関東はまだ梅雨も明けずムシムシと暑い日が続きますね。
このシーズンになるとあの魚が恋しくなります。
鱧(はも:hamo)でやんす。
速いもので昨年の7月に鱧の薀蓄をカキコしようと思ってましたが、他の話題をカキコしていたら季節は秋になってしまい機を逸してしまいました。
祇園祭もこれからが本番(山鉾巡行)のなか、ほとんど鱧を食べたことのない江戸っ子の(友人やこのブログを楽しみにしていてくれる人たちの)ためにちょっとカキコします。
盛夏を旬として関東・関西の味覚を代表する魚にウナギとハモがあります。
滋養の点でなかなか甲乙つけがたいですが、みなさんはどちら派ですか?
私は料理人として関西で修行をし、いろいろなハモ料理を食べてから、ウナギ派からハモ派になっちゃいました。(決してウナギが嫌いなわけではないんだけど、ちょっと脂肪分が多く濃厚(高カロリー)なので重くなっちゃって...。年のせいではないです。20代からそう感じてましたので)
京都の祇園祭、大阪の天神祭に欠かせない魚といえば鱧(ハモ)。
すでに安土桃山時代の京都ではハモを食していたらしく、いらい上方(かみがた;京・大阪)における存在感は、江戸前のウナギをしのぐかもしれません。
海のない京都で鱧(ハモ料理)が定着したのはなぜか?
まだ交通が発達しないズ~ッと昔、京都は大阪湾からでも40kmも離れた土地ですから、かつては生の海産物を口にすることはとても難しいことでした。
このため干物を上手に戻す料理の発達が京料理の底辺を形成しています。
フランス料理も同じことが云え、各種ソース料理が発達したのも、その昔、内陸のパリでは鮮度のいい肉や魚は手に入らず、干物にした肉や魚を、あるいは腐りかけた肉や魚を旨く食べるためにソースが作られ工夫されフランス料理の底辺を形成するものとなりました。
ところが、この鱧だけは例外で、桶に水を張り、そこに鱧を入れて淀川を舟で曳いて遡りました。それは鮮度の良い魚が手に入りにくかった京都で大変重宝されました。
鱧は生命力が強く、湿り気さえあれば一晩以上は生きており、活魚車のなかった昔でも、山を越え、京都まで生きたまま輸送可能でした。
当時は大変貴重な生魚だったため、活きた鱧を「水鱧」と呼んでいたそうです。
また鱧は鮮度が落ちると棒のように真っ直ぐ硬くなるため、瀬戸内から来る活け鱧は、桶の中でつの字形(画像のように)をしていたので「つ之字の鱧」などとブランドネームがつけられ珍重されていました。
鱧【Hamo】
外見はウナギ型で、やや側扁した長い円筒形をしていて、大きいものは2mにもなります。
分類学的にウナギ目ハモ科ハモ属に属するアナゴやウナギの仲間です。
口は大きく裂け、矢じりのように鋭く尖った歯や強いアゴを持っています。
性質は荒っぽく、噛み付きやすいという荒くれモノ。
ハモという名前も、鋭い歯で「噛む(はむ)」性格に由来し、はむが訛り「ハモ」と呼ばれるようになりました。
◆薀蓄-① 「骨切り」の世界
ハモの特徴はなんといっても硬い小骨が魚体全体にあることです。
そのため一般には「骨切り」をしないと食べられません。
(京都の一部の料理屋ではその小骨を毛抜きで一本ずつ抜く技法を編み出して繁盛しているところがあるらしいですが、気が遠くなる作業です)
腹開きし、三枚におろしたハモを長方形の重い専用の包丁(骨切り包丁)を使って、背皮1枚残し「一寸(約3cm)に25筋(26筋にこだわる職人もいます)」包丁の刃を入れていきます。
昔から料理人(板前)としてこれができれば一人前の証しとされています。
新江先生の和食料理特別講座 鱧(はも)料理
新江先生の和食料理特別講座 鱧(はも)切 続編
鱧の骨切り~鱧の白焼きと鱧おとし(①骨切りした鱧に串を刺し皮目を焼き、ワサビ醤油で食す。②沸騰した湯に塩少々、鱧の切り身を浸し火を通し(湯引き)、梅肉で食す。芥子酢味噌(からしすみそ)やワサビ醤油などで食べても旨いよ。夏の鱧、最高!)
