今日の法制委員会は,民法改正のためあちこちで動員をかけた成果か,従来では考えられないほどの出席者が集まり,なかなかの盛況でした。
その様子については後日書きますが,今日の本題は,この本日(6月19日)付け読売新聞の記事に関するものです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080619-00000014-yom-soci
記事によると,長崎で実務修習中の司法修習生が,取り調べや刑務所の見学などの修習内容を自分のブログに掲載していることが分かり,守秘義務違反の疑いが持たれているそうです。
具体的には,その修習生は「司法修習生のなんとなく日記」と題するブログに,2月15日付で,検察の実務修習で80歳の女性を取り調べたとして「途中から説教しまくり。おばあちゃん泣きまくり」と記載。同29日付では,取り調べ中の容疑者について,刑務所の出所後5日目の犯行だったとし,「刑務所でしかうまく生きていけないんじゃないか」と書いていた,とのこと。
司法修習生には,弁護士や裁判官などと同様の守秘義務があり,職務上知り得た秘密を漏らしてはならないものとされています。一般に,「秘密」とは少数者にしか知られていない事実で,他人に知られることが本人の不利益になるものをいうとされていますが,単なる修習の一般的感想であればともかく,取り調べ中の被疑者の様子や被疑者の前科についてブログで言及するのは,守秘義務違反に該当する可能性が高いと言わざるを得ないでしょう。
特に,後者の出所5日目の犯行で「刑務所でしかうまく生きていけない」云々という記事については,守秘義務違反だけでなく名誉棄損罪,侮辱罪が成立する可能性もあると考えられます。
守秘義務というのは,頭で理解するのは簡単ですが実践するのは結構大変で,例えば修習生同士が裁判所の廊下やトイレなどで事件の話をするのも,誰かが聞いているかもしれないと注意されます。最近は修習生のみならず,弁護士など法曹関係者でブログをやる人も増えてきましたが,程度の差こそあれ,具体的な仕事の話を書いたりして守秘義務違反にならないようにするということは,誰しも気を遣っているはずです。
これに対し,この修習生は(書き込みの時期からすると新61期生のようですが),守秘義務に対する考え方があまりにも甘すぎると言わざるを得ません。感想の内容も,刑務所に入っている人がロボットみたいだったとか,法曹の卵としての自覚を疑わせるようなものが散見されるようですし,いろんな意味で法曹としての資質に欠けているような気がします。
この修習生の話はともかくとして,修習生としての自覚や心構えについて教え込む場は,以前であれば前期修習であり,従来の司法修習制度下であれば,前期修習中の司法修習生全員に対し,ブログなどで不適切な書き込みをしないよう注意するといった再発防止策が取れたでしょう。
しかし,現在の修習制度では前期修習がなく,いきなり実務修習から始まってしまうことから,修習生としての自覚を持たせる暇もありません。
守秘義務の話からは逸れますが,例えば黒猫の時代,実務修習に行く前には「特に最初の起案は気合いを入れて書け。最初の起案で指導担当に「この程度の実力か」と見切りをつけられたら,相手にしてもらえなくなるぞ」などと教わった記憶があります。
ところが,最近の司法修習生の中には,最初の起案で頑張るどころか,「わかりません」などと平気で書いてくる人が少なくないと聞きます。二回試験の不合格者数が増えたせいか,二回試験と関係のない修習は廃止してほしいなどという,とんでもない視野狭窄症の修習生もいるようですし,短すぎて前期修習もない新司法修習制度の下では,修習生の学力だけでなく,モラール(士気)の低下も目立ちます。
黒猫としては,このブログ事件も,そうした修習生全体のモラール低下が背景となって起きたような気がしてなりません(この修習生の書き込み自体にも,何となくやる気のなさが感じられます)。この修習生に対し,最高裁が罷免などの措置を取るのか,それとも厳重注意程度で終わらせるのかは分かりませんが,この事件は単なる一修習生の不祥事で片づけられるものではなく,法曹の質の問題,法曹養成制度全体のあり方の問題と合わせて論じられるべきではないでしょうか。
