黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

法曹を目指す人たちの悲痛な声

2013-01-31 19:06:12 | 法曹養成制度と経済負担
 1月30日付け法曹養成制度検討会議第8回会議において,和田委員提出資料として『ビギナーズ☆パブコメ』の集計結果が公表されています。
http://www.moj.go.jp/content/000106656.pdf

 このアンケートは,大学の法学部生や法科大学院生・法科大学院修了生などを対象に実施されたもので,昨年12月9日現在で1358通の回答が寄せられたということです。回答者の内訳は半数あまりが大学の法学部生,約4割が法科大学院生及び同修了生ということです。
 アンケート集計結果のうち,まず注目すべきはQ3-1でしょう。法曹になりたいと思っている回答者に対し,法曹になるまでの間,生活費はどのように賄うかという質問に対し,「親の援助」と答えた人が73%,「預金の取り崩し」と答えた人が28%に達しており,奨学金や貸与金の借入れ(60%)やその他(5%,実際にはアルバイト等)を大きく突き放しています(アンケートは複数回答が可能であるため,回答者の合計は100%を超えます)。
 別の資料で,第66期司法修習生(昨年修習を始めた人)のうち,修習資金の貸与を申請した人の数が全体の約80.8%にとどまったというものもありますが,これらの数字は,法曹志望者の間では親から多額の資金援助を受けられるか,多額の自己資金を有している経済的余裕のある人の割合が着実に増加していること,言い換えれば経済的余裕のある人でなければ法曹になれないという事態が着実に現実のものとなりつつあることを示しています。
 次に,Q3-2。これは法曹を目指したいと思ったことがある(現在は目指していない)という回答者に対し,法曹を目指すことをやめた理由について質問したところ,約53%が「経済的負担」を挙げ,司法試験が難しい(22%)など他の理由を大きく突き放しています。
 また,Q5の「法科大学院入学から司法修習終了までの期間で約600万円の借金を背負うことになるとしたら、法曹を目指そうと考えますか?」という問いに対し,学部生のうち「目指す」と回答した人は約10%に過ぎませんでした。Q6の「身近に経済的理由で法曹の道を諦めた方はいますか?」との問いに対しては,学部生でも25%が「いる」と回答し,法科大学院生及び同修了生に至っては70%が「いる」と回答しています。
 これらの回答結果からも,法曹志望者が激減している最大の理由は,法科大学院関係者などが主張している司法試験の難しさではなく,法科大学院制度や司法修習の貸与制による経済的負担の重さであることがよく分かります。
 そして,数字以上に悲痛さを感じるのは,自由記載欄に書かれた当事者たちの生の声です。今回は,特に深刻と思われる一部の意見を抜粋するにとどめ,それぞれの意見に対し余計なコメントは付けませんが,不合理な現行制度によっていかに多くの法曹志望者たちが経済的苦悩を強いられているか,現行の法科大学院制度を支持する人たちにはよく考えてほしいと思います。


経済的理由で法曹を目指すのをやめました。大学に入るのにも奨学金を借りている方は貸与制になったことで法曹を目指しにくくなったのではないかと思います。法曹を育成するためにも、貸与制ではなく給付制に戻したほうがいいと私は思います。(大学4年生・法学部)
実際に法曹の道を諦めた友達をみて、経済的にも時間的にも負担が大きい今の制度では、多様な人材どころか、優秀な人材すらとうてい集まらないと強く感じた。もし弁護士になったとしても、借金を抱え、自らの生活すらままならない者が、社会的正義の実現なんかできるのか疑問。(大学3年生・法学部)
法曹を目指すための金銭的負担が他の進路に比べて重すぎる。法科大学院修了が法曹となるための前提となっているのに、司法修習中の生活費まで借金をすることになると、法曹としてのスタートが金銭的に大きくマイナスの状態からになってしまう。なおかつ弁護士の就職難や、収入減の現状を鑑みれば、法曹を目指すということがあまりにリスキーな選択肢になってしまっている。(大学3年生・法学部)
経済的にだいぶ不安があるので、小さい頃からの夢とはいえ、この話を聞くと少し迷ってしまう部分があります。でも僕は弁護士への道を諦めたくはないので、給与制にしてほしいなと思います。(大学3年生・法学部)