「骨切り」のような板前のウデ(職人ワザ・技術料)は、総じてハモ料理を値段が高いもの・・・としてきました。しかし、近年では自動骨切り機が開発され、ハモの流通や消費を大きく変えています。
(寿司職人の世界も、自動すし握り機の登場で大変革が起こりましたよね)
◆薀蓄-②
ハモの皮にはコンドロイチンという物質(身にはアミノ酸)が多く含まれています。
コンドロイチンは老化防止に役立つことが今ではわかっています(とりわけ女性の肌を滑らかにするそうです)が、知ってか知らずか昔からハモ料理では、肉を切っても皮は捨てずに残しておく(使う)ことになっていました。
真っ白な鱧の身は、淡白なようで濃厚。
ウナギやアナゴと同じくビタミンAを豊富に含み、ミネラルも多く含んでいます。
カルシウムは鱧の仲間(ウナギ・アナゴ)の中でもダントツの量で倍以上含みながら、カロリーはウナギに比べてずっと少なく大変ヘルシー(だから個人的に好き)
画像は贅沢な“鱧しゃぶ”
◆薀蓄-③
鱧は海水と川水が混じりあう「汽水域」に好んで棲んでいて、雨が降った翌日や台風の後なんかに多く水揚げがされます。
ハモの旬は2回あります。
1回目の旬は夏。ハモは梅雨の明けた頃に脂がのって美味しくなります。
「鱧は梅雨の雨水を飲まないとおいしくならない」と昔からよく言われ、その時期が京都の祇園祭、大阪の天神祭りと重なるため、祭りにハモをご馳走する習慣が生まれました。
祇園祭が「鱧祭」といわれる由縁です。
2回目の旬は秋。一番脂がのり、味に深みが出てきます。
この時期の鱧を「金鱧」「松茸鱧」と呼び、珍重されています。
祇園祭
京都祇園祭 HD
このシーズンになるとあの魚が恋しくなります。
鱧(はも:hamo)でやんす。
速いもので昨年の7月に鱧の薀蓄をカキコしようと思ってましたが、他の話題をカキコしていたら季節は秋になってしまい機を逸してしまいました。
祇園祭もこれからが本番(山鉾巡行)のなか、ほとんど鱧を食べたことのない江戸っ子の(友人やこのブログを楽しみにしていてくれる人たちの)ためにちょっとカキコします。
盛夏を旬として関東・関西の味覚を代表する魚にウナギとハモがあります。
滋養の点でなかなか甲乙つけがたいですが、みなさんはどちら派ですか?
私は料理人として関西で修行をし、いろいろなハモ料理を食べてから、ウナギ派からハモ派になっちゃいました。(決してウナギが嫌いなわけではないんだけど、ちょっと脂肪分が多く濃厚(高カロリー)なので重くなっちゃって...。年のせいではないです。20代からそう感じてましたので)
京都の祇園祭、大阪の天神祭に欠かせない魚といえば鱧(ハモ)。
すでに安土桃山時代の京都ではハモを食していたらしく、いらい上方(かみがた;京・大阪)における存在感は、江戸前のウナギをしのぐかもしれません。
海のない京都で鱧(ハモ料理)が定着したのはなぜか?
