新人パイロットの鹿嶋は、無意識に無線を開いた。
「森中尉。この辺にガミラスは居ないんじゃないんですか?」
「艦船がわんさかと動ける宙域じゃないですよね!?」
「……。」
「鹿嶋少尉。誰が無線を開けと云った?」
「ガミラスの艦船が捉えられないからといって、偵察が潜んでいないとは限らないぞ。」
「これより先、私が……」
「……ん!?」
「鹿嶋少尉!2時方向に艦船らしき物体を捉えた!」
「確認を頼む!」
「中尉!此方でも確認!」
「鹿嶋少尉。これよりエンジンを停止、空間惰性飛行(くうかんだせいひこう)に切り替える。」
「私に続け。」
「ラジャー。」
これまでの推進力を利用して、ある程度は惰性による飛行が可能である。
推進エネルギーの消費を押さえる効果が有り、熱感知レーダーからも補足されにくく、無音で対象物体に近づく事が格段に上がる。
更にはtypeゼロにはステルス性を向上させる為、試作品ではあるが、先の火星沖海戦で入手したガミラス艦の破片から採取した"ミゴウェザーコーティング膜"を応用したコーティング膜を施している。
「……!?」
「物凄い数のワイヤーロケットを打ち込んでるぞ。」
「あの小惑星をどうするつもりなんだ?」
「鹿嶋少尉。録画、撮れるだけ撮って帰投する。」
「ラジャー。」
「ガミラス艦五隻、内、戦艦(デストロイヤー)クラス1、駆逐艦クラス4」
「……?」
「森中尉!デストロイヤークラスからファイター二機、発艦!」
「それとデストロイヤークラス1隻が回頭ッ!!」
「此方に気がついたようです!」
「コッチでも確認出来た!」
「戦闘を避けて帰投する!」
「あの流星群を味方に付ける!」
「鹿嶋少尉、私に食らい付け!」
「流星群をですか?」
「そうだ。お喋りしてると舌噛むよ。」
「ら、ラジャー!」
「鹿嶋少尉、時間合わせに入る!」
「アフターバーナー点火5秒前!」
「5.4.3.2.1アフターバーナー点火!!」
「グワッ!!」と身体がシートの奥に押し込まれる勢いのGが襲い掛かる。
アフターバーナー点火後、数秒で約上方5.000メートル先の流星群に到達、そのまま雪は食らい付いた鹿嶋機と重なるように機体を背面させた。
「鹿嶋少尉!私が見えるな!」
「私の動きに合わせて飛行しろ!」
「ラジャー」
流星と流星の隙間をフル加速しながら雪は、母艦である摩耶に無線を飛ばした。
「……此方、摩耶…………電波が悪すぎる!」
「……流星から出て話せ!」
「三木船務長。無線を艦長席に回せ。」
「儂が直接、話す。」
※三木は後に巡洋艦艦長に就任する。
「森中尉。艦長の土方だ。」
「一度、流星から離脱せよ。」
「無事に帰投出来るように今から艦砲射撃を開始する。」
「貴官らは誘導ビーコンに従え。」
「…ジャー……。」
「艦長!全艦隊に通達!」
「艦砲射撃準備!!」
「砲雷長!主砲=陽電子高圧砲初弾装填!」
「仰角最大で撃つ!」
「管制士!誘導ビーコン送射!」
「了解!!」
「主砲=陽電子高圧砲初弾装填完了!」
「仰角25度最大!」
「撃てぇ---ッ!!」
「……駄目です!デストロイヤークラス、陽電子高圧砲を弾いてます!!」
「以前にも増して、強度を上げたようです!!」
「艦尾に直撃弾!!」
「シアンガス発生ッ!!」
「かっ、艦が裂かれてゆくッ!!」
「艦橋に損壊!!被害は軽微!!」
「土方司令負傷ッ!!」
「艦橋防御シャッター降ろせ!!」
「艦尾第6~8ブロックの隔壁閉鎖!!」
「ダメージコントロール急げ!!」
「森、鹿嶋機を補足!!」
「着艦時を狙わせるなッ!!」
「ミサイルで弾幕を張れ!!」
「両機の収納を確認ッ!!」
「儂なら大事ない!」
「それより、船務長!全艦隊に回頭を!!」
「只今を持って、当該宙域より離脱せよ!!」
◆◆◆◆
幸い部隊は大破、轟沈した艦艇はなく済んだが、海戦は敗北という結果に成った・・・
後に、あのガミラスの行動の意味を知る事と成るとは、予想もしていなかった。
六年後・・・
私は死の惑星(ほし)と化した地球へ、救いの手を差し伸べた"イスカンダル"という別銀河148.000光年彼方、大マゼラン銀河に存在する惑星へ「コスモクリーナーD」という装置を受取に赴く為、「宇宙戦艦ヤマト」にレーダー士兼看護士として乗艦、機関の修理に立ち寄った木星で、あの時の小惑星を再び目撃した。
「ターゲットスコープ、オープン!」
「電影クロスゲージ、明度20!」
「波動砲、薬室内エネルギー充填120パーセント!」
「波動砲発射10秒前!」
「・・・3.2.1.発射---ッ!!」
これが、あの小惑星を目撃した最後と成った・・・
~THE.END~
この物語りは【宇宙戦艦ヤマト】のオリジナル二次創作です。
また、私的設定が混ざってます。
挿し絵的画像はイメージです。