その様子については後日書きますが,今日の本題は,この本日(6月19日)付け読売新聞の記事に関するものです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080619-00000014-yom-soci
記事によると,長崎で実務修習中の司法修習生が,取り調べや刑務所の見学などの修習内容を自分のブログに掲載していることが分かり,守秘義務違反の疑いが持たれているそうです。
具体的には,その修習生は「司法修習生のなんとなく日記」と題するブログに,2月15日付で,検察の実務修習で80歳の女性を取り調べたとして「途中から説教しまくり。おばあちゃん泣きまくり」と記載。同29日付では,取り調べ中の容疑者について,刑務所の出所後5日目の犯行だったとし,「刑務所でしかうまく生きていけないんじゃないか」と書いていた,とのこと。
司法修習生には,弁護士や裁判官などと同様の守秘義務があり,職務上知り得た秘密を漏らしてはならないものとされています。一般に,「秘密」とは少数者にしか知られていない事実で,他人に知られることが本人の不利益になるものをいうとされていますが,単なる修習の一般的感想であればともかく,取り調べ中の被疑者の様子や被疑者の前科についてブログで言及するのは,守秘義務違反に該当する可能性が高いと言わざるを得ないでしょう。
特に,後者の出所5日目の犯行で「刑務所でしかうまく生きていけない」云々という記事については,守秘義務違反だけでなく名誉棄損罪,侮辱罪が成立する可能性もあると考えられます。
守秘義務というのは,頭で理解するのは簡単ですが実践するのは結構大変で,例えば修習生同士が裁判所の廊下やトイレなどで事件の話をするのも,誰かが聞いているかもしれないと注意されます。最近は修習生のみならず,弁護士など法曹関係者でブログをやる人も増えてきましたが,程度の差こそあれ,具体的な仕事の話を書いたりして守秘義務違反にならないようにするということは,誰しも気を遣っているはずです。
これに対し,この修習生は(書き込みの時期からすると新61期生のようですが),守秘義務に対する考え方があまりにも甘すぎると言わざるを得ません。感想の内容も,刑務所に入っている人がロボットみたいだったとか,法曹の卵としての自覚を疑わせるようなものが散見されるようですし,いろんな意味で法曹としての資質に欠けているような気がします。
この修習生の話はともかくとして,修習生としての自覚や心構えについて教え込む場は,以前であれば前期修習であり,従来の司法修習制度下であれば,前期修習中の司法修習生全員に対し,ブログなどで不適切な書き込みをしないよう注意するといった再発防止策が取れたでしょう。
しかし,現在の修習制度では前期修習がなく,いきなり実務修習から始まってしまうことから,修習生としての自覚を持たせる暇もありません。
守秘義務の話からは逸れますが,例えば黒猫の時代,実務修習に行く前には「特に最初の起案は気合いを入れて書け。最初の起案で指導担当に「この程度の実力か」と見切りをつけられたら,相手にしてもらえなくなるぞ」などと教わった記憶があります。
ところが,最近の司法修習生の中には,最初の起案で頑張るどころか,「わかりません」などと平気で書いてくる人が少なくないと聞きます。二回試験の不合格者数が増えたせいか,二回試験と関係のない修習は廃止してほしいなどという,とんでもない視野狭窄症の修習生もいるようですし,短すぎて前期修習もない新司法修習制度の下では,修習生の学力だけでなく,モラール(士気)の低下も目立ちます。
黒猫としては,このブログ事件も,そうした修習生全体のモラール低下が背景となって起きたような気がしてなりません(この修習生の書き込み自体にも,何となくやる気のなさが感じられます)。この修習生に対し,最高裁が罷免などの措置を取るのか,それとも厳重注意程度で終わらせるのかは分かりませんが,この事件は単なる一修習生の不祥事で片づけられるものではなく,法曹の質の問題,法曹養成制度全体のあり方の問題と合わせて論じられるべきではないでしょうか。
個人的には,マスコミの要約の仕方もあまりに恣意的ではなかったかと思います。
記事だけ読めば「思い上がった若造が老人をいたぶっている」とか「受刑者を馬鹿にしている」という感想をもたれる方が大半と思われますが,そうでないのは文面を読めばご理解いただけると思います。
守秘義務とは別の次元で読者の怒りを煽ろうとしているようにすら読めてしまうのは私の深読みでしょうか?
