興奮して中々、寝つけなかったが、いつの間にか寝落ちしていた。
旅が始まって最初の朝を迎えた。
ごそごそと私が起き出すが、既に姉は身支度を整えて彼らが呼びに来るのを待っていた。
海中トンネル内に朝日が飛び込んで来た。
ギラギラと散りばめられた宝石のように拡散して朝日は降り注いだ。
浅瀬に生息する魚たちが、その朝日を歓迎するかのように舞を披露している。
もう。これだけでテンションは上がった。
約束の午前7時、カルヴァドスさんたちが朝食の迎えに来た。
食堂車の座席は既に予約席とテーブルに置かれていた。
入り口で乗務員に名前を告げると「ニコリ」と笑顔を覗かせ、案内された。
予約席に腰を下ろすと案内した乗務員と入れ替わるようにウエイトレスがメニューを持って来た。
「お決まりになりましたら、お声をお掛け下さい。」と。直ぐに席から移動した。
私は読書をするようにメニューの端から端まで目を通した。
「……う~ん。悩む。」
「何れも此れも美味しそうなものばかりだ。」
「苦手な食べ物は有りますか?」と彼ではなくバラライカさんが云った。
私たちは比較的、食に関しては好き嫌いは無かった。
「いえ。特に苦手な食べ物は有りませんわ。」姉は即答した。
するとバラライカさんは目線をカルヴァドスさんへ送った。
カルヴァドスさんはそのまま、右手を軽く上げ、ウエイトレスを呼び、開いたメニューを指差し、4セット頼んだ。
「すみません。迷われていたようなので、此方で勝手に決めました。」
「いいえ。助かりました。」
カルヴァドスさんの行為に姉は気遣いの返事を返した。
数分後、オーダーした朝食が運ばれて来た。
プレートの右下にカリカリに焼いたベーコンを下敷きに半熟焼きの目玉焼き、右上には千切ったレタスとスライスされたトマトの半身、それと一口くらいにカットされたモッツャレラチーズ、左側には温かいアップルパイ。
それとは別に、バケットの中には軽くトーストされた厚さ3センチくらいに程よい大きさで斜(はす)にカットされたフランスパンが、行儀良く詰められていたものが置かれた。
淹れたてのブラックコーヒーがお洒落な器に注がれた。
レタスとスライストマトとモッツャレラチーズには、お好みでブラックペッパーとオリーブオイルを掛けて、スライストマトにモッツャレラチーズとレタスを挟んで食べると教わった。
ナイフとフォークで目玉焼きを食べたのもはじめてだった。
バケットのフランスパンは無くなれば、勝手にウエイトレスが運んでくる。
朝から肉料理を食べる事があるけど、それは夕食の残りだ。
フォークは使うがナイフなんて切り分けに使うくらいで、一人一人が使う事など、滅多に無い。
私には、お洒落過ぎる朝食だったけど、「おかわり自由なパン」は嬉しく思えた。
「おおお。」
「豪快な朝め……朝食ね。」
ちょっとはしゃぎ気味の私に姉は苦笑い。
殆ど会話は無く、と云うか魔霊体の話は気まずくなるから、ごく自然に無言だった。
あまり無言も不自然だから私的に水族館に居るみたいな感覚の話を振り撒いた。
軽い笑い声でテーブルは賑わった。
朝食を終えた私たちは、その足で展望車に誘われた。
◇◆◇◆◇◆
式神による説法攻めがはじまった。
魔霊体は一瞬、弱まるも耐えていた。
やはり、何かが違う。
通常の魔霊体なら、この攻めでほぼ浄化し、消滅するのだけど、霊体は無理矢理、体制を維持されているように感じられた。
「……式神の攻めに、これ程までに耐えれる魔霊体などあり得ない。」バーニャは呟くように云った。
式神に念を送るボルチャナ姉妹に精神的疲れが見えはじめていた。
バーニャが加勢に加わるが、苦しみながらも魔霊体はバーニャとの間合いを詰めて来る。
「……このままではボルチャナたちがもたない。」
「ボルチャナ、カウニャ、術を解くよ。」
「格闘でもう少しダメージを与える。」
ボルチャナ姉妹は術を解いた。
同時にバーニャの頭部を目掛けた回し蹴りが炸裂した。
連打で蹴りを喰らう魔霊体はヨロヨロと後退りしながら大地に仰向けに倒れた。
ここぞとばかりにバーニャは空中高くジャンプし、腹部に、そのまま全体重を乗せた蹴りを喰らわせた。
口から泡を吐き出す魔霊体。
ピクピクと痙攣がはじまった。
