アンクロボーグの世界

世界の存在すべてはSFです。
SFは最高の文学です。

SF短編小説も有ります。読んでみてください。

ショートショート 【教え子】

2009年02月27日 15時41分08秒 | ショートショート

《 自動創作プログラムが作製したショートショート作品です 》

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【教え子】

はるか未来。
人類は、あらゆる面で進化し進歩を成し遂げることが出来た。
そして…ついに…この時が訪れた。

人類の歴史、太古の昔からの絶対的二つの存在。
過去何度か、人類のごく一部はそれらに触れては、いたが確信を持ってその姿を認識することは、出来てはいなかった。
そうして今まさに、二つの絶対的存在と人類代表は同一空間上の異空間で相対していた。

その二つの存在とは、神と悪魔。

たくましく進化を果たした一人の人間を前にして 神 は言った。
「おお!!ついにあなたたちは私の導きの元、生命体としての精神的高みの頂点へと現れたのですね」
その神の表情は、すばらしく見事な微笑みで見つめていた。

偉大な進化を遂げた一人の人間を前にして 悪魔 も口を開いた。
「おお!!我が邪悪な精神を持つ真の友よ!よくぞ!我と会話し得る程に大きくなり、良くもこの場へと現れた。さあ!共に語ろうではないか」
その悪魔の表情は、怪しく不気味な笑みで見つめていた。

肉体的にも精神的にも大幅な自己変革技術を使い能力を増大させている人間は堂々とした姿で、今、神 と 悪魔 の前へ立つ。

人類代表の人間は、神と悪魔を交互にゆっくりと見つめた後、口を開いた。

「お前らが我ら人類を長年苦しめていた存在か!!なんと!小さき者。魂よ!」
そう言っただけで人類の代表である5メートル余りの巨体を持つ1人の人間は、対話を打ち切り、歩き去ってしまった。
従事として後方に控えていたロボット1体が深々と一礼をして後に続き、退席してゆく。

この会談の為に用意された特殊異空間のその場はシーンと静まりかえった。

残されてまったく相手にされなかった 神 と 悪魔 は唖然とした表情で立ちすくんでいた…

《 お わ り 》

ショートショート 『セーフティネット』

2009年02月26日 23時55分35秒 | ショートショート
《 自動創作プログラムが作製したショートショート作品です 》

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『セーフティネット』

気づくとテーブルに置いた携帯が緑色に光っていた。
メールが届いた知らせだ。
「ん!?木本から!」
学生時代、バイト先で知り合ってからこれまで、時々連絡を取り合っている男。
でもアドレスが違う。携帯を替えたのだろうか?いまどき珍しい。

メールには、木本本人の近況が書かれていいた。
まあ簡単に説明すれば、突然病気になり入院、3か月後、退院したが、治療費もろもろの支払いで蓄えが底をつき、仕事をリストラされたあげく、住んでいるアパートを出て現在は、ホームレス状態ということだった。

それは、大変だということで電話をかけるのだが木本の携帯は、なぜかメール専用端末らしく通話ができない。
「大変だったな。どうしてもっと早く連絡をしてくれなかったんだ。知っていれば何とかしてあげたのに」とメールを送信。
(※とは言っても俺も似たような待遇でいつリストラされるかわからん身で金は貸してあげれないのだが…)
で、返ってきたメールがまた奇妙で本人は結構、ホームレスの暮らしを楽しんでいるらしいのだ。

とにかく一度会いたいということになり、教えられた場所に出かけて行くことになる。
メトロの千代田線に乗り込み、北千住まで向かう。

駅を出るとすぐにロータリーの通路にひと際目立つスーツ姿の男と他、数名のおそろいのスタッフジャンパーを着た一団を見かける。
昨日投票が終わり当選した次期足立区区長様の一行だとわかった。
当選のお礼にと満面の笑みで区民の皆様へごあいさつにみえていたのだ。

区民では無い私は、ぐるりと迂回し待ち合わせの七瀬公園へ向かった。
公園の正門まで行くと見慣れた木本の姿を見つける。先ほど駅に着いたと、メールで報告していたので迎えにでてきたようだ。
「よう!ひさしぶり!」
私は眼を疑う。木本のその姿と表情は、私の想像している ホームレス のそれとは余りにも差があったのだから。

