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黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

最一判平成17年12月08日

2005-12-09 16:28:08 | 司法(平成17年)
 http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/dc6df38c7aabdcb149256a6a00167303/af4dd8b0b5afb096492570d1002b5b55?OpenDocument

 この最高裁判決,結論としては国の賠償責任を否定しましたが,5人中反対意見が2人と,かなり微妙な事案だったようです。
 賠償責任を否定した多数意見は,医師の治療行為について不適切・不十分な点があった場合でも,それが著しい場合には(具体的な損害発生が無くても)慰謝料請求を認めるが,著しいとまでいえない場合には,患者の死・重大な後遺症などの結果を回避できた「相当程度の可能性」があった場合に限り損害賠償責任を認めるという考え方を前提とし,本件では少なくとも医師に「著しく不適切・不十分」な点はなかったと判断したもののようです。
 これに対し反対意見は,「患者が適時に適切な医療機関に転送され,同医療機関において適切な診査,治療等の医療行為を受ける権利」を独自の保護法益と解し,これが侵害された場合には,これを受けられていれば重大な結果が生じなかった「相当程度の可能性」が存在しなくても損害賠償責任を認めるという考え方に基づいているようです(事実認定にも多数意見とはかなり温度差があるようですが)。
 この問題は,医師に限らず弁護士など他の専門家責任にも通じるものであり,今後議論が深まることが期待されます。
 ただ,反対意見の考え方を敷衍すると,もし黒猫があまり経験のない先物取引の事件を受任して敗訴した場合,その訴訟追行のやり方について特段不適切な点が見当たらない場合でも,黒猫が他の弁護士を紹介せず自分で事件を処理したことによって,先物取引事件の専門家である弁護士による適切な弁護を受ける権利を侵害されたから慰謝料の支払義務を負うなどという結論になりかねず,黒猫としては,反対意見はいささか無理があるように思われます。