礼節心、謙虚さなどなどの有無が調べられるのだ。
その厳しい検査をパスし力士となり、6年間戦い続けられた者達には対価として、その肉体的、精神的資質の提供者として、協会から高額な賃借料が与えられるのだ。
そして、私の場合だが、6年間の結果として横綱という最高位にまで、のぼり詰めた事に対し追加的な成功報酬として莫大な数字の恩給も加算されている。
引退した現在、私は、誰もがうらやむ暮らしをこの若い年齢で手にいれる事が出来ている。
まあ、あの厳しくてつらい力士生活を考えると当然の報酬なのだが。巨額の報酬には関心はあるが、周りはこの事には、あまり理解は、しめしてくれない。
そんなことを考えながら私は、また、古傷の右ヒザを撫でていた。
現役時代の故障による肉体的な後遺症は、最新の医療技術のおかげで、まったく心配がない程に完治しているのに。
痛みなども、まったく無いのに、なぜか右ヒザの古傷の場所を撫でている自分に気がつくのだ。
他の多数の引退した元力士に聞いてみても同じような事を経験している者も多い。
2068年の現在、大相撲界は、空前の大ブーム。
大昔、今から70年程前のあの伝説となっている、若貴時代をも、しのぐ勢いで熱狂的大相撲ファンが増えつづけている。
だが、少し前の時代の相撲界は衰退しきっていて、消滅の危機にさらされていた。
国技であったはずの大相撲衰退の原因は、日本国全体、その国力としての体力の低下があり、また、日本国民の精神力の減退もその一つとわかっていた。
日本人の生活様式が大きく変化し、実際に力士として参加するその人材としての圧倒的な質の低下がおこっていた。
そのために国際化との名のもと、やむなく行われた外国人力士の推進化。
それらを含めたその他、複数の負の連鎖作用、そしてあの事件。ロシア出身力士による大麻疑惑。
それに続く北の湖理事長の辞任。マスコミ対応の悪さと相変わらずの密室性。
この後、興行としての大相撲は成り立たなくなり規模の縮小を繰り返してきた。
そして今から12年前に、文部科学省を中心に国技としての大相撲の復権プロジェクトが開始された。
その当時、すでに実用化され一般社会に普及し安全性が保証されていた、最新の生体医療技術が使用された。その他の多くの分野の先端技術も導入され、まったく新しい新弟子検査が開始、可能になった。
一攫千金を夢見る入門希望者の遺伝子、細胞レベルでの適性が調べられフルイにかけられる。
人的資質に問題のあった親方制は廃止。
歴史のある各部屋の名は残された。
各力士はそれぞれの部屋に属してはいるが、最新の施設の管理下に移された。
スポーツ医学の最新理論に基づくトレーニング法が実施され専門分野のトレーナーが適切な指導を行い、優秀な力士をみるみると作り上げた。
新弟子検査に参加できる条件はシンプルだ。
純粋な日本人であること。18歳である事。
そして驚くべき変化なのだが、性別は問わない!
いや、今だからわかっている事だがむしろ遺伝子特性では女性の方が力士適性の数値が上だったのである。
専用施設に入った後、力士転換処置を施された体は完全な男性としての力士の姿へと変わるのだ。
転換処置された体はどこから見てもまったく区別はつかない。
過去、私は、いろんな女型力士だった人に聞いた事がある。
誰もが同じ答え。当の本人さえも力士時代、よほど意識して考えなければ自分が戸籍上女であることは、感じなかったそうなのである。
秋場所14日目の大一番がテレビモニターの画面に映っていた。《 萌の華 (もえのはな ) 》は、堂々とした風格でシコをふんでいた。引退した私は今では普通の大相撲のいちファンでしかなかった。
そういえば今場所、全勝中の東の大関、この、萌の華の原姿は女性。(つまりは女性が力士転換処置を施され6年間男性として生きているという事)
最近、調子の出ない横綱、《 毫乃門 ( ごうのもん ) 》(こいつは生まれつき男)との立ちあいが始まった。
ガップリよつに組み、相手方の上手を瞬時に切る萌の華。
そのまま一気に土俵際に追いこみ、豪快な上手投げで、横綱を土俵の下へたたきつけている映像を見つめた。
こんなシーンを見るたびに思い出す。
私の現役時代最強のライバルであった、あいつの事を。
私が横綱だった頃、大相撲の歴史上初の女性型力士で歴史上最高の横綱だった 《 美山 ( びざん ) 》
あいつだけにはどうしてもかなわなかった。あいつの前に立つといつもの力が発揮出来ずに負けてしまっていた。
あいつは引退してからいったいどこでどうしているのか。世紀の大横綱、美山。その消息をマスコミも追ったがついには探しあてる事は誰もできなかった。
本来の女性の体、精神に戻り、どこかで優雅な恩給暮らしをしている事は間違いない。
ウィン!!という体内に内蔵された本人だけにしか聞こえないアラームがやさしくささやき、私は今の川田修平の生活に引き戻される。
目の前の空間には、カスタマイズされたサイトの映像が起動し、浮かんでいた。