経済的な事情から、すでに大学からロースクールにかけて、相当の奨学金貸与を受けており、最終的には600万を超える返済が必要です。それでも夢を諦めたくないため勉強を続けていますが、正直経済的不安は考えるのが嫌になるほど感じています。(法科大学院在学生)
私は、とある政令指定都市の市役所に本年度合格しました。司法制度が給費制廃止も含めて崩壊している現状において、もはや司法試験に合格したとしても、法曹になろうとは現時点で思いません。(法科大学院在学生)
すごく優秀で志もあり、人間性も優れている同級生が、法科大学院の学費・生活費・給費制終了のために、法曹への道を断念する姿を、何度も目にしてきました。私自身も、親の援助があるから何とかやっていけているだけで、もしも親が貧しければ、あきらめていたと思います。財政的に恵まれている人物だけが法曹になるという事態が生じるのではないでしょうか 。(法科大学院在学生)
・私は、非法学部で純粋未修で法曹を目指しました。ロースクール進学を親に相談したとき、経済的事情から、とても強く反対されました。ロースクールは、国立でも通常の大学院の倍学費がかかります。更に合格しても、まるまる1年修習が義務づけられるのにもかかわらず、そこでの収入が全くないとなると非常に苦しい状況です。忙しいロースクール時代にもずっとアルバイトをして、奨学金で生活費をまかなっていました。修習の貸与と合わせると、社会人になる時点で借金は1000万円を超えます。結婚や出産もしたいと思っていますが、それよりもまずは自分の借金をかえしていかなければと考え、特に出産のタイミングを悩ましく思っています。(法科大学院修了生)

・今年の司法試験に受かり、66期修習予定者です。家庭に余裕がないため、貸与申請を行ないます。今、一番の心配は、司法修習で地方に行くことにならないか、です。実家から通えるならまだしも、地方修習になると金銭的負担が多くなり、たとえ弁護士になっても、借金返済のため儲かる仕事を優先せざるを得なくなりそうでとても心配しています。そもそも、私は弱者の立場に立って人権活動をしたいがために弁護士を目指しました。しかし、今の制度ではそれが叶わないのではないかと、思っています。そうすると、なんのために弁護士になったのか、全く無意味に思えて仕方ありません。
・私は、今年合格しました第66期司法修習予定の者です。法曹になることをずっと応援してくれていた両親も、貸与制になったことや就職難等の理由により最近は公務員になることを強く勧めてくるようになりました。今年合格したにもかかわらずです! そのような両親の意向も無視できず、また自分としても法科大学院での奨学金に加え、貸与制で更に300万円程度借金を背負うことに不安があるので、現在は司法試験合格者対象の国家総合職試験法務区分を受験しています。もしこちらに合格した場合には、公務員になることも選択肢に入れています。修習生の経済的な負担は本当に大きなものです。一日でも早く給付制に戻ることを切に期待しています!

・新第65期修習生としてある地方へ配属されました。実家から通える修習地を希望しましたが認めてはもらえず、この配属先で単身で暮らすことになりました。実家に帰ろうとすれば、鉄道を使って半日はかかるところです。そうして始まった修習でしたが、その期間中に親が亡くなりました。当然ながら実家に帰る必要があるものの、その交通費は借金で工面することになりました。修習生には給与は払われていないので、貸与資金から支出するしかないのです。辞令で実家から離れたところでの修習になったというのに、亡くなった親のところへ戻る交通費は借金で払うのが今の仕組みです。生前に交流のあった方々が故人を悼むのも自然な感情で、不相応なお金はかけられないにしてもお葬式をあげました。その費用も分担しましたが、給与をもらってないのですから貸与資金から出すしかありません。司法制度を運営する国の責任として法曹養成の過程にあるのに、身内の葬儀にかかる費用は借金をしてまかなうのです。
・私は、学部及び法科大学院に奨学金によって進学しました。さらに、貸与制によって借金は総額約1000万円に上ります。私は、ただ弱者の力になりたいという一心で努力してきました。にもかかわらず、国の身勝手な政策によってこれだけの経済的負担を負うことには納得がいきません。現在も、アルバイトをしながら生活費を賄っています。親は自己の借金も抱えているため、頼ることはできません。貸与制は、貧乏人は法曹になるなという理不尽な制度としか思えません。それでも私は法曹になる夢を諦めたくはない。(新65期司法修習生)

33 コメント

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Unknown (甲南ロー出身の弁護士)
2013-01-31 19:43:26
私の友人も、純粋未修でローに進学して奨学金一千万借りさされ、三振しました。

今友人は、その借金を返すため、仕事2つ掛け持ちしながら必死で返済しています。

友人は、「ロースクール受験資格要件強制の下、仕事を辞めて借金だけのこるような制度では、誰も目指さない。ロースクールと3振制を速やかに廃止して欲しい。ロースクール推進派に一番言いたいのは、私の事例のように、三振者や経済的事情で退学した人達の声を無視して、ロースクールを推進してこれ以上被害者を出すのは本当に辞めて欲しい。あれだけ借金させて貸与制も酷い。
今の制度に本当に腹が立ちます」
と私に話しました。
これ以上にないほどの当事者の言葉です。