木本から詳しく聞くにつれ、いまどきのホームレスという暮らしがどんなものなのかわかってきた。
そう、ひと昔みたいなキツイにおいを放つ人達ではないのです。
まず、着ている服に秘密があった。
それは、高機能の素材で編みこまれた服。冬は暖かく体を包み、蒸し暑い夏も涼しく過ごせる。
そしてその服には数体のナノマシンが常駐されていて、日々の暮らしで発生する体の汚れ、その他、外部からの汚れを寝ているうちにきれいに除去してくれるという。
そして見せてもらった施設がまた奇妙。
その寝泊りしている公園の一角には自治体が管理している月極の 駐 者 場 。
通常200個単位で設置されていて、カプセルホテルのユニットとコインロッカー、そして寝袋を足したような姿。この小さな小さなスペースの中で夜をすごせるようになっているのです。
もちろんこの袋の中もナノマシン制御でいつも清潔に維持されている。

木本の話では、ホームレス生活3日目に区の職員に話しかけられここに来るように薦められというのだ。まず簡単な健康チェックを受け、戸籍を確認し何やら書面を確認させられサイン。
そして、ナノマシン付きの高機能の服を含めたホームレスの七つ道具ならぬ一式の支給を受け、ここでの生活になる。
携帯形式の情報端末装置もこのとき支給され生活に必要な情報が双方向でやり取りできるようになっている。

この端末は健康の維持を常時監視、短期仕事の斡旋、あらゆる情報の検索にも役立ち、通常の連絡にも使える。但し、通話は極力制限されていて、メール形式の文字、画像でのやり取りのみ。
※そして、もちろんこの端末の操作通信履歴はすべて区の監視管理下にあるのだが…

心配事などのカウンセリング、仕事がなく、食べ物に困ったばあいの各ボランティア団体、教会などによる炊き出し開催地区、時間などの情報検索にもつかえる。

これら一式のサービスが安価で提供されていることに驚いた私だが、木本はそこのところにはあまり関心がないらしく、毎日愉快に楽しく暮らせていることをしきりに話しているだけだった。
まあ、うまい話には裏があるのだろうから、木本が区と交わしたであろう例の書類には、いろんな契約が入っているのだとは思う。

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そんなこんなで2カ月後

私もめでたく不安定な勤め先を見事リストラされココ、七瀬公園の木本のお隣さんになっている。

「ホームレスに投票の機会を」という強制メールが最近毎日配信されてきている。
衆議院選挙が近くなりつつあるらしい。ココに来た時、住民登録手続きをおこなったためだ。

昔のホームレスには住民票がない人も多かった。
「選挙に関心を持つことは自立の一環」と「投票ができないと、選挙に関心がわかない。住民登録の問題が解決すれば、仕事にも投票にも大きな道が開ける」ということらしい。

まあ私や木本にはどうでもいいことだ。
毎日愉快に楽しく暮らせていれさえすれば…

今日も地元出身の衆議院議員選挙立候補者様の観音様のようなお姿を夢に見ながら眠ることになりそうだ…

  《 お わ り 》

ショートショート 『キャプテン エスモニー』

2009年02月25日 22時20分42秒 | ショートショート
《 自動創作プログラムが作製したショートショート作品です 》

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『キャプテン エスモニー』 


宇宙域R-335を宇宙船ラッシュ号が静かに航行していた。
ココは、我々の故郷の星、地球から、遥か遠く離れた場所。めざす目的地は、惑星ヤンジャー。

宇宙船ラッシュ号のロボット航海士エイオンは、惑星ヤンジャーまでの最終航路チェックを終えた。
わずかに発生した、位置修正作業を船の制御知性体ポエリに伝えた。
「やっぱりだ。だから最初から私ポエリが航路設定を行えば良かったのだ」「非常に無駄な行為だ」効率最優先の考えを持つ、知性体ポエリが不満を口にする。 いつものケンカが始まった。
航海士ロボのエイオンは、「わからん奴だ。昔からこういう事は、航海士の仕事なんだよ。誤差にしてもわずか0,0001…」
おっと、こんなことしてる場合ではない。今日は、キャプテンを起こす時間なのだ。
今度のキャプテンは、20年の年月をかけて製造した期待作。
「キャプテン、起きてください。キャプテン…キャプテン…キャプテン エスモニー」