これから食事をするレストランと待ち合わせの場所を知らせているのだ。
約束の時間だ。
来年1月、3年間の結婚契約を結ぶ相手の好美。176センチの長身でスタイル、マスクもモデルなみの女性。
頭も良く、性格も思いやりがあり、礼儀をわきまえ、行動力も抜群。結婚相手にはこれ以上の相手は存在しない。
自宅をでると、オートタクシーがすでに待っていて無言で乗りこむ。
すべてはカスタマイズ済みでレストランへ自動運転が開始された。
彼女は、すべて申し分の無い女性だったが、一つだけ、なぜかあまり自分の事を話したがらない。
好美も今、私と同じく若くして上流階級の暮らしを手にしている。
アンドロイドの店の給仕に案内され奥へ歩く。
ああ!しまった!好美が先に席に着いていた。小走りで彼女が待つ席に向かう。
今日も相変わらずステキな好美だが、だからこそなのだろうが…
どうしても頭があがらない。あの娘の前に立つといつもの私ではいられない。
この店で一番良い席に一般会社員の1年分のサラリーに相当する金額の美しいドレスを身にまとった好美がそこにいた。
ドレスからすらりとした美しい素肌の長い足が見え、眼を奪われる。
好美は、しきりにヒザの辺りを撫でていた。
そして、私に気づき、小さく手を振りながら微笑んだ…
《 お わ り 》
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【年寄、川田修平】
私は川田修平。
私の前姿は元横綱《 日の錦 (ひのにしき) 》
5年前に引退をして、今は普通の人間の姿に戻っている。
当時18歳だった私が持っていたものは若さだけ。
うまく行けば6年後には高額な収入が見こめる力士という選択をし、協会と契約を結んだ。
私のように若くして力士になる事を希望する者は皆、新弟子検査という細胞検査を受ける。
最新の分析システムにより遺伝子レベルでの肉体的適正が測られ、それにパスした者は、さらに純粋な日本人としての精神性の分析選別を受ける。
力士生活の間で相撲という国技に携わる者が持っていなければいけない特性、忍耐力、礼節心、謙虚さなどなどの有無が調べられるのだ。
その厳しい検査をパスし力士となり、6年間戦い続けられた者達には対価として、その肉体的、精神的資質の提供者として、協会から高額な賃借料が与えられるのだ。
そして、私の場合だが、6年間の結果として横綱という最高位にまで、のぼり詰めた事に対し追加的な成功報酬として莫大な数字の恩給も加算されている。
引退した現在、私は、誰もがうらやむ暮らしをこの若い年齢で手にいれる事が出来ている。
まあ、あの厳しくてつらい力士生活を考えると当然の報酬なのだが。巨額の報酬には関心はあるが、周りはこの事には、あまり理解は、しめしてくれない。
そんなことを考えながら私は、また、古傷の右ヒザを撫でていた。
現役時代の故障による肉体的な後遺症は、最新の医療技術のおかげで、まったく心配がない程に完治しているのに。
痛みなども、まったく無いのに、なぜか右ヒザの古傷の場所を撫でている自分に気がつくのだ。
他の多数の引退した元力士に聞いてみても同じような事を経験している者も多い。
2068年の現在、大相撲界は、空前の大ブーム。
大昔、今から70年程前のあの伝説となっている、若貴時代をも、しのぐ勢いで熱狂的大相撲ファンが増えつづけている。
だが、少し前の時代の相撲界は衰退しきっていて、消滅の危機にさらされていた。
国技であったはずの大相撲衰退の原因は、日本国全体、その国力としての体力の低下があり、また、日本国民の精神力の減退もその一つとわかっていた。
日本人の生活様式が大きく変化し、実際に力士として参加するその人材としての圧倒的な質の低下がおこっていた。
そのために国際化との名のもと、やむなく行われた外国人力士の推進化。
それらを含めたその他、複数の負の連鎖作用、そしてあの事件。ロシア出身力士による大麻疑惑。
それに続く北の湖理事長の辞任。マスコミ対応の悪さと相変わらずの密室性。
この後、興行としての大相撲は成り立たなくなり規模の縮小を繰り返してきた。
そして今から12年前に、文部科学省を中心に国技としての大相撲の復権プロジェクトが開始された。
その当時、すでに実用化され一般社会に普及し安全性が保証されていた、最新の生体医療技術が使用された。その他の多くの分野の先端技術も導入され、まったく新しい新弟子検査が開始、可能になった。
一攫千金を夢見る入門希望者の遺伝子、細胞レベルでの適性が調べられフルイにかけられる。
人的資質に問題のあった親方制は廃止。
歴史のある各部屋の名は残された。
各力士はそれぞれの部屋に属してはいるが、最新の施設の管理下に移された。
スポーツ医学の最新理論に基づくトレーニング法が実施され専門分野のトレーナーが適切な指導を行い、優秀な力士をみるみると作り上げた。
新弟子検査に参加できる条件はシンプルだ。
純粋な日本人であること。18歳である事。
そして驚くべき変化なのだが、性別は問わない!
