雑想

写真、カメラ、車、音楽、旅、ラーメンなど個人的な趣味のごった煮的な日記です。

湖畔の一夜、そのに

2007-08-17 00:30:38 | 雑想
その夜は予想通り満天の星空。くっきり見える天の川や、ときおり舞う流れ星にちょっと感動。この季節、昼間晴れた夜は放射冷却が起きやすくなる。キャンプに行く時には使用する腕時計、カシオプロトレックの気温計は、すでに10度を下回っている状況。結構寒い。

夜10時、シュラフと毛布にくるまり眠りにつくはずだった。


”パンッ、パンッ、パンッ・・・・”

先程と同じ所を同じ様な感じで誰かが再びテントを叩いた。「誰かのいたずらか?」一応テントから出て、結構明るい電池式ランタンであたりを照らす。

やっぱりだれもいない。既に時計は22時を回り、夕方には聞こえていた他のキャンパーの声すら聞こえない。外灯の灯りすら無い、ただ満天の星。星だけ見ればロマンティックであるが、さすがの僕も「これはおかしい」と思い始めた。

”パンッ、パンッ、パンッ・・・・”

眠りに着く寸前、これはもう意図的に睡眠を妨げると思える程不定期に、誰かが僕のテントを叩くのだ。どうせ外へ出てもだれもいない事は分かっている。カラスとかキツネとか、そういった動物がテントにいたずらする可能性だってある。ただ、足音も鳴き声も羽ばたきも、何も聞こえないのだ。

考えれば考える程理解出来ない出来事に多少パニックになる。電池式ランタンを付けっぱなしにし、ラジオから流れるNHKもつけっぱなし。テント内の気温も10度を下回っていきた。これは多分やってはいけない事だと思うけど、時折テント内でガスランタンに火を付け暖をとる。時計はすでに深夜2時を回っている。時間の流れが非常に遅く感じる。


”パンッ、パンッ、パンッ・・・”


相変わらずテントを叩かれる。変な話しだが、ここまで来ると慣れてくるのだ。テントの外から何者かがテントを叩いた後、テントの内側で僕が叩き返す、という余裕が出てきた。一種のコミュニケーション。テント越しのキャッチボール。

しかしながら外にいる何者かはこの行為にキレたのか、意外な行動に出た。


一瞬ではあるが、湖に向かってテントごと引っ張りやがったのだ。


足を入り口に向けて寝ていたので、まさに足下をすくわれた感じ。テントが一瞬湖側へ動いた。いくら1人用の小さいテントといえども、テントの両端を持って「えいやっ」で引っ張る事は、人間以外には不可能。しかもフライシートを被せてたので、普通ならテントの根元までは手すら入らないはずだ。


この瞬間、恐怖心に好奇心が勝ってしまった。


「誰ですかっ!」


もはや声にもならない叫び声を出してテントの入り口を開け外を見た。


・・・・まるで踊るように、ひらひらと。


目の前に広がる星明かりに照らされた湖の波打ち際に、白い影のような者が二つ、交差するように乱舞していた。まるで蝶が舞うような感じ。もはや恐怖というよりは神秘的ですらあった。


それが何であれ、おぼろげながらでも現物を見た事にほっとしていた。当然、心のどこかに恐怖心もあったが、気が付くと本能だろうか、常備していたT90にNFD80-200/4Lを付け、その謎の物体を見ようとしていた。T90の中にはポジフイルムが入ってる。たとえストロボを装着していても、この距離と明るさでは撮影は出来ない。が、少しでも拡大して肉眼で「あれ」が見えるはず。



でもファインダーを覗くと、その影は既に見えなくなっていた。


結局その夜は殆ど眠れなかった。ラジオは一晩鳴り続け、電池ランタンは夜が明けはじめる頃には光を失った。白々と明けてきた朝の空気はとてもきれいで、あんな夜があったにも関わらず、三脚と機材を持って湖畔に赴く。プロトレックの示す外気温は2度を表示した。どうやら今年一番の寒さらしい。








やがて昇ってきた朝日もとてもキレイで、まるで何事も無かったかのように僕とミニとテントを照らし、それを僕は写真におさめた。


canon T90 NFD20-35/3.5L NFD50/1.2L NFD80-200/4L FUJI RDP2

その後僕は知床や釧路を回り、無事札幌に着く事が出来た。



あれからもう大分経つけど、今でもあの日の事が忘れられません。一体あれは何だったんでしょうね? 結局は動物のいたずらだったのでしょうか。


調べてみたらこの湖を作る為に、様々な悲惨な歴史があったそうです。もしかしたらやっぱり・・・・。







コメント
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