既にご存知でしたら申し訳ありません。
<ブログの記事>
① しらべ
今日,はじめて取調べやりました。
相手は80歳のばあちゃん。
最初はいろいろ話を聞いてたけど,
途中から説教しまくり。おばあちゃん泣きまくり。
おばあちゃん,涙は出てなかったけど。
けど,なんで20代の若造が80歳のばあちゃんを説教してるのか。
それに対してなんで80歳のばあちゃんが泣いて謝ってるのか。
なんとなく,権力というか,自分の力じゃない力を背後に感じた。
② 諫早プリズン
刑務所に行ってきました。
検察修習の一環で。
工場作業をしているところや,独房,雑居房,保護房などいろいろ見て回ったが,
ぼくらが工場に足を踏み入れたときの,受刑者たちの視線が痛かった。
自分たちの縄張りに土足で外の者が入るな。と。
ただ,工場で作業をしている受刑者たちは,なんだかロボットのようで,彼らの心が読めなかった。何を考え生きているんだろうか。
なんか,刑務所って,やたらめったら厳しくて,そりゃ,犯罪者たちの
刑罰として,彼らを立ち直らせるための場所だから,緩くてはダメなんだろうが,
なんか,世間と離れすぎていて,受刑者を刑務所社会の中でしか
生きていけない人間に育てているようにも感じる。
偶然にも,いま自分が取り調べ中の被疑者は,刑務所出所後5日目に,
また犯罪行為に出た人で,なんかその被疑者を見ていると,
この人は刑務所でしかうまく生きていけないんじゃないかと感じた。
ただ,そうは言っても,刑務所の中では,受刑者は塀の中にはいるが,
身柄の拘束はなく,それと比較すると,未決の取調べ中の被疑者が
腰縄に結ばれて,手錠をはめられて,調べ室に来たり,裁判所に来たりする姿を
見ると,その姿があまりにも人間扱いされていない感じがするので,
刑務所のほうがまだ人間扱いされているのかなぁなんて感じた。
悪いことをしたら,捕まる。
これは自然な発想かもしれないが,腰縄に手錠というのは,最近違和感を感じまくる。
人間に対する仕業か?と
内容を公開してしまったら守秘義務違反(?)の被害がさらに拡大する恐れがあることに気づきました。
しかも,記事の内容もご存知のようですね。
申し訳ありません。
遅い。
今の法曹は老いも若きも、オマエみたいなどうしようもない盆暗ばっかりだ。
たとえ虚けでも、司法修習生が最高裁判所・司法研修所の所轄で国家公務員として、厳しい守秘義務があることくらいは知っているだろうが。
程度の如何に関わらず、公務員がブログで仕事の内容を一般人同様の感覚で公開して良いと思っているのか、オマエは。
守秘義務違反(?)とクエスチョンマークを付けていることからして、オマエの頭は猿以下なんだよ。
法曹を志す前に、もっとまともな判断力を身につけろ。
紐解いてみればお分かりになるかと思います。お調べになれば変な人はいるものです。それでもなお、法曹養成制度の欠陥によるとするためにはロジックが必要ではないかと思ったまでです。
下手に叩くだけすると、ただ法曹養成の欠陥を強調したい「だけ」と映ってしまい、また変な捉え方をされかねないと危ぐしたまでです。
人それぞれの感覚があるから、何が正しいというものでもないでしょうけど。
こいつ実は結構伸びる可能性あると思う。処分としては,むちゃくちゃ厳しくやるにしても,首を切る(罷免)じゃなくて,腹切り(辞退)の扱いにして来年再チャレンジさせてやって欲しい。