いや、今だからわかっている事だがむしろ遺伝子特性では女性の方が力士適性の数値が上だったのである。
専用施設に入った後、力士転換処置を施された体は完全な男性としての力士の姿へと変わるのだ。
転換処置された体はどこから見てもまったく区別はつかない。
過去、私は、いろんな女型力士だった人に聞いた事がある。
誰もが同じ答え。当の本人さえも力士時代、よほど意識して考えなければ自分が戸籍上女であることは、感じなかったそうなのである。
秋場所14日目の大一番がテレビモニターの画面に映っていた。《 萌の華 (もえのはな ) 》は、堂々とした風格でシコをふんでいた。引退した私は今では普通の大相撲のいちファンでしかなかった。
そういえば今場所、全勝中の東の大関、この、萌の華の原姿は女性。(つまりは女性が力士転換処置を施され6年間男性として生きているという事)
最近、調子の出ない横綱、《 毫乃門 ( ごうのもん ) 》(こいつは生まれつき男)との立ちあいが始まった。
ガップリよつに組み、相手方の上手を瞬時に切る萌の華。
そのまま一気に土俵際に追いこみ、豪快な上手投げで、横綱を土俵の下へたたきつけている映像を見つめた。
こんなシーンを見るたびに思い出す。
私の現役時代最強のライバルであった、あいつの事を。
私が横綱だった頃、大相撲の歴史上初の女性型力士で歴史上最高の横綱だった 《 美山 ( びざん ) 》
あいつだけにはどうしてもかなわなかった。あいつの前に立つといつもの力が発揮出来ずに負けてしまっていた。
あいつは引退してからいったいどこでどうしているのか。世紀の大横綱、美山。その消息をマスコミも追ったがついには探しあてる事は誰もできなかった。
本来の女性の体、精神に戻り、どこかで優雅な恩給暮らしをしている事は間違いない。
ウィン!!という体内に内蔵された本人だけにしか聞こえないアラームがやさしくささやき、私は今の川田修平の生活に引き戻される。
目の前の空間には、カスタマイズされたサイトの映像が起動し、浮かんでいた。
これから食事をするレストランと待ち合わせの場所を知らせているのだ。
約束の時間だ。
来年1月、3年間の結婚契約を結ぶ相手の好美。176センチの長身でスタイル、マスクもモデルなみの女性。
頭も良く、性格も思いやりがあり、礼儀をわきまえ、行動力も抜群。結婚相手にはこれ以上の相手は存在しない。
自宅をでると、オートタクシーがすでに待っていて無言で乗りこむ。
すべてはカスタマイズ済みでレストランへ自動運転が開始された。
彼女は、すべて申し分の無い女性だったが、一つだけ、なぜかあまり自分の事を話したがらない。
好美も今、私と同じく若くして上流階級の暮らしを手にしている。
アンドロイドの店の給仕に案内され奥へ歩く。
ああ!しまった!好美が先に席に着いていた。小走りで彼女が待つ席に向かう。
今日も相変わらずステキな好美だが、だからこそなのだろうが…
どうしても頭があがらない。あの娘の前に立つといつもの私ではいられない。
この店で一番良い席に一般会社員の1年分のサラリーに相当する金額の美しいドレスを身にまとった好美がそこにいた。
ドレスからすらりとした美しい素肌の長い足が見え、眼を奪われる。
好美は、しきりにヒザの辺りを撫でていた。
そして、私に気づき、小さく手を振りながら微笑んだ…
《 お わ り 》