黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

司法修習の貸与制をめぐる最近の議論は・・・?

2013-02-04 16:25:51 | 司法修習関係
 表題の件について話し合われた第8回法曹養成制度検討会議について,正式な議事録はまだ公開されていませんが,ビギナーズ・ネットの種田和敏弁護士経由で,比較的詳しい報告が以下のブログにアップされているようです。
http://kyuhi-sosyou.com/blog/?p=90

 報告の詳細についてはリンク先を参照して頂くとして,検討会議内部の大まかな勢力図は以下のようになっているようですね。

・給費派:和田委員、丸島委員、田島委員、国分委員 …4人

・貸与派:鎌田委員、田中委員、伊藤委員 …3人

・修正貸与派:南雲委員、清原委員、萩原委員、宮脇委員、岡田委員、久保委員、井上委員 …7人

 もちろん,委員ごとに意見の趣旨は微妙に異なりますので,上記のように単純な分け方をするのは異論が出てくるかも知れませんが,それでも誤解を恐れずに単純化して,この3派がどのような主張をしているかを黒猫なりにまとめてみると,以下のような整理ができるかと思います。

(1)給費派
(意見の趣旨)
 司法修習生に対する貸与制を廃止し,給費制を復活すべきである。
(意見の理由)
① 貸与制への移行により,法曹を目指す者の金銭的負担がますます重くなり,急激な法曹志望者の減少に拍車をかけていることは明らかである。
② 司法試験に苦労して合格した人が安心して研修を受けられるようにするには,研修医と同様に相応の身分保障が必要である。
③ ドイツの司法修習制度など,諸外国でも弁護士の実務トレーニングを有給で行っている例がみられる。

(2)貸与派
(意見の趣旨)
 司法修習生に対する貸与制は,現行のまま維持すべきである。
(意見の理由)
① 給費制復活は国民の理解を得られない。
② 現行貸与制の中身は,民間会社と比較すれば十分に有利な措置である。
③ 司法修習生への財政支援のために,法科大学院への財政援助を削減すべきではない。
④ 数万円程度の給費を与えたとしても,ほとんど効果は無い。

(3)修正貸与派
(意見の趣旨)
 司法修習生に対する貸与制そのものは維持すべきであるが,例えば自宅から修習先に通える人と,希望地が通らず遠方での修習を余儀なくされている人との間では費用負担の差が大きく不公平感が生じているので,後者に属する修習生に旅費や住居手当などを支給することは検討してもよい。
(意見の理由)
① 貸与制維持を決めたフォーラムからわずか1年で給費制に戻すのは現実的でないし,国民の理解も得られないが,修習生間の不公平は是正する必要がある。
② 修習生の間にも経済的格差があることを考慮すると,一律に資金を支給するのは不公平である。


 黒猫が上記3派のうちいずれを支持するかと聞かれれば,もちろん(1)を選びますが,貸与派にせよ修正貸与派にせよ,貸与制維持論者の念頭にあるのは「給費制が復活すると,その分法科大学院の予算が削られてしまうのではないか」「給費制が復活すると,司法試験の合格者数を増やすことが難しくなるのではないか」ということであり,貸与派に属する鎌田委員の意見はそのような思惑を最も端的に表現しているといえます。
 司法修習生に対しては,戦後から一定額の給与を支給するという制度で50年以上続いてきたという歴史があるわけですが,司法改革にあたり「お金ばかりかかって何の役にも立たない」法科大学院を法曹養成の中核的機関として創設し,司法修習も従来の給費制維持では司法試験合格者数激増の妨げとなることから,国民の理解が得られないという理屈を持ち出して貸与制への移行が行われたわけです。
 貸与制論者は,制度導入時も今も「給費制は国民の理解を得られない」という理屈を盛んに持ち出す傾向にありますが,一般国民の間では(司法修習制度自体は知っていても)給費制,貸与制といった問題はそもそも知らないという人が圧倒的であり,制度そのものを知らない人の意見を,はじめから貸与制支持であると決めつけるような議論の仕方には問題があるでしょう。
 また,法科大学院制度は法曹志望者の激減を招く効果しかもたらしておらず,司法試験合格者の激増も弁護士そのものを「信頼できない食い詰め者」にする効果しかもたらしておらず,これらの政策を維持するために司法修習の貸与制を維持するという議論が一般国民の支持を得られる可能性は,かなり低いのではないかと思います。