まだ交通が発達しないズ~ッと昔、京都は大阪湾からでも40kmも離れた土地ですから、かつては生の海産物を口にすることはとても難しいことでした。
このため干物を上手に戻す料理の発達が京料理の底辺を形成しています。
フランス料理も同じことが云え、各種ソース料理が発達したのも、その昔、内陸のパリでは鮮度のいい肉や魚は手に入らず、干物にした肉や魚を、あるいは腐りかけた肉や魚を旨く食べるためにソースが作られ工夫されフランス料理の底辺を形成するものとなりました。
ところが、この鱧だけは例外で、桶に水を張り、そこに鱧を入れて淀川を舟で曳いて遡りました。それは鮮度の良い魚が手に入りにくかった京都で大変重宝されました。
鱧は生命力が強く、湿り気さえあれば一晩以上は生きており、活魚車のなかった昔でも、山を越え、京都まで生きたまま輸送可能でした。
当時は大変貴重な生魚だったため、活きた鱧を「水鱧」と呼んでいたそうです。
また鱧は鮮度が落ちると棒のように真っ直ぐ硬くなるため、瀬戸内から来る活け鱧は、桶の中でつの字形(画像のように)をしていたので「つ之字の鱧」などとブランドネームがつけられ珍重されていました。
鱧【Hamo】
外見はウナギ型で、やや側扁した長い円筒形をしていて、大きいものは2mにもなります。
分類学的にウナギ目ハモ科ハモ属に属するアナゴやウナギの仲間です。
口は大きく裂け、矢じりのように鋭く尖った歯や強いアゴを持っています。
性質は荒っぽく、噛み付きやすいという荒くれモノ。
ハモという名前も、鋭い歯で「噛む(はむ)」性格に由来し、はむが訛り「ハモ」と呼ばれるようになりました。
◆薀蓄-① 「骨切り」の世界
ハモの特徴はなんといっても硬い小骨が魚体全体にあることです。
そのため一般には「骨切り」をしないと食べられません。
(京都の一部の料理屋ではその小骨を毛抜きで一本ずつ抜く技法を編み出して繁盛しているところがあるらしいですが、気が遠くなる作業です)
腹開きし、三枚におろしたハモを長方形の重い専用の包丁(骨切り包丁)を使って、背皮1枚残し「一寸(約3cm)に25筋(26筋にこだわる職人もいます)」包丁の刃を入れていきます。
昔から料理人(板前)としてこれができれば一人前の証しとされています。
新江先生の和食料理特別講座 鱧(はも)料理
新江先生の和食料理特別講座 鱧(はも)切 続編
鱧の骨切り~鱧の白焼きと鱧おとし(①骨切りした鱧に串を刺し皮目を焼き、ワサビ醤油で食す。②沸騰した湯に塩少々、鱧の切り身を浸し火を通し(湯引き)、梅肉で食す。芥子酢味噌(からしすみそ)やワサビ醤油などで食べても旨いよ。夏の鱧、最高!)
「骨切り」のような板前のウデ(職人ワザ・技術料)は、総じてハモ料理を値段が高いもの・・・としてきました。しかし、近年では自動骨切り機が開発され、ハモの流通や消費を大きく変えています。
(寿司職人の世界も、自動すし握り機の登場で大変革が起こりましたよね)
◆薀蓄-②
ハモの皮にはコンドロイチンという物質(身にはアミノ酸)が多く含まれています。
コンドロイチンは老化防止に役立つことが今ではわかっています(とりわけ女性の肌を滑らかにするそうです)が、知ってか知らずか昔からハモ料理では、肉を切っても皮は捨てずに残しておく(使う)ことになっていました。
真っ白な鱧の身は、淡白なようで濃厚。
ウナギやアナゴと同じくビタミンAを豊富に含み、ミネラルも多く含んでいます。
カルシウムは鱧の仲間(ウナギ・アナゴ)の中でもダントツの量で倍以上含みながら、カロリーはウナギに比べてずっと少なく大変ヘルシー(だから個人的に好き)
画像は贅沢な“鱧しゃぶ”
◆薀蓄-③
鱧は海水と川水が混じりあう「汽水域」に好んで棲んでいて、雨が降った翌日や台風の後なんかに多く水揚げがされます。
ハモの旬は2回あります。
1回目の旬は夏。ハモは梅雨の明けた頃に脂がのって美味しくなります。
「鱧は梅雨の雨水を飲まないとおいしくならない」と昔からよく言われ、その時期が京都の祇園祭、大阪の天神祭りと重なるため、祭りにハモをご馳走する習慣が生まれました。
祇園祭が「鱧祭」といわれる由縁です。
2回目の旬は秋。一番脂がのり、味に深みが出てきます。
この時期の鱧を「金鱧」「松茸鱧」と呼び、珍重されています。
祇園祭
京都祇園祭 HD
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