山では自然との関係が直接になる。
平素、私達は太陽や風や雨や、その他の自然とは間接の関係を作っている。強すぎる太陽には窓に日よけをつけ、風が強くなれば戸を閉ざす。逃れる場所、遮断するものが山にはない。
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強い風は踏み出す足元を狂わせる。そして重心を失わせる。
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この荒々しく襲いかかる自然については常に計算に入れておかねばならないのに、人は自らの失敗の原因を山に来ても、ほかになすりつけようとする。
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この思いあがりに気づき、失敗のすべての原因が自分にあったことを認めるようになれば、山の歩き方も変わる。山に対して謙虚になる。すると山が優しい存在となる。(孫一曰く)S.59年11月