宇宙戦艦ヤマト復活編外伝◇雪 生還編◇後編
最終話
ゴロゴロと崩れ落ちる煉瓦の壁。
土煙が舞い上がる中、宇宙戦艦ヤマトは、その姿を現した。
「さあ。お行きなさい。」
古代は軽く拳を握りった右腕を胸に当てると、コスモパルサーに飛び乗り、ヤマトを目指し飛び立った。
◆
古代たちの目には幾つもの輝かしい光が、縦横無尽に飛び回っているように見えた。
その間(かん)古代は、後ろ手に拘束された愛娘、美雪を助け、クリスタルカプセルを制御するシステム機を破壊、雪を助け出した。
やがて、幾つもの輝かしい光は一つだけと成った。
同時に雪と美雪を乗せ、古代のコスモパルサーはヤマトに帰投した。
勝負が着いたのだろう。
女神アーシャはヤマトの第一艦橋にホログラム映像が、浮かび上がるように姿を現した。
「もう、大丈夫です。悪魔王サターンとガブリエル、その下部(しもべ)らは、冥府に封印しました。」
「冥府の王ハーデースにお願いしてね。」
「甦ったサーベラーを差し出す事を条件にね。」
「でも、大丈夫よ。憑依された彼女は無事よ。」
「元の人間として、生きて行けるわ。」
「それと、未来を繋ぐ新たな生命(いのち)も。」
「…すべて古(いにしえ)の神話の人物かと思っていました。」
「ウフ。」アーシャは軽く微笑んだ。
「でも、テレサやアクエリアスの女神は信じたのでしょ!?」
「……それは…。」
「それで良いのよ。古代。」
そう言うと女神アーシャは語りはじめた。
「古代。神話に登場するガイアは地母神であり、大地の象徴と言われるのは、ご存知ですね。」
「太古の昔、神々が生まれる以前、宇宙には何もないカオス(混沌)が広がっていた。」
「そこにガイアが生まれ、ガイアは自らの力だけで天の神ウーラノス、海の神ポントス、暗黒の神エレボス、愛の神エロースを産み、母となった。
エロースの働きでウーラノスと親子婚し夫とした。
そして、ウーラノスは神々の王となったわ。」
「ウーラノスとの間に男女6柱ずつの子どもを産んだの。」
「ティーターン=タイタン(巨神)である。
またキュクロープス=サイクロロプス(一つ目の巨人)やヘカトンケイル(百本の手を持つ巨人)、ギガース(巨人、ギガンテスと呼ばれることが多い)、末っ子のクロノスを産んだ。
「だけど、異形の神々キュクロープスたちのあまりの醜さゆえに、ウーラノスは彼らを冥界タルタロスへ閉じ込めてしまった。
子どもたちの母であるガイアは悲しみ、ウーラノスへの報復を考え、子供たちに復讐を呼びかけた。
子供たちは当初、父を恐れ誰も名乗り出なかったが、末っ子のクロノスが自ら名乗りを上げ、ガイアの作った鉄の大鎌を受け取り、ウーラノスへ復讐することとなる。」
「その夜、クロノスがガイアに知らせられていた場所へ行くと、ウーラノスは妻ガイアにかぶさるようにして寝ていた。
クロノスは大鎌でウーラノスの男性器を切り落としたの。」
「これを受け、自らの行動を恥じたウーラノスはガイアのもとを去り、クロノスが神々の王となるが、この時クロノスはウーラノスに「やがてお前も自分の息子に王位を退けられることになるだろう。」と言われ、この言葉はクロノスの脳裏に焼きつくこととなったわ。」
「やがて妻レアーとの間にできた子供を飲み込んでしまったクロノスにゼウスが復讐を決意し、そしてティーターン一族とオリュンポス神の戦いが始まるの。」
「10年以上戦いが長引くと、クロノスの横暴さを見かねていたガイアはゼウスたちにタルタロスに閉じ込められたヘカトンケイルやキュクロプスたちのことを教え、彼らを救い出すことを勧めた。
ヘカトンケイルは百本の手で大岩を投げ、キュクロープスはゼウスに雷と稲妻を与えた。
こうしてゼウスらは新たな味方とともに戦いに臨み、ついにクロノスとの戦いに打ち勝ったわ。」
「天はゼウスが、海はポセイドーンが、冥界はハーデースが治めることとなり、大地は皆のものとなった。」
「そして、ガイアはカオスの地を耕し、種を撒き、やがて、それらは生命(いのち)を育む惑星と成り、宇宙の始まりと言える空間を形成して行った。」
「こうして"宇宙"を治める事と成ったガイアは、アクエリアスを産み、女神アクエリアスを名乗らせ、今の宇宙の始まりを与えた。」
「やがて始まりの宇宙は銀河へと成長し、姿を変えて行った。」
