Siamo tutti un po' pazzi.

~我々は皆少しおかしい(イタリアの慣用句)~

普段色々考えていることの日記です。

フィギュアスケート日本人選手を語る6

2008年08月03日 | スポーツ
中野友加里

 さて、レジェロの音域より低い音域がリリコとなります。
 リリコは叙情的な歌い方と言いましたが、まぁ一番スタンダードな歌い方なので、その音域の中心的な声質と思って下さい。
 ただしスタンダードだからこそ難しいとも言われ、多くの歌手が挑戦する割には神と讃えられる歌手はほんの一握りです。
 ともかく王道の歌声なのでなんの迷いもなくすくすくと成長していかなくてはこの声は出せません。あ、迷いというのはいきなりコメディに走るとかアルトを歌い出すとかジャズにはまるとかそういう迷いですよ。なんかつまずいても自分が行く道こそ正しいとまっすぐに進んでいく強さが必要なのです。この声は。
 逆にドラマティコは難役が多いです。ワーグナーのヒロインのほとんどがドラマティコだったり、トゥーランドット姫がドラマティコの代表と聞くだけでこの声がかなり大変な役だということが分かると思います。
 ともかく声の幅がものすごく広い。そして常に力強く歌い続けないとダメなのです。ワーグナーの「ニーベルングの指輪」のブリュンヒルデなんてほとんど全幕出ずっぱりのくせに常に感情を高ぶらせた歌を歌い続けなくてはならないのです。「トリスタンとイゾルデ」のイゾルデもそうです。トゥーランドット姫も冷酷なお姫様として強い拒絶の姿勢を声に表して歌い続けなくてはいけません。
 常に劇的に、がドラマティコの特徴なのです。

 このリリコとドラマティコの合いの子のような声がリリコ・スピントです。リリコの叙情的な歌声にじゃっかんの力強さを付け加えた声です。
 代表的な役は「アイーダ」のアイーダ、「蝶々夫人」の蝶々夫人、「トスカ」のトスカです。
 どの女性もパッと見は正統派ヒロイン。か弱く、ただひたすらに男性を愛する乙女たちです。が、一皮むくとこの女性たち、愛する男性のために命を捨てることもいとわない強さを持っています。
 例えばアイーダ、生き埋めの刑に処せられた恋人の牢へ忍び入り、共に生き埋めの刑に処せられます。蝶々夫人は自分を裏切ったピンカートンへの見せしめに自害し、トスカは同じく自分を裏切ったスカルピアへの弾劾のために自殺します。どの女性も己が信じた愛に殉じていくのです。
 この強さはリリコでは出せません。が、かといってドラマティコだと初めから強すぎる。ということで、リリコ・スピントの出番ということです。
 この声に合うフィギュアスケーターって誰だろうとさんざん頭をひねって、もしかして中野友加里選手かなぁと思っています。
 ドラマティコと言っちゃうと彼女が持つ繊細さを無視しちゃうし、かと言ってリリコと言うとそこまで不安定な感じはしないので、やっぱりリリコ・スピントじゃないかと。
 まぁ、ただのイメージなんですが、蝶々夫人とかトスカって中野選手に似合わないかなぁと。蝶々夫人の《ある晴れた日に》とかトスカの《歌に生き、恋に生き》というのを一度踊ってくれないかな。かなりはまると思うのですが。

村主章枝

 まぁ、こんな感じでソプラノの説明は終わり。
 あとはメゾ・ソプラノとアルトの音域ですが、この二つはあまり主役にならないのでざっくりとした説明で。
 まずメゾ・ソプラノですが、この声は実は一番役に幅がある声です。ズボン役といういわゆる男装の麗人なんてやったりもするし、「チェネレントラ(シンデレラ)」のシンデレラ役のように正統派ヒロインをやったりもします。また「カルメン」のカルメンのように悪女役をやったりもします。
 この音域は一番芸達者な声なのではないでしょうか。もっともシンデレラはリリコだけどカルメンはドラマティコのように、この音域でもやはり声の質によって細かく分類されていますが。
 ただ、この音域がもっとも似合いそうなのが村主章枝選手かなと思います。
 妖精のような踊りから妖艶なボレロ、そして道化師役まで、ともかくポケットの多い芸達者な村主選手は声の質なんていう分類などなんのそので、あらゆる役をこなしそうです。
 彼女に踊ってもらいたい曲はそれこそ星の数ほどあるのですが、特に映画のサントラなんかは一番似合うかな。オペラだと序曲。その一曲で物語の色んな要素を凝縮したような曲だと、彼女の持ち前の演技力で様々な一面を見せてくれて、簡単に彼女の世界観に入り込めるのです。

鈴木明子

 さて、じゃあ、アルトはと言うと、実はこの声が主役になることは滅多にないです。どちらかというと脇役のことが多い。しかし、「フィガロの結婚」のマルチェリーナのように印象的な役が多いのもこの役。物語の要のことが多いです。大体は母親役が敵役ですけどね。
 なんかこういう役どころってついつい日本フィギュア界の要的選手を探したくなってしまうのですが、私は鈴木明子選手なんて推してしまいます。
 いや、彼女が要的な選手かどうか分かりませんが、全日本選手権5位の位置づけって彼女を越えないとトップ選手の仲間入りは出来ないし、彼女に抜かされるとトップ選手の位置にいることが出来ないという場所かなって。
 それに、彼女の踊りって妙に渋いのですよね。
 厳しい言い方するとトップ選手として世界で華々しく活躍するにはじゃっかん地味すぎる。だけど、国内選手として活躍するにはどこかひと味違い、簡単に二流選手の烙印を押せない。
 彼女の場合ブランクがあるので選手としての評価はこれからですが、こういう選手がいることが日本のフィギュア界を賑やかにしている要因かなとも思ってしまいます。
 そういう意味でも「要」の選手かな。

 あ、とりあえず、ジュニアは今のところパスで。
 あと、武田奈々選手は私の琴線にどうしても触れないのと、浅田舞選手は評価するほど演技を見ていないのとでこちらもパス。
 え~と、あと誰がいたかな。ともかくその他の有象無象も良く知らないのでパスさせて下さい。

 そんなわけで日本人選手+キム・ヨナを見てきましたが、私の大好きなグルジアのゲデヴァニシヴィリ選手とかスイスのサラ・マイヤー選手とかも本当はもっと語りたい。
 あと、ロシアの驚異の11歳選手とか。彼女の成長は大注目で見てますよ。ミーシンの秘蔵っ子らしいですが(ミーシン、「早めにシニアに出すのは選手の健康に影響がある」って分かっているならやめようよ)。
 けど、きりがないのでまた別の機会に。
 男子はね、私の目はチェコのトマシュ・ベルネルしか見てないので、なんも語れません。
 ただ、録画しているプルシェンコの演技を引っ張り出してくるたびに、このレベルに到達している男子ってまだ一人もいないなと思ってしまいます。
 なんか、下々の演技で一喜一憂している自分が恥ずかしいというか。この人いないと男子フィギュアはフィギュアじゃないというか。
 4回転のジュベールか、美しさのバトルかなんてアホな議論してすみませんと土下座して謝り倒したいというか。
 と言ってもあれからだいぶん男子フィギュアもレベルが上がったので、彼もそう簡単には金メダルを取れないとは思うのですが。とか言いながら笑って取って行ってしまうことを期待している自分がココにいるわけで。
 そういうのも含めて彼の競技復活が不安なような待ち遠しいような。
 (オリンピック2連覇して欲しい。マジで。彼にふさわしい称号はただの金メダルではなく前人未踏の2連覇だと思う)

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