クラシック音楽徒然草

ほぼ40年一貫してフルトヴェングラーとグレン・グールドが好き、だが楽譜もろくに読めない音楽素人が思ったことを綴る

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第8番 ラズモフスキー第2番 ホ短調  ブッシュ弦楽四重奏団

2015-08-29 17:25:31 | ベートーヴェン
マイ・バッハ・ブームはあっさり終わり、今はベートーヴェンをはじめとする弦楽四重奏の世界に沈潜している。
きっかけは、「チェンバロ、フォルテピアノ」のナネッテ・シュトライヒャーとベートーヴェンの記事を読んだこと。それで、ベートーヴェンの初期ソナタが聴きたくなって作品2や作品10のグールドのレコードを聴く。すると今度は初期の弦楽四重奏曲を聴きたくなり、全6曲を立て続けに聴く。勢いでラズモフスキーの3曲も聴いたら、これがトラップであった。

中学生の頃、クラシックを聴きだしてベートーヴェンの第5や第9で感激すると、”第9をモノしたあと死去するまでの数年間、ベートーヴェンは何をしていたのだろう?”と疑問を持った。図書館の名曲鑑賞事典みたいな本で調べると、弦楽四重奏曲を書いていた、とある。しかも非常な傑作で、深遠とか幽玄とかいう言葉が並んでいる。さぞかしすばらしい曲に違いない、と憧れを募らせていた時にたまたまラジオでエア・チェックしたのが何とバーンスタイン指揮による14番弦楽合奏版だった。ほぼ同時期に聴いたのがフルトヴェングラー指揮の同じく弦楽合奏版大フーガのレコード。それまでに聴いた弦楽四重奏曲は小学校の鑑賞曲だったハイドンの「ひばり」第1楽章だけ、という小僧にこんな曲が理解できるわけがない。14番なぞ楽章の切れ目すらわからない。が、繰り返し聴いているうちになぜかわかってしまった。特に14番は他の曲も知らないのに、弦楽四重奏というジャンルの最高傑作と信じ、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲で聴くのは12番以降の後期ばかり、初期はおろかラズモフスキーも相手にせず、という状態になってしまったのである。

そんなわけでラズモフスキー第2番も今だに新鮮で、特にどうこう言うものも持ち合わせていないのだが、私が偏愛していて世間ではマイナーらしいのがブッシュ弦楽四重奏団の演奏である。
私が聴いているのは、28年前にたまたま図書館で見つけたLPをテープに録音したというシロモノ。先日同じ図書館に行ったらそのLPがまだあった。

 20AC1295

本レコードに添付されている藁科雅美氏の解説によると、ブッシュ弦楽四重奏団による同曲の録音は無いと思われていたが、イギリスの好事家(あるいはマニアあるいはオタク)が米国時代に録音していることをつきとめた。実際にコロンビアの倉庫に原盤が眠っているのが発見され、CBSソニーが世界に先駆けてレコード化した、ということである。
録音は1941年5月28/29日,6月21日でメンバーは、アドルフ・ブッシュ、ゲスタ・アンドレアソン、カール・ドクトール、ヘルマン・ブッシュであった。

この演奏で非常に印象深い箇所が第2楽章の提示部と再現部にある。(下の譜例は再現部)



赤の矢印のところで、ブッシュは一瞬の間(ゲネラルパウゼ)を入れる。それがきわめて効果的で、その前までクレッシェンドしてきた流れがここでパッと切り替わる。
実に静寂な世界となって、その中でヴァイオリンが奏でる上がったり下がったりする3連符のフレーズが神々しいまでの美しさを帯びる。

こういうことをやっているのは私の聴いた限りではブッシュだけで、これに耳が慣れてしまうとどうしてもこの箇所でこの「間」を期待してしまう。


コメントを投稿