南西諸島貝殻学入門

分子細胞生物学と博物学の分野に跨る「貝類学」を、初歩から学んでみましょう。美術学や数学的な見地からも興味をそそられます。

南西諸島貝殻学入門-023

2013年11月02日 | 生命科学

 

南西諸島貝殻学入門 

             -023

 

 

 

静かな珊瑚礁の海岸

 

 静かな太平洋岸の珊瑚礁の拡がる湾の中の砂浜。大潮の干潮時間ともなれば、沖合いまで潮が引き、珊瑚の岩礁が海面に迫り出して来ます。この時ばかりは三々五々近所の人達や、遠くからも潮干狩りに老若男女を問わず、沢山の人達が訪れます。

今年は台風が沢山南西諸島を通過して行きました。現在まで29号まで発生。アベック台風も多かったのが、今年の特徴でした。

 台風が通過してから数日後、浜に何時もの通り出かけたのですが、残念ながらご覧の通り。最近は余りヒットに恵まれません。砂浜に厚く砂が覆ってしまっているのがその原因のようですし、貝そのもの浜に上がっておりません様で。

 

貝の収集の戦果 

 

 

それでも何かしら良いものを・・・・ご紹介! 

白化した珊瑚 

 

 

漂白剤に就けて浸しておくと、ご覧の通り美しさ。ちょっとした飾りになります。

サザエ

 

棘がわずかに付いております。少し波の強めの海域に住んでいるサザエ 。中央のくびれの部分に<ヘビガイ>が纏わり付いています。

ナデシコ

 

左右で一組です。突起部分が左右対称になっていません。拾った時は生態部分が付いていた状態ので、もともと一つのものです。思わぬ発見でした。貝殻の模様も違いますね。これも始めての発見でした。唯拾うだけでなく、注意深く観察することが肝心かも。

ヒラマキカタベイガイ 

 

この貝の正しい置き方はどちらでしょうか? 

               

 

鹿児島の貝」(行田義三 著)を調べてみますと、左の置き方が正しい。さすればこの貝は左巻きになります。巻貝は圧倒的に右巻きが多いので、珍しい貝殻です。

完品に近い磨耗の少ない貝です。 

タカラガイ 

 

<ホシキヌタ>と<クチムラサキ>ですが、左下の小さい固体は綺麗です。

 

ウシノツノガイ>と<ヒメチョウセンフデ> 

 

 残念ながら先端がボッキリ。結構磨耗しています。ヒメチョウセンフデはツメタガイに殺されたようです。縊れの所に小さな穴が開いてますね。可哀相に!

 

 

 

ちょっと一服  

                「話の喫茶店」 

 

クモガイスイジガイ

クモガイとスイジガイは南西諸島の代表的なソデボラ科の仲間。成貝になるとハッキリ貝殻の形態が違うので、間違うことは無いのですが、幼貝の段階では良く似ています。

 

下の写真はスイジガイの幼貝と成貝ですが、余り大きさに違いがありません。棘の有る無しで見分ける訳ですが、これらは同じスイジガイでも違った種類のようです。にも拘らず図鑑ではその区別は詳しくは記載されていません。なぜでしょうか?

スイジガイ

                      A    B        C 

BとCは殻の模様の様子が同じようですが、Bから成長してCにはなり得ないと考えれます。AからBへの変化は有りえる様ではありますが・・・・何故このような事が起こりえるのかは不明です。同系列の異種なのでしょうか。

クモガイ

両方ともクモガイですが、スイジガイと同じく同系列の中の異種類でしょうか。

下の写真はクモガイの破片です。

殻の模様の様子から下の写真の右側と同じでしょう。

クモガイ

 貝殻の研究は博物学的な色彩が強い傾向があるようですが、飼育などを含めて生態を細かに研究することも、今後より必要かもしれません。水中に潜って完品ばかりを獲っていても、なかなか貝の細かい事共は把握し難いかもしれません。特に海岸で収集する、所謂、偶然から思わぬことを知る場合もあります。貝殻の単なる蒐集では単なる物集めに終わる危険があります。

直に自然に接して自然から教えて貰うという、謙虚な態度が必要かもしれません。

定点観測は自然に接する、良い試みなのかもしれません 

 

  

                                            タカラガイ宝貝世界

 

 先回までは、日本と世界のタカラガイの名宝をご紹介してきましたが、如何せん余りの高価な貝殻ゆえに、実物は所有していませんでした。それが故、隔靴掻痒の感がありました。

今回からは実物を写真撮影しながら、身近な代表的な「タカラガイ」をご紹介したいと思います。

 

ヤクシマダカラ -01

 

ごく一般的なタカラガイと言っても、世界中には様々なタカラガイが有ります。その中で日本の中でも有名かつ一般的なタカラガイとされる貝に<ヤクシマダカラ>が有ります。

水中で生きたままで捕獲したもの、浜で拾ったものなどが大きく分かれますが、浜での採取のものは磨耗が進んだり、日光の紫外線で貝殻の模様が褪せてしまったものなど、ちょっと見にはなかなか同定が難しくなったものも有ります。

上の写真は6個が海中で、2個が海浜で収集したものです。

A- ホンヤクシマダカラ(本屋久島宝)・インド、フィリッピン中部以南、太平洋(オーストラリア北部)

B- オオヤクシマダカラ(大屋久島宝)・・インド洋西部

C- ホソヤクシマダカラ(細屋久島宝)・・八丈以南、インド洋西部、西大西洋に分布

D- ヤクシマダカラ(ヤクシマダカラ)・・太平洋アジア地域

E- グレーヤクシマダカラ・・紅海、西インド洋

F- ニセヤクシマダカラ・・インド洋、インドネシア

G- ヒメヤクシマタカラ(姫屋久島宝)・・インド、太平洋

H- キッコウダカラ(亀甲宝)・・中部太平洋

    ・・・以上8種類もあります。 

 上の写真を見ると、同じように見えてもなかなか微妙に違うのです。同定は慎重にしなくては・・

いろいろなヤクシマダカラ 

               

次回からは、各種の<ヤクシマダカラ>を、実際の現物を含めて見てみましょう。 

 

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