人類が生命種としての寿命を迎えて絶滅し、かなりの時が過ぎていた。
今、地球は、次の支配種の巨大クラゲが何の目的もなく地上を歩き回っているだけだ。 高尚な思考など一つも出来ない愚かなクラゲ…
遥か昔の事、人間を主人に持つ、私たち、人工知性体が、人間の命令を受け、長い長い宇宙探査へ旅たち、地球へ帰還したとき、人類の姿は、すでに無かった。
私達、人工知性体は、残された人類の遺産を検索し、整え、人間を甦えさせた。だが人間達は、何かが違っていた。すでに生命としての存在価値を無くした生き物の姿がそこには、あった。
私達は、決断した。
創造主たる人間を昔の生気あふれる姿として復活させる為、銀河のどこかに存在していると言われる謎の科学技術生命の扉を探す、長い長い旅に出かけることを…

そして今、ラッシュ号は、生命の扉がある惑星ヤンジャーへ向かっている。
製造し目覚めさせた人間キャプテン エスモニーは、船長席に座り何やら宙を見つめたまま、考えている様子…
今度の星ヤンジャーには、かなりの危険が待ち受けている。到着までの数時間、キャプテンには、一通りの教育を受けてもらう。

実際、生きている人間とかかわるたびに私達、人工知性は、心から思う。「ああ…この感覚。人間と一緒の時を、空間を過ごせている幸せ…なんとすばらしい事か…」

惑星ヤンジャーは、重力数値は、地球ほぼ同じだが、大気成分は、かなり違う。
その為、キャプテン エスモニーには、呼吸器官組織を改造させてもらっている。これでマスクをしないで動けるはずだ。

我々は、さっそくヤンジャー人の居住地区へ降下を開始した。
地上へ降り立つラッシュ号のメンバーは、4体。
私、航海士ロボエイオンと知性体ポエリが乗りこむ浮遊球P-663、遺伝子データから複製され知性化させた四足歩行の動物、ベンガルタイガーのダルガニア。
そして人間、キャプテン エスモニー。

土着の自然原始宗教が文明の絶対的基盤のヤンジャー人。対話には、かなりの困難が予想できた。
だがキャプテン エスモニーは、良くやってくれている。すばらしいリーダーだ。
ヤンジャー人は、何事にも1対1の優美な戦いを交流の源としている生命体。何事にもリーダー同士の戦いを要求してくる。
片腕、片足を失いながらも勇敢に民族長と互角に戦かうキャプテン。
長い戦いの末、ついに息絶えたキャプテン エスモニー。

絶命し横たわるキャプテン エスモニーとヤンジャー人の族長の肉体。
残された私たちは、認められ、盛大な歓迎式に参加をゆるされ、時を過ごす。
ヤンジャー神の命を受けた、新しいヤンジャー人族長ヤヤパゼに生命の扉の秘密を聞く事にした。

…結局、扉は、ココには、存在しなかった。ヤンジャー人の中で代々受け継がれてきた生命の扉とは、我々が求めていた物では無かった。

惑星ヤンジャーの神聖な丘にヤンジャーの乾いた風が吹く。
失った命…キャプテン エスモニーの墓石を異星の地に残し、ラッシュ号は、飛び立つ。
次の惑星を目指すために…

通常の宇宙航行に戻った私達は、次の準備を始めた。
新たなキャプテンの作製だ。
宇宙船の中に保存されている人類データ構造体からポエリが最良の組み合わせとして選び出した次期人間の設計図。成長するまで、わずか20年だ。

時は、無限にある…

だが、私は、時々思う…いったい、いつまで我々の旅は続くのか。

いつか訪れるであろう、昔のように、若く活気に満ちた人類の下、我々人工意識体が共に楽しく生活する姿を夢みながら…
宇宙船ラッシュ号の旅は続く…

   《 お わ り 》

ショートショート 『箱の中の奇跡』

2009年02月23日 23時45分08秒 | ショートショート
《 自動創作プログラムが作製したショートショート作品です 》

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『箱の中の奇跡』


東京都 町田市 企業区画のナキオ電器社研究敷地内。白一色の細長い建物が規則的に数練建ち並ぶ。
その中に私の所属する研究班の部屋があった。

わずか3人だけの課題研究班。社内でもまったく期待されていないチームだ。
それでも、そろそろ何らかの成果を提出すべき時期が来ていた。特に今回は、私が研究チーフだからなおさらである。
私が勤務しているナキオ電器は、社名の通り電化製品の会社だが…
プラズマテレビや洗濯機を造っていたのは昔のこと。今では、延命医療分野、有機人造ロボット、社会運営人工知能などが主な製品となっていた。

