秋 田 奇 々 怪 会

心霊現象、死後の世界、臨死体験、輪廻転生、古代文明、オーパーツ、超常現象、UFO等不思議大好きの会です

逝きし世の面影で語られる旧き良き日本4

2018年03月12日 | 本・雑誌から
まだまだこの種の記述はあるのだがきりがないので、最後にリンダウが長崎近郊農村での体験だ。
「私はいつも農夫たちの素晴らしい歓迎を受けた事を決して忘れないであろう。
火(灯)を求めて農家の玄関先に立ち寄ると、ただちに男の子、女の子があわてて火鉢を持ってきてくれるのであった。私が家の中に入るやいなや、父親は私に座るようにすすめ、母親は丁寧に挨拶してお茶を出してくれる。・・・・・

もっとも大胆な者は私の服の生地を手でさわり、ちっちゃな女の子がたまたま私の髪にさわって、笑いながら恥ずかしそうに逃げ出してゆくこともあった。幾つかの金属製のボタンを与えると「大変ありがとう」と、皆揃って何度も繰り返して礼を言う。そして躓いて、可愛い頭を下げて優しく微笑むのであったが、社会の下の階層の中でそんな態度に出会って、全く驚いた次第だ。

私が遠ざかって行くと、道のはずれまで見送ってくれて、殆ど見えなくなっても「さよなら、またみょうにち」と私に叫んでいる、あの友情の籠もった声が聞こえるのであった」

最初にこの本の紹介をした時に、本書はその時に「日本にあった有機的な個性としての文明が滅んだ」と言っていると述べた。
それはこの著者が言っていることでなく、この当時の異邦人観察者が言っていたことである。
たびたび紹介したチェンバレンは1905年に書いた「日本事物誌」の序論で
「筆者は繰り返し言いたい。古い日本は死んで去ってしまった。そしてその代わりに若い日本の世の中になった」と書いている。
これは単に時代は移ったとか、日本は変わったとかの意味ではない。彼はひとつの文明が死んだと言っているのだ。

日本における近代登山の開拓者ウェストンは1925年発行の「知られざる日本を旅して」の中で
「明日の日本が、外面的な物質的進歩と革新の分野において、今日の日本よりはるかに富んだ、おそらくある点ではよりよい国になるのは確かなことだろう。しかし、昨日の日本がそうであったように。昔のように素朴で絵のように美しい国になることとは決してあるまい」と言っている。

日本に来てすぐに文明滅亡の予感を記した人たちもいる、有名なハリスは下田で「厳粛な反省ー変化の前兆ー疑いもなく新しい時代が始まる。あえて問う。日本の真の幸福となるだろうか」と日記に書いている。

このハリスの有能な通訳であったヒュースケンは1857年の日記で
「いまや私がいとしさを覚えはじめている国よ。この進歩はほんとうにお前のための文明なのか。この国の人々の質素な習俗とともに、その飾り気のなさを私は賛美する。
この国土の豊かさを見、いたるところに満ちている子どもたちの愉しい笑い声を聞き、そしてどこにも悲惨なものを見いだすことができなかった私は、
おお、神よ、この幸福な情景がいまや終わりを迎えようとしており、西洋の人々が彼らの重大な悪徳を持ち込もうとしているように思われてならない」とも書いている。

更にこの二年後にヒュースケンは「・・・・・日本はこれまで実に幸福に恵まれていたが、今後どれほど多くの災難に出遭うかと思えば、恐ろしさに耐えなかったゆえに、心も自然に暗くなった」とも書いている。

つまりヒュースケンは自分がこの国にもたらそうとしている文明が「日本古来のそれより一層高い」ものであることに確信をもってはいたが、しかしそれが日本に「果たして一層多くの幸福をもたらすかどうか」については、まったく自信をもてなかったのである。

1855年にプロシャ商船の人夫で下田にきたリュードルフなる人さえ
「日本人は歴史的第一歩を踏み出した。しかし、ちょうど、自分の家の礎石を一個抜き取ったと同じで、やがては全部の壁石が崩れ落ちることになるであろう。そして日本人はその残骸の下に埋没してしまうであろう」

異邦人たちが予感し、やがて目撃し証言することになった古き日本の死は、個々の制度や文物や景観の消滅にとどまらぬ、ひとつの全体的関連としての有機的生命。
すなわちひとつの個性をもった文明の滅亡であった。

国民の性格をどう見ていたのであろうか。
チェンバレンは「知的訓練を従順に受け入れる習性や、国家と君主に対する忠誠心や、付和雷同を常とする集団行動癖や、更には”外国を模範として真似するという国民性の根深い傾向”」を記している。

そしてこれらの特性は16世紀から17世紀にかけて日本を見聞したポルトガル人やスペイン人が、まったく同じようなことを言っているのを知れば、ひとつの国民的特性なるものがどんなに変わりにくく長い持続力をもつか、しばし呆然とすると筆者は述べている。
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