風の色 2
「コウォーン」 「バシャン」
一発アクセルをあおって、多少荒めにドアを閉める 閉まりの悪いドアの音。
それもそのはずオレの車は、1975年モデルの TOYOTA CELICA LB2000GT
最近の車のそれの様にはいかない。
18RG DOHC ソレックスダブルキャブ 吸気音も存在感を感じさせるし、
今の車じゃあない昭和のいい時代の名車だ。
「荒い登場だな」
オレの背中越し大きな声で、少々にやけ気味に声を掛けてくる。
肩を少し越えた長さに若干、天パーの髪がトレードマーク、牧野だ。
学生のころのバンド仲間で、いい感じにしゃがれた声で、オレの透明感のある声と合わせると、いい感じにボーカルの幅ができる、いいデュオだった。
白のTシャツに、色の薄いブルーのデニム。いつものスタイル、学生時代から変わらない。
「どうもこうもあるかよ。」
CELICA LB2000GTの鍵を掛けながら目も向けず言った。
「マジな話かよ さっきの電話の件。」
「どうも本当らしい。」と牧野が髪をかき上げながら話す。
「まあ とにかく入れよ。」
ここはよく集まるベイサイドのカフェバー「Penny Lane」
サーマルが上がってきて店の中を南南西の潮風が吹きぬけていく。
牧野はすでにハイネケンを飲んでいた。
オレもいつもどおりジントニックをオーダー。
ギリで水平線に見える夕日がグラスをオレンジ色に色づける。
「行ってみるしかないよな。あの場所へ。」オレが切り出す。
「オレもそう思う。」
バンド時代の仲間で佐藤というソロでメジャーデビューした仲間がいた。解散後もヤツだけは社会に染まらず自我を押し通し掴んだ栄光だ。羨ましくもあったが、みんな喜んでた。
だが結局こいつが、日の目を見ることなく会社から契約解除になってしまい、何年も実家ににも帰らず音信不通になってるという。
親にとっては、いい歳ブッコいても子供は子供。行方不明の理由が理由だけに、何年も連絡一つないということになると、やはり当然親は心配してる。そうなると親の体調の方が心配にもなるよな。
その捜索願いの連絡を牧野が受け、オレに電話してきたという流れだ。
でも行き先はオレ等にはうすうす分ってる。あの頃よく話してた場所。十中八九間違いない。いつか成功したら最初に行こうと決めてた。
「考えることもないな、他の連中は?」
「自由に動けるヤツなんて他に居るかよ。」
まあそれもそうだ、みんな家庭があって会社の歯車になってしまってる。
会社には、代わりの歯車なんていくらでもあるが、自分という歯車は他に合う場所を探すにはかなり難しい時代だ。仕方ない。
「存在確認と現状報告だけでいいだろ?」ジントニックを飲みながらオレ。
「だよな、まあ気楽にスコッと行って、チョイと楽しもうや。」ハイライトに火を点けながら牧野は言った。
ZYPPOのオイルの匂いがサーマルに乗って広がる。
「Penny Lane」のBGMにハードロック。JOURNYEのレイズド・オン・レイディオが流れてる。
夕日は水平線に沈んで、昼と夜の間の色。
藍の空が広がってきた。
「コウォーン」 「バシャン」
一発アクセルをあおって、多少荒めにドアを閉める 閉まりの悪いドアの音。
それもそのはずオレの車は、1975年モデルの TOYOTA CELICA LB2000GT
最近の車のそれの様にはいかない。
18RG DOHC ソレックスダブルキャブ 吸気音も存在感を感じさせるし、
今の車じゃあない昭和のいい時代の名車だ。
「荒い登場だな」
オレの背中越し大きな声で、少々にやけ気味に声を掛けてくる。
肩を少し越えた長さに若干、天パーの髪がトレードマーク、牧野だ。
学生のころのバンド仲間で、いい感じにしゃがれた声で、オレの透明感のある声と合わせると、いい感じにボーカルの幅ができる、いいデュオだった。
白のTシャツに、色の薄いブルーのデニム。いつものスタイル、学生時代から変わらない。
「どうもこうもあるかよ。」
CELICA LB2000GTの鍵を掛けながら目も向けず言った。
「マジな話かよ さっきの電話の件。」
「どうも本当らしい。」と牧野が髪をかき上げながら話す。
「まあ とにかく入れよ。」
ここはよく集まるベイサイドのカフェバー「Penny Lane」
サーマルが上がってきて店の中を南南西の潮風が吹きぬけていく。
牧野はすでにハイネケンを飲んでいた。
オレもいつもどおりジントニックをオーダー。
ギリで水平線に見える夕日がグラスをオレンジ色に色づける。
「行ってみるしかないよな。あの場所へ。」オレが切り出す。
「オレもそう思う。」
バンド時代の仲間で佐藤というソロでメジャーデビューした仲間がいた。解散後もヤツだけは社会に染まらず自我を押し通し掴んだ栄光だ。羨ましくもあったが、みんな喜んでた。
だが結局こいつが、日の目を見ることなく会社から契約解除になってしまい、何年も実家ににも帰らず音信不通になってるという。
親にとっては、いい歳ブッコいても子供は子供。行方不明の理由が理由だけに、何年も連絡一つないということになると、やはり当然親は心配してる。そうなると親の体調の方が心配にもなるよな。
その捜索願いの連絡を牧野が受け、オレに電話してきたという流れだ。
でも行き先はオレ等にはうすうす分ってる。あの頃よく話してた場所。十中八九間違いない。いつか成功したら最初に行こうと決めてた。
「考えることもないな、他の連中は?」
「自由に動けるヤツなんて他に居るかよ。」
まあそれもそうだ、みんな家庭があって会社の歯車になってしまってる。
会社には、代わりの歯車なんていくらでもあるが、自分という歯車は他に合う場所を探すにはかなり難しい時代だ。仕方ない。
「存在確認と現状報告だけでいいだろ?」ジントニックを飲みながらオレ。
「だよな、まあ気楽にスコッと行って、チョイと楽しもうや。」ハイライトに火を点けながら牧野は言った。
ZYPPOのオイルの匂いがサーマルに乗って広がる。
「Penny Lane」のBGMにハードロック。JOURNYEのレイズド・オン・レイディオが流れてる。
夕日は水平線に沈んで、昼と夜の間の色。
藍の空が広がってきた。