誰もがバーニャの勝利を確信したのだが・・・
「なっ!?何ッ!!」
バーニャの足を鷲掴みした魔霊体は苦痛に顔をしかめながら、そのままバーニャを引き倒した。
「伯母さま!!」
「動くな!!小娘ども!!」
引き倒したバーニャの両足を持ち、立ち上がる魔霊体は一気に限界までバーニャの足を開いた。
「ああああああああああーーーッ!!」
眉間にシワを寄せるバーニャ。
「動けばこのまま引き裂く。」
「大人しく寄生を観ていろ。」
バーニャは腹筋力で上半身を起き上がらせようと抵抗するも、更に両足を開かれ、起き上がらせる事が出来ず、痛みから身体を揺らしていた。
丸出しの下半身に魔霊体の長い舌が潤滑油を塗るように「ピチャッピチャッ」と嘗め回した。
苦痛と恥ずかしさからバーニャの顔が紅く染まった。
「ううう。」
「や、やめろ………。」
長く伸ばした舌は外括約筋をほぐすように嘗めまし、ほぐれ具合を見計らい内括約筋にねじり込むように挿入、再び丹念に嘗め回した。
「クククッ。」
「だいぶ緩んで来たな。そろそろ頃合いだな。」
「巫女とは云え、これだけ丹念に、ほぐされては心とは裏腹に受け入れ体制を整えるようだな。」
「アハハハハハッ!」
「よ~し。直腸までが緩んで来たな。」そう云うと魔霊体は舌を変形させた。
海洋生物である蛸の手足のような形状だ。
いわゆる触手である。
太さは先端で2センチくらいで5ミリくらいの吸盤のようなイボイボが付き、その区間の長さが10センチ程だ。
それを過ぎた辺りから3センチ台の瘤(こぶ)状で数珠繋ぎにしたような形状が更に10センチくらい続く。
徐々に太さは増してゆく感じて、最大で5センチくらいの太さが有り、再び細く成り、根元の辺りで、やや太く成っている。
「甘い鳴き声に変わって来たな。」
触手が直腸を押し広げながら上部直腸まで入り込んだ。
瘤状の部分が全て入った。
触手は何かを押し出すように膨らんだり縮んだりしながら動きはじめた。
【魔霊体寄生虫ナール蟲】イメージ
「気を失わぬようになよ。」
「次はお前ら姉妹だ。」
「順番を決めておけ。」
「クククッ。」と告げながら不適な笑みを浮かべた。
ナール蟲。
銀河系最外縁部偏狭の名も無き小さな自由軌道惑星に生息する体長3~5センチに成長する高等生命体(蟲)である。
寄生した生命体の細胞情報=DNAに自身のDNAを追加、書き換える事で、その生命体を支配する。
腸内に寄生、栄養素を吸収する。
寄生体をコントロールしやすくする為、「セロトニン」「オキシトシン」「ドーパミン」「アドレナリン」そして寄生体が雄なら「アノドロゲス」を雌なら「エストロゲン」をより多く直接、脳に放出する。
「………こんな事くらいで……気を失う程………柔じゃない……ッ!」
「ボルチャナ、カウニャ!式神を唱え私ごと葬れッ!!」
「!!ッ」
「伯母さま………。」
「……何を…何を躊躇っている?」
「私ごと葬らなければ、この街は救えない……ッ!」
「……私が寄生されれば………皆が……皆が寄生してしまう………。」
「ふん。させるかよ。」
「お前を興奮させ、直腸の動きを活発化させてやる。」
触手のイボイボの部分から唾液をチョロチョロと吐き出しはじめた。
吐き出された唾液に直腸を刺激する成分が含まれているようで、便意を催してしまう。
「……なっ、何をした……。」
「や、やめろ………やめてくれ………。」
「嫌だね。」
「そら、もっと催せ。」
「やめてくれ……これ以上されたら………。」
寄生虫ナールの動きが活発化した。
あと数センチで上部直腸へ寄生虫ナール蟲は達してしまう。
そうなればバーニャの腸から寄生虫ナール蟲は栄養素を吸収し、24時間で、あらゆる細胞のDNAを書き換え、例え腹を切り裂き寄生虫ナール蟲を取り出し殺しても書き換えられた細胞がバーニャを不死化し、一週間後には魔霊体化し、最後は脳をコントロールてしまうのだ。
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第四話へ
つづく。
この物語りはオリジナル作品です。
登場する人物、企業等は全て架空です。
実在する人物、企業等は関係ありません。
使用している挿し絵的画像はイメージです。