 もっとも,黒猫が給費制復活運動にあまり重点を置いていないのは,今の法曹志望者たちを苦しめているのは主に法科大学院制度であり,例えば法科大学院を修了してストレートで司法試験に合格しても,修習が始まる頃から奨学金や教育ローンの返済が始まってしまうので,修習生の中には貸与された資金を返済に充てるという一種の自転車操業を強いられている人が少なからずいます。
 法科大学院時代の借金は,奨学金を借りている人の平均でも約350万円,多い人は700万円以上借りている例もあるようですが,仮に法科大学院時代700万円借りていた人の例で考えた場合,貸与制維持の場合は司法修習を終えた時点で借金が約1000万円になるが,給費制に戻ると700万円のままで済むということになります。
 たしかに給費制の方が気分的には安心できるでしょうが,どちらにせよ今時の弁護士が通常返済できる金額ではなく,給費制に戻したからといって問題の本質が改善されるわけではないように思われます。また,弁護士が700万円の借金を返済するくらいそれほどの難事でもないと思われていた時代(少なくとも10年くらい前まではそう思われていました)には,現役法曹の中にも貸与制でいいんじゃないかという論者がいたことも事実であり,貸与制は絶対悪というよりも,現在の社会的実情に即していないという面が強いのではないかという気がします。
 そのため,黒猫個人は給費制復活論者ではありますが,司法修習関連の記事を書くときには,一連の歪んだ司法改革を批判する中であまり本質的ではない問題に多くの紙幅を割くべきかどうか,毎回悩みます。

 ただ,3月には法曹養成制度検討会議がパブリックコメントを実施することを予定しており,その中で司法修習制度のあり方に関する素案も公表されることから,これに対する意見募集の結果である程度の「世論」が示されることになります。崩れつつある司法基盤の再生にどれほどの国民が関心を示してくれるのか,引き続き注目していきたいところです。

5 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-02-04 20:29:32
貸与派や修正貸与派の人ってヴァカなのでしょうか?(^_^;)?
黒猫さんナイス!!
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Unknown (Unknown)
2013-02-04 20:45:31
>(2)貸与派
> ③ 司法修習生への財政支援のために,法科大学院への財政援助を削減すべきではない。

何じゃこりゃ・・・

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Unknown (Unknown)
2013-02-06 01:16:30
> ③ 司法修習生への財政支援のために,法科大学院への財政援助を削減すべきではない。

おそらく、大学への予算が減らされている中で、大学側から金とって来いと言われているのでしょう。
貸与派、修正貸与派を擁護する気はさらさらありませんが、彼らの言い分(前記派閥は主に、大学関係者ですよね?)
も理解できる気がします。
ただもう少し広い視野で、給費復活→法科大学院出願者増の可能性→大学への資金流入
という可能性も考えてはいいのではと思いますけ。
たとえ増える数がわずかであっても、今の状況では法科大学院も凋落しますから、破滅に向かってまっしぐらな状況ですからね。
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仰るとおり (小林)
2013-02-06 23:45:34
本丸のロー廃止も言わずに給費だけしのごの言っても説得力0です。ローをなくすしかない。
ローの適正配置なんて未だに言ってる連中が信じ難い。太平洋戦争をズルズル続けた昔の指導層と同じ。
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Unknown (Unknown)
2013-04-13 00:09:18
残念、ヴァカは種田でした。
反日市民団体ばっかりに寄生してる人間は弁護士やめてまえ。
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