黒猫のつぶやき

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景品表示法の「コンプガチャ」規制に関する意見書です。

2012-05-26 17:13:57 | 法律関係事件
 以前の記事でも触れた,オンラインゲーム上の「コンプガチャ」規制について,消費者庁による通達(景表法に関する運用基準)の改正案が公表され,パブリックコメントに付されていました(下記リンク参照)。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235070005&Mode=0

 改正案とその趣旨説明を読んだ結果,ほとんど中身のないザル規制だということが分かりましたので,先程,メールで意見書を消費者庁に送りつけてやりました。黒猫が書いた意見書の本文も以下で公表しますので,コンプガチャの法規制に関する議論の参考にして頂ければ幸いです。

<意見の趣旨>
1 標記の運用基準改正案は,社会的に有害なオンラインゲームの規制という観点に照らしほとんど実効性が期待できない上に,法解釈論としても疑義があるので,オンラインゲームの実態を踏まえた全面的な見直しが必要である。
2 オンラインゲームの規制について,景品表示法の枠組みで適切な規制を設けるのは困難であり,適切な法規制の在り方を早急に検討すべきである。
<意見の理由>
第1 運用基準改正案の実効性
 標記の運用基準改正案は,要するにオンラインゲームで提供される有料ガチャについて,その提供自体は景品表示法にいう景品類には該当しないことを前提としつつ,特定の数種類のアイテム等を全部揃えたプレイヤーに対し別のアイテム等を提供することは,告示第5項にいう「カード合わせ」の方法に該当するので,同項の規定によって全面的に禁止される旨を明らかにしようとするものである。
 しかし,オンラインゲームの実態に鑑み,上記のような規制は極めて容易に潜脱が可能であり,規制としてはほとんど意味がないと思われる。
 すなわち,いわゆるコンプガチャの目的として,ゲーム上極めて希少性の高いアイテム(以下「レアアイテム」という。)が存在するという場合であっても,上記改正案によって禁止の対象となるのは,例えばそのレアアイテムを入手するのにAからFまで6種類のアイテムが必要であって,かつ,ゲーム上でA~Fのアイテムを入手する手段がそのコンプガチャしか存在しない場合に限られるものと解される。
 然るに,実際のコンプガチャないしこれに類似した性質を有するシステムでは,例えば上記のうちAからEまではそのコンプガチャでしか入手できないが,Fについては他の手段(無料ガチャや通常のゲーム進行など)でも入手できるといった場合が多い。また,期間限定で行われるコンプガチャの実施当時は,そのコンプガチャでしか入手できなかったアイテムであっても,その後の仕様変更により別の手段でも入手できるようになるといった出来事は珍しくもない。
 仮に上記改正案が施行されたとしても,レアアイテムの入手要件として,コンプガチャのみで入手できるアイテム以外に,敢えて誰でも無料で入手できるようなアイテムを1~2個設定することで容易に脱法行為が可能になるのであれば,およそ規制としては意味をなさないであろう。
 また,オンラインゲームの中には,一日あたり一定回数までは無料でガチャを利用できるが,それを超える場合には課金されるなど,有料ガチャと無料ガチャの区別が判然としないものも多数あり(さらには,通常は有料のガチャであっても,特定のキャンペーン時には一定回数まで無料券が配布されるようなこともある),そのような場合にどこまでを「有料ガチャ」と認定するか,解釈指針を定める必要があろう。

第2 法解釈上の問題点
 標記の運用基準改正案について,平成24年5月18日付けで公表された「オンラインゲームの『コンプガチャ』と景品表示法の景品規制について」4(2)では,『「コンプガチャ」で提供されるアイテム等は、その獲得に相当の費用をかけるといった消費者の実態からみて、提供を受ける者の側から見て、金銭を支払ってでも手に入れるだけの意味があるものとなっていると認められるので、「通常、経済的対価を支払って取得すると認められるもの」として、「経済上の利益」(前記4(1)ア参照)に当たります』との説明がなされている。
 しかし,問題となるレアアイテムが「金銭を支払ってでも手に入れるだけの意味があるものとなっている」ものか否かは,個別のオンラインゲームによって大きく事情が異なるものであって,実際には形式上コンプガチャの景品として提供されるアイテムであっても,そのアイテムを入手することによってゲームの進行がそれほど有利になるわけではない場合や,コンプガチャ以外の手段(無料の手段を含む。)でも入手できる場合があり,必ずしも希少性が認められるわけではない(そもそも,オンラインゲームの枠組みにおいて,ユーザーに対し高度の希少性を認識させるアイテム等を創出することは必ずしも容易ではなく,コンプガチャによって消費者に多額の金額を支払わせ莫大な収益を挙げているオンラインゲームは,全体の中ではごく一部に過ぎない)。
 然るに,改正案では「コンプガチャ」の景品として提供されるアイテム等について,その実質的な希少性の如何を問題にすることなく一律に「カード合わせ」の方法にあたると説明されており,この点において改正案は景表法の解釈適用を誤っているものと解せざるを得ず,景表法の運用基準に関する通達としては不適切である。少なくとも,提供されるアイテム等に「経済上の利益」と認めるに足りる程度の希少性ないしゲーム進行上の特別な有益性が必要である旨は明記すべきである。

第3 景品表示法による規制の限界
 上記改正案では,有料のガチャ自体はそれによって一般消費者が得ている経済上の利益は,一般消費者と事業者間の取引の対象そのものであり付随的なもの(景品類)ではないから,景品表示法によって規制されないとの見解を前提としているが,実際にオンラインゲームで提供されている有料のガチャの多くは,提供されるアイテム等の経済的価値に著しい差があり,購入の際には相手方がその内容や経済的価値等を判別できないようにして行われるのが一般的である(有料ガチャを利用しても,それによって通常入手できるアイテム等の多くは,無料ガチャや通常のゲームプレイでも入手できるのが一般的であり,消費者の多くは,その有料ガチャによって通常提供されるアイテム等が欲しいのではなく,何百回,あるいは何千回に一回程度の確率でしか入手できないアイテム等を求めて,その有料ガチャに常識ではあり得ないような金額をつぎ込む仕組みになっているのである。そのような有料ガチャでなければ,消費者が極端なまでの金額をこれに費やすことは通常あり得ない)。
 上記のような有料ガチャの実態に鑑み,有料のガチャによって一般消費者が得ている経済上の利益が景品類に該当しないという御庁の見解はオンラインゲームの実態を無視したものであり,それ自体にかなり再考の余地があると思われるほか,有料ガチャによって購入されるアイテム類が「付随的なもの」かどうかという問題を除けば,有料ガチャはそれ自体景品表示法によって規制される景品類と同等以上の射幸性及び社会的有害性を有するものであることは明らかである。
 仮に,上記のような有料ガチャそのものについて,景品表示法による規制が不可能ないし著しく困難であるというのであれば,有料ガチャを含むオンラインゲームの課金システムについて実態の調査を行った上で,これに対する法規制の在り方を早急に検討し実行に移すべきであることは,オンラインゲームに関する消費者被害の実態及び御庁に期待される社会的責務に照らし明らかであろう。
以  上


2 コメント

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Unknown (ペールメール)
2012-05-27 23:53:13
明確に規制する方法がないから、そこだけ規制したんでしょう。全部規制する方法はないと思うんだな。
Unknown (ペールメール)
2012-05-27 23:57:38
コンピュータゲーム禁止法っていうの作ればそれはできるんだが。コンピュータゲームは時間とお金の無駄だから、コンピュータゲームを有料で提供することには罰則を設ける、とかやれば、良いんだが、それやると、また、なぁ。