私は貸与制で育った世代として、後輩達のために、政治闘争のみならず法廷闘争も含めて頑張って いきます。
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Unknown (Unknown)
2013-01-31 20:04:39
全体的に非常に共感するんだけども、最後から2番目に引用されてる訴えはかなり違和感を感じるなあ。

交通費はまだしも葬儀費用については、仮に給費制であっても親族から借りるなり何なりして、働いてから返すのが自然なんじゃないかな。自分は試験に受かっただけの半人前の存在なのだからね。
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Unknown (a)
2013-01-31 21:40:06
葬儀に行くための交通費を借金でまかなわざるをえなかったという表現だと、新たに消費者金融等で借金をして捻出したかのような表現に見えてしまい、ミスリードになると思います。よく読めば、もともとの借金(貸与制)から捻出したということがわかりますが、誤解を招く表現はやめたほうがいいでしょう。(もちろん、親御さんが亡くなられたということは非常に気の毒なことですが)
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弱者を救おうとしたら自分が弱者に (Unknown)
2013-02-01 01:30:38
「ただ弱者の力になりたいという一心で努力してきました。にもかかわらず、国の身勝手な政策によってこれだけの経済的負担を負うことには納得がいきません。現在も、アルバイトをしながら生活費を賄っています。」

         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま  今までに 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『 おれは 弱者を救おうと法曹を目指していたら、いつの間にか自分が弱者になっていた』
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった
    ,゛  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゛T´ '"´ /::::/-‐  \    パラリーガルだとか法務部だとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
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Unknown (Unknown)
2013-02-01 08:15:57
某不動産○定士は研修実費として130万くらい負担しなきゃいけないわけだけど、法曹養成は実費負担ゼロ、生活費も無利子貸与なわけだから、基本的に問題点は専念義務と他に例を見ない長期に渡る拘束(司法書士なら2ヶ月程)に限定されるはず。
それ以上を求めるとなると、法曹がいかに特別な存在であるかをうまくアピールしなきゃ難しいよね。ましてさらに金の掛かるLSについては所属団体が支持してるわけだから。
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Unknown (Unknown)
2013-02-01 10:25:44
甲南ロー出身の弁護士さん

頑張ってください!

ところで、その1千万円の借金を返済しようとしているとのことですが、何年かかって返済しようとしているのですか?

ちなみに監査法人勤務の公認会計士でも、3年で1千万円貯めるのは至難の業です。
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Unknown (芳賀)
2013-02-01 12:17:58
よってたかって、身ぐるみ剥ぐとはまさに
このことだね。

貪っているよ。

マジで、ハゲタカファンドならぬハゲタカジ
ャパンのお通りだね。

犠牲者に幸あらんことを!
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Unknown (Unknown)
2013-02-01 12:53:34
>某不動産○定士は

こちらの試験の受験者数と合格者数は、泣けてくるくらい減っていますよね。

>法曹養成は実費負担ゼロ

まるで、携帯電話(スマートフォン)の端末分割商法みたいだな。目指すべきは、実質0円ではなく一括0円ということですね。
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Unknown (Unknown)
2013-02-01 16:19:33
あれだけの勉強をして、リスクを払った先が、
普通の会社勤めよりも相当に悪い待遇しか得られない
ということじゃ、誰も目指さんよね。

だって、せっかく努力しても、報われないどころか、
DQNな刑事被告人やナマポのワガママを聞く、
       パ      シ     リ
にされてるだけにしか見えないけどなあ。最近の若手の活動を見ているとさw
なんで東大京大まで行って、司法試験に合格までして、こんな人達の
       パ      シ     リ
やんなきゃいけないの。

しかも、こういうのはDQNだから、話が通じない。
逆恨みの危険もあるっていうね。
いくらいい指示をしても、いうことを聞かないっていうね。

業務拡大つっても、そんな仕事ばっかりじゃん。

東大京大あたりの賢いヤツなら当然こんなことは情報集めて知っている。
こういう賢い奴が、法曹なんかになるはずがない。

って、普通、思うよね。
それも、低賃金なのに。
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Unknown (某57期)
2013-02-01 17:12:01
66期修習予定者の方が、

>実家から通えるならまだしも、地方修習になると金銭的負担が多くなり、たとえ弁護士になっても、借金返済のため儲かる仕事を優先せざるを得なくなりそうでとても心配しています。

とおっしゃっていますが、この人は既に、儲かる仕事のアテと、儲からない仕事のアテと、両方あるんですね…

儲からない仕事しかない我が身より、よほどしっかりと経済面を確保されていると思います。
こういう方もいらっしゃるということは、ひょっとすると、既存の弁護士が、新人の経済的心配を行う必要は、あまり無いのかも知れませんね。
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