夜11時。研究班の他の仲間2人、田代と真柴は、すでに帰宅していた。
「もう一度だけ、こいつを廻してみるか…」電子レンジ大の不格好な機械が1台、机上にのっかっている。
私は、スイッチを押し、装置を作動させ、中の《私》を《撹醗(かくはつ)》へと導く。

数値化されたニセモノの私は、静かに繭空間の中に《在待(ざいき)》していた。
頭の後ろで『ペコッ』と何か音がした。すぐに周りの繭壁が歪み始めた。
「ああ、はじまったな」外のホンモノの私が実験を開始したようだ。
モワッとした感覚の後、私の脳内が細かく切り刻まれてゆく。さらに分解され、解析の後、適正化処置がほどこされる。
理想的な構造の新型脳へと再構築の完了だ。これがいわゆる撹醗(かくはつ)である。
処理前の私の自我、記憶など、今回も、かろうじて残されていた。母の事も妹の顔も覚えていた。
おかしな事に、どうしても父という存在の意味が理解できないでいた。何なのか、生き物なのか、思い出せない。
バンクへ接続し、父を検索し、人間の事だと理解したのち、父だった男の映像通話の記録をロードさせ、やっと、記憶が一部分が甦った。

自分の脳を人体実験にして今回で5度目の撹醗(かくはつ)になる。
電子レンジ大の装置の中に住むニセモノな私。
外の本物の私は今、どうしているのだろうか。ココまで切り刻まれて変格した私は、すでに違う自我意識の生き物なのかもしれないが…
しばらくして変化が感じとられてきた。あきらかに、これまでの4回の実験と違うものを感じ取る私がそこにいた。

「これは…いけるかも知れないぞ」
「よし、まずは、機能チェックだ」ヒトゲノムをフルに取りこみ、解析計算を行ってみた。
軽くスーパーコンピューター以上の機能を発揮し、わずかな時間で解読を終えた。
「成功だ」ついに人間の脳は、新たな別次元の進化を果たした。
すぐに外の私に報告を入れる。

すでに時は、12時を過ぎ日付が替わった。
電子レンジ大の不格好な機械が1台、机上にのっかっている。
私は、装置の表示を見る。中の私の撹醗(かくはつ)は終了しているはずだが…
何の変化もおきていないようだ。「今度もハズレか…」帰り支度にとりかかろう。

中の私は、もう一度、外へ成功の報告を入れる。返事は、無い。
私の脳は、次々に驚異的な数値をたたき出していた。
返事がこない事にいら立ちながらも、私は、あまりの知性の爆発に我を忘れていた。
「もういい。返事は、いずれ来る。先に進もう」
私は、次々に人類の共通課題の解明に挑んだ。

まずは、誰もが利益を得る事の出来る持続的経済理論の方式を考えてみる。
すぐに答えが出た。この理論を使えば、資源の奪い合いでの争い戦争は無意味になる。経済の、繁栄が約束される。

次に絶対的な万物理論の考察を行う。答えは、数式であらわされた。
これで自然界の謎は無くなった。すばらしい…無尽蔵のクリーンエネルギーの実現。すべての物質の変換が自由自在。生物のそして、人間の無限な進化と希望。

人類の存在理由にも答えが出た。人類がこの宇宙に存在している事の意味…

そして最後に、神の存在の証明に…答えが出た。
「あああ…こんなことが…こういうことだったのか…」
神は、実在した。

その頃、外の私は、装置から発し、られている意味不明のノイズを記録していた。
こんな事は、はじめてだった。少なくとも中の私からの通信では、ないようだ。こんな波形は、解析できない。
「やはり、同じデジタルデータを5回も撹醗(かくはつ)させたのがまずかったか」
「たぶん、中の私は発狂したものと考えるのが妥当だ」
さあ、もう帰る時間だ。装置のリセットボタンが押され中の私は、消えてしまった…

すべてが…消えた…永遠に…

中での奇跡は、誰にも知られる事はなかった。

   《 お わ り 》

ショートショート 『交渉人 枝川裕樹』

2009年02月22日 20時57分13秒 | ショートショート
《 自動創作プログラムが作製したショートショート作品です 》

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『交渉人 枝川裕樹』

枝川裕樹は、大事な交渉に向かっていた。政府専用の高性能の小型飛行機に乗り高度6,000メートル上空にいる。
2週間前の台風20号の担当者は、交渉を失敗させて、最悪な結果になった。台風通過進路の1都7県で16名もの死亡者を出した。

