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大阪駅前第3ビルのスパニョラ

2020-12-05 14:43:46 | 日記
今回は大阪のスパニョラというカフェを紹介したい。場所は大阪駅前第3ビルの地下2階。大阪駅前ビルは第1から第4まであり、昭和の高度経済成長の時代に第1ビルが竣工され、第3ビルは1970年代後半に完成した。そしてこの4つのビルは様々なジャンルが混在した典型的な雑居ビルであり、実に混沌としたイメージが空間全体に漂っている。私のある友人などは、そこに足を踏み入れると流行とは無縁の淀んだ古い空気を感じるとさえ評していた。つまりこの大きな建物は入れ物としての箱の機能しか有してはおらず、分かりやすい地図が各階に設置されてはいても、内部が分野別に業種ごとにバランス良く整理整頓されているとは言い難い。

しかしだからこそ明確な目的を持っている場合には、自分にとっての隠れ家に辿り着けるような面白い場所であり、無駄な時間を過ごすことがないわけだ。私の場合も、この駅前第3ビルにはスパニョラでコーヒーを飲む以外の目的が殆どない。それゆえ事前準備もせず目的も持たずに、漠然とこのビルを訪れたとしたら、未知の発見はあるかもしれないが、随分と無駄な時間を過ごしてしまったという徒労感を味わうかもしれない。

スパニョラにはオリジナルの美味しいブレンドやアメリカンのコーヒーもメニューに確りと存在するのだが、私は産地の旬な豆を焙煎したコーヒーをいつも頼んでいる。数年通っているうちに自然とそのような習慣になってしまった。今回のブログの写真で紹介しているのもその類いである。私自身がコーヒーに苦味よりも酸味を求めているせいか、このカフェと非常に相性が良いようだ。尤もコーヒーの魅力は苦いか酸っぱいかという短絡的な次元でしか味わえないものではない。やはりそこは苦味と酸味のバランスや豆そのものの質感、それに温度といった様々な要素が介在する。ただし日本のコーヒー産業においては、一般的に酸味よりも苦味に人気があるのは否定できない。日本人の多くはコーヒーというと苦い印象を抱くのが自然な先入観であるし、全国展開している知名度の高いカフェは、多数派にアピールする苦味を重視して、商魂逞しくチェーン店を増やし拡大路線に成功しているように見受けられる。

ところが近畿圏にはこのスパニョラのように単独の店で、マイペースを崩さずに地域や常連のお客さんに根強く支持されながら商売を続けている店は多い。またこういうカフェは組織的なマニュアルを重視せずに、店主やその腕を受け継いだスタッフが質の高い一杯のコーヒーを淹れる個人技の瞬間を体験できるのも魅力の一つだ。そして興味深いのは、私のようにコーヒーの酸味に惹かれる人間だけにアピールするだけではなく、紅茶も含めた多種多様なメニューが組まれていることである。コーヒー豆の種類の多さゆえに当然のこと、苦いコーヒーも飲めるし、コーヒーや紅茶とマッチングしたケーキやトーストにも工夫が施されている。実際、コーヒーよりもスイーツ系をお目当てに訪れる女性客も多いらしい。

そしてスパニョラのご主人は登山の趣味をお持ちで大変感性豊かな人である。店内にもセンスの良いクラシック音楽が流れ、その安らげる空間を小規模なコンサートや、絵画やイラストの作品発表の場として提供もされている。こうしたカフェが文化活動をサポートする傾向は何も今に始まったことではないが、とても有意義なことだ。

また土日は禁煙だが平日は喫煙可能になっている。この為、客層には愛煙家も多い。にも関わらず煙草を吸ったことがなく通常なら喫煙空間を拒絶する私が、平気で平日にもスパニョラへはコーヒーを飲みに来てしまう。しかもその平日には煙草の煙を想定してか、微妙にコーヒーは熱く温度が高い気がする。これは煙を凌駕する香りを生成させる配慮であろう。要はこのカフェには店側の配慮で、主義主張や嗜好の違う人間が共存できる大らかさや寛容さが存在しているわけである。

そしてそんな大らかさや寛容さを感じさせる人物が歴史の表舞台に再び現れた。アメリカ合衆国のオバマ政権時代に副大統領を務めたジョー・バイデン氏である。先月に大阪では大阪都構想の住民投票があり、アメリカ合衆国では大統領選挙があったわけだが、この2つの大きな審判の結果で目を見張ったのは、それが一方的な勝利ではなかったことだ。史上最高齢のアメリカ合衆国大統領に就任するバイデン氏が明らかにしたホワイトハウスの新しい布陣はかつてないほど多様性に溢れている。そして分断ではなく融和と団結を真面目に説いた長老のその姿には、前途多難な船出ではあっても、疲弊していた超大国にやっと一筋の光明がさしたように思う。ここは大阪府知事や大阪市長も素直にバイデン氏を見習って頂きたいものである。スパニョラでコーヒーを飲みながら、バイデン氏が来年の大統領就任1年目に、民主主義のサミットの開催を目指していることを知った。

この民主主義のサミットには3つの趣旨が存在する。以下の通りに。

1. 政治腐敗との闘い
2. 権威主義からの防衛
3. 自国及び外国での人権の促進

これら3つの領域へのコミットメントを、各国から引き出すらしい。
これは期待大である。



コメント
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