「広大に拡がる宇宙。
女神アクエリアスは、自分の代わりに広大な宇宙を管理する種族を造り、高度な文明を与えた。
その末裔の種族がイスカンダル人よ。」
◆
◆
「おかえり。雪。」
「おかえりなさい。お母さん。」
「ただいま。美雪。進(あなた)。」

◆
「新たな主導者の誕生。」
「新たな連星は惑星スターシャとでも名付けよう。」デスラーは生まれたばかりの連星を見上げながら粒やいた。
虚遇の次元が崩壊し、新たな連星が誕生した_。
~一年後~
【地球連邦メガロポリス郊外:英雄の丘】
「古代サン。お久しぶりデス。」
「コルンさん。元気そうで何よりだ。」
「以前、夕貴はワタシの娘と話しをしましたネ。」
「あの子は夕貴ハ、幼い頃に全身を70パーセント以上も火災による火傷を負い、当時、命を助けるには、臓器と皮膚の移植しか方法はなく、ワタシの臓器と皮膚を移植する事にしたのです。」
「…ワタシはワタシが存在する為に"すべてをメモリ"(記憶)を残す事にしたのです。」
「その結果が、この身体です。」
古代は真剣な眼差しを見せるだけで無言だった。
◆
「黙祷を捧げる。」
「黙……。」
古代の号令を描き消すかのように轟音を響かせ、テスト航海から帰艦したブールノア級二番艦ブール・ギャラクシー。
その轟音に参列した小林は、拳を高く突き上げ怒号を飛ばした。
「バッキャローーーッ!!」
呆気に取られる参列者たち。
その参列者を代表した訳ではないが、主宰した古代はこう告げた。
「すまんな。小林。」
「テスト航海の艦長は、雪なんだ。」
「帰ったら、キツく叱っておくよ。」と、軽く肩を叩いた。
「えっ!?あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!」それを聞いた小林は、あたふたするだけだった。
「アハハハハッ!」と、笑い声が英雄の丘に拡がっていた_。
「ねぇ。このあと赤道際の続きがやろうよ。」早々とバニーガールにコスプレした天城は、やる気満々で笑顔を覗かせていた_。
~fin~
【地球連邦防衛第一艦隊旗艦ブールノア級二番艦ブール・ギャラクシー】
※ブールノアのほぼ同型艦ブルーアースが存在するが此方は、改装されたブルーノア級の非武装艦であり、改・ブールノア級の位置付けの為、"ブール・ギャラクシーを二番艦とした。
【ブールアース】
旧地球防衛軍残存艦隊旗艦。
残存救助艦隊に所属し、残存人員の救助と政府中枢部の移動に用いられた。
初代艦長:上條 了
(テスト航海時艦長:古代 雪)
◆
【パスカル級二番艦オーディーン】
アマール防衛隊の旗艦で、パスカル将軍の座乗艦と同型の二番艦。
水上艦(あるいは帆船)に近い構成となっており、艦首部には巨大な艦首マスト(光子帆)が付いており、シールドを張れるのが最大の特徴。
このシールドは『オーディーン 光子帆船スターライト』をオマージュしたものである。
武装は3連装主砲を艦前部に4基、並列配置で装備。
舷側には、大航海時代にある海賊船の様に数多くの副砲が並んでいる。
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連星(英語: Binary star)とは2つの恒星が両者の重心の周りを軌道運動している天体である。
双子星(ふたごぼし)とも呼ばれる。
連星は、地球から遠距離にあると、一つの恒星と思われ、その後に連星である事が判明する場合もある。
この2世紀間の観測で、肉眼で見える恒星の半数以上が連星である可能性が示唆されている。
通常は明るい方の星を主星、暗い方を伴星と呼ぶ。
また、3つ以上の星が互いに重力的に束縛されて軌道運動している系もあり、そのような場合にはn連星またはn重連星などと呼ばれる。
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この物語りは、「宇宙戦艦ヤマト復活編」の続編として二次創作ではありますが、オリジナルの物語りです。
既存のメカ設定及びキャラクター設定は基本的に、そのまま引用しています。
使用している画像は一部を除き、宇宙戦艦ヤマトシリーズ本編等より、引用した画像でイメージです。
一部、私の設定及び解釈が混ざっています。