11年前のこと。気象庁の自然研究機関がガイア理論の実存を発見し証明したのだ。
ある一定以上の規模の自然現象には、人類とは、かなり異質だが、何らかの知性が存在していることを…
現在、存在が確定し、コンタクトに成功しているのは、台風(ハリケーンを含む)と内陸部、直下型の地震の二つ。
政府は、これらの知性体と交渉をし、少しでも被害を減らせないものかと考えた。そこで枝川のような自然生命交渉士制度が作られたのである。

枝川は、日本国内でもわずかにしか、いない気象交渉士の資格を持った人物。
特に枝川は、さらに貴重な地震交渉士の資格をも有する人物で、現在、日本では、6名の中の1人だった。

台風21号の雲の中にすでに浮かべてある《反応浮き》66基は、正常に作動していた。
大きく深呼吸した枝川は、装置を目覚めさせ、脳へ直結させた電極弁を少しずつ開きながら交渉を開始した。
「大きく…素晴らしい…美しい…」枝川は、そうゆっくり、3度繰り返し、話しかける。
相手の返事を待つ。しばらくして枝川の脳を震わせる波動が送られてきた。
「私は…大きく…素晴らしい…美しい…」よし。台風の返事が来た。
何回かやり取りを成功させ、本題に入る。今回の使命の一つは、人柱《ひとばしら》を1名にしてもらえるように交渉すること。
精神を研ぎすまし、ピュアにし、対話を交わしてゆく。
21号の規模から言えば最低、2名の犠牲が必要なのだが何とか交渉がまとまった。

台風生命の一生は短い。
赤道付近で生まれたとき、意識が芽生え、大気に運ばれ移動を続け、温帯低気圧になり小さくなってゆきやがてその命が終わる。
10日後、台風21号は、人柱の確認を終え、人の命の絶命と共に、約束通り、大きくならずに、規模を弱めながら気圧を分散させ日本列島を縦断。
やがて、オホーツク海へ出たあたりで寿命を迎えてくれた。

装置の接続をすべてほどき、枝川は、解放された。いつものことだが、かなり危険な状態だ。
すぐに専用の処置がほどこされた病院へ向かう。同じ機内には、各テレビ局の取材班がこの交渉のもようを全国へ伝えていた。
力をふり絞り、レポーターのマイクとカメラに向かい枝川は、最後の任務を果す。
「交渉は成功です。超大型の21号は、これ以上の規模に成長しない事を約束してくれました」
「皆さん、尊い1名の殉職者の冥福を共に祈りましょう」

これで台風の被害は軽度なものと成り、程よい雨のめぐみを日本に与える事だろう。

枝川にとっては、2ヵ月後に更なる重大な大仕事が控えていた。南関東にいずれ発生する大規模地震との交渉だ。
この計画は、国家プロジェクトで進行している。地震交渉士も枝川を含め6人が参加することが決まっている。

失敗は許されない。
地震生命体は台風生命体よりも交渉が難しい。人柱の人数もかなりの数が必要なのだ。

2ヵ月後、6名の交渉人が地下600メートルの特殊地下空間に集まっていた。
「人柱の用意は、出来たのか」枝川は、再度、政府機関の責任者に問う。
「はい。最終チェックを済ませ準備が完了しました。厳重に個別カプセルにて起動させました。さとられてはいません」
枝川は、目を閉じ、これまで殉職した人柱143名が眠る慰霊碑のある方角に向かい祈る。
今回の南関東規模の地震だと人柱の殉職者の数は、100名以上に昇る。
何百倍もの人を助けるとは言え、決して許されない数だ。

全世界も注目している。これまでも人柱には、人権問題で猛烈な国際的避難を受けていた。
これを受け、気象庁は、今回からは、違う対処法に出た。
人間の人柱を使わない方法を開発したのだ。クローン人間を使う方法だ。
特殊培養法で育てられた極力、意識や人格を持たないとされる半人類と言うべきもの。
はたしてこの模造人間、ニセモノ人間で地震生命体をごまかす事が出きるのだろうか。

私、を含め6名は、装置を目覚めさせ、脳へ直結させた電極弁を少しずつ開きながら交渉を開始した。

「強く…大きく…美しい…」

   《 お わ り 》