blog版 カードのお告げ=阿部ヒロの『近未来案内所』=

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訪問者

2006-08-09 06:55:23 | 不思議体験旧版
私は大学生でした。
夏も真っ盛り、
テレビで高校野球の中継をしていたので、ちょうど今時分です。

実家の仏壇は家の中央、茶の間にありました。私はひとり、留守番をしていたのです。
家中の障子はあけはなたれていて、掃き出し窓には網戸がはいっていました。
よく晴れた気温の高い日でしたが、心地よい風が家の中を吹き抜けて行きます。

ふと、人が尋ねてきた気配に玄関を覗くと、いつ来たのか、玄関の引き戸の向こうに年配の男性が立っていました。
引き戸にも網戸が入っていましたが、内側からしか開けることができない仕組みです。
インターホンが鳴った覚えもなく、表のくぐりの鍵をかけ忘れたのだと思い、一瞬ぎょっとしました。

いぶかしげな私の様子に、その男性はこういいました。
『お宅のおじいさんに世話になった者です。
ご無沙汰していましたが、先日こちらに戻りましたら、亡くなられたと聞きました。
生前にご挨拶にうかがえず申し訳ありません。
失礼とは思いますが、お線香だけでもあげさせてもらえませんか?』
今思ってもアヤシイ話です。祖父が亡くなったのはこれより6年も前でしたから。
しかし、この時わたしは何の躊躇もせず、この訪問者を仏壇の前に招き入れたのでした。

この人は仏前でしばらく手を合わせていました。
私がお茶を出すタイミングを計りかねていると、くるりと向き直ってこういったのです。
『○○○をよろしく、お願いします。』
『??』
何のことかわからず、首を傾げる私にその人は深々と頭をさげました。
ふと見ると、甲子園中継をしていたはずのテレビは、
いつのまにか高校サッカーの試合に変わっています。

その瞬間、ゆらりと視界が暗転し、わたしは茶の間でぽっかり目を開けたのです。
単調な蝉の声と吹き抜ける風に、思わずうとうとしていたのでした。
当然、あの老人の姿はありませんでしたが、仏壇の扉は開いていて
テレビはつけっぱなしのまま甲子園の中継が続いていました。

その後、私が社会人になってしばらくして、
「どうしても会わせたい人がいるから来てほしい」と、知り合いに誘われました。
待ち合わせの場所にいくと、知り合いは見知らぬ人を連れています。
この人?と思っていると向こうも顔を上げました。
その瞬間、グワンと身体の中の何かが、別の次元に吹っ飛んだような感じを受け、
そして、突然思い出したのがあのときの夏の訪問客のことだったのです。
『こういう人を知りませんか?』と、
私がその話をはじめると、見知ぬ人は瞬きもせず聞き入っていました。

話が一通り終わるとこういったのです。
『(私がその訪問者を見た)その年、自分はおじいさんを亡くしている。訳あって、おじいさんに育てられ、とてもかわいがってもらった。学生時代を通じて(自分は)サッカーの選手だった。』
最後にこうしめくくりました。

『自分の名前は○○○です。』


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