秋 田 奇 々 怪 会

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「東北見聞録~謎と不思議と珍談と」第三十五話

2018年05月19日 | 本・雑誌から
「東北見聞録」サクラの不思議

「花の色は 移りにけりな いたづらに わが身よにふる ながめせしまに」秋田が生んだ平安の歌人・小野小町がサクラを詠んだ和歌だ。毎年4月~5月にかけてサクラ前線が列島を縦断し、開花期間は短いながらも東北地方に「春本番」を告げてくれる。その花を愛でながらの宴に酔いしれる様は、長い冬からの解放感と陽光への感謝でもある。この様に日本人とサクラは切っても切れない縁にあり、年が明けると早々に、天気予報でも日本気象協会から「今年の開花予想」が発表されるほどだ。では、これほど親しまれていて毎年咲き誇るのが当然のサクラだが、その歴史や生態とは?


①田打ち桜
東北地方では雪解けが進み春の農作業が始まる頃、野山で真っ先に開花するサクラがある。その名は「田打ち桜」。本物のサクラでは無く、実は野生のコブシの花がその正体で、千昌夫の歌う「北国の春」でもお馴染みだ。東北以南では開花が早いので、本物のサクラを「田打ち桜」「田植え桜」「種まき桜」と呼ぶ地域も有るらしい。それほど一番に咲く花は、「春の息吹」と言う大切な役割を担って来た。
さて、本物の話だが、サクラのそもそもの語源は諸説あり、「古事記」に出てくる山の神「木花開耶姫(このはなさくやひめ)」の転化説、田の神に由来して「サ」は穀物に宿る霊、「クラ」は神が鎮座する「座」で、これが一緒になったと言う説もある。参考までに神の御座所とされる「磐座(いわくら)」は、全国各地の大きくて平らな岩(磐)が残る遺構等に見られる古来からの信仰だ。山に居る神(サ)が雪解けと共に田(クラ)に降りて来ると言う信仰は、命の糧である稲作の大切さを物語る。かつて万葉の歌に詠まれたサクラは、都の貴族の楽しみから地方へと広まり、やがては農村文化と信仰に結び付いたのではないだろうか。

②開花の不思議
サクラが開花するメカニズムは、学術的な解説は難しすぎるので、簡単に言えば「休眠状態」を何時のタイミングで解き放つのか…にある。花が散って葉桜状態の時期に太陽光をいっぱいに浴び、休眠に必要な要素「休眠物質」を蓄える。そして秋から厳しい冬の季節に徐々に蓄えが減少し、春の陽気が感じられると「休眠打破」作用が働き生成~開花へと進む。このメカニズム、以前テレビ番組でも実験されて、九州と青森のサクラを対比したが、何故か青森の開花が早い結果が示された。温暖な九州と比較して一定期間の「低温」が大きく作用している為だそうだ。長く厳しい寒さの中でじっと耐えて生活する東北人の気持ちに相通ずる部分が、サクラには有るのではないだろうか。

③サクラの名所
バラ科サクラ属のサクラは、ソメイヨシノ・ヤマザクラ・サトザクラ・ヒガンザクラ・シダレザクラ・キザクラ・カワズザクラ等、500種以上もあるらしいが、中でも最も親しまれ80パーセント近くを占めるのがソメイヨシノだ。1990年、当時の建設省・運輸省・環境庁等の後援を得て(財)日本さくらの会が創立25周年を記念して公表された「日本サクラ名所100選」の中で、東北地方の名所は
①青森県「弘前公園」「五所川原市・芦野池沼群県立自然公園藤枝ため池」
②岩手県「盛岡市・高松公園」「北上市立公園展勝地」
③宮城県「柴田町・船岡城址公園白石川堤」
④秋田県「秋田市・千秋公園」「横手市・真人公園」「仙北市・角館桧木内川堤」
⑤山形県「鶴岡公園「南陽市・烏帽子山公園」
⑥福島県「会津若松市・鶴ヶ城公園」「二本松市・霞ケ城公園」「三春町のシダレザクラ」
⑦新潟県「燕市・大河津分水」「五泉市・村松公園」「上越市・高田公園」
で、当誌の発刊時期に真っ盛りな所も有れば、既に見ごろを過ぎた所もあるのではないだろうか。


④お気に入り
さてお気に入りスポットは数多くあるが、筆者の住む秋田県以外でトップに挙げるとするならば、福島県会津若松市の鶴ヶ城のサクラだ。仕事やプライベートを含め、かれこれ数十回は通っている特別思い入れの深い場所でもある。歴史を訪ねながら、鶴ヶ城公園内を散策しサクラを愛でる楽しみは格別だ。戊辰の役で約1カ月の攻防に耐え、明治になって取り壊されたが、昭和40年に再建されその雄姿を今に伝える鶴ヶ城。淡いピンク色のサクラがマッチする期間は短いが、大勢の観光客の目を楽しませてくれる。昨年放映された大河ドラマ「八重の桜」の舞台ともなったので、特に観光客が急増していて、この影響から今年はさくら祭り本宮の神輿の練り歩きが取りやめとの事。東日本大震災で観光客が大幅に落ち込んだ時期もあったが、今回はテレビ効果が生んだうれしい悲鳴の対応となった。この後はソメイヨシノに代わって、より色鮮やかでテレビタイトルと重なる「八重桜」が公園内を彩る事だろう。
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