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2020ザルツブルク音楽祭「コジ・ファン・トゥッテ」を観る

2023年11月10日 | オペラ・バレエ

少し前にテレビで放映されていた2020年開催のザルツブルク音楽際でのモーツアルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」を録画しておいたので観た。つい最近、ザルツブルクに旅行に行ってきたばかりなので、早速、ザルツブルク音楽際の模様を観たくなったのだ。

2020年はコロナが急に広まった年で、確か、バイロイト音楽祭は開催中止したが、ザルツブルク音楽祭は規模を縮小して開催した年であった。この決断はすごかった。

この「コジ・ファン・トゥッテ」は、上演時間を休憩無しの2時間20分と区切られて演奏された。休み無しのぶっ通しの演技は歌手やオーケストラもつらいし、観ている方もたいへんだが、中止になるよりは良いと皆我慢したのだろう。また、このオペラは登場人物が少ないのも演目として選ばれた理由かもしれない。

[演出]
 クリストフ・ロイ(独、60)
[出演]
 フィオルディリージ:エルザ・ドライジグ(仏、32、ソプラノ)
 ドラベッラ:マリアンヌ・クレバッサ(仏、36、メゾソプラノ)
 グリエルモ:アンドレ・シュエン(伊、39、バリトン)
 フェルランド:ボグダン・ヴォルコフ(キエフ、33、テノール)
 デスピーナ:リア・デサンドル(仏、33)
 ドン・アルフォンソ:ヨハネス・マルティン・クレンツレ(独)
[指揮]
 ヨアナ・マルヴィッツ(独、37)
[オーケストラ
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

2020年8月2日:祝祭大劇場, ザルツブルク

演出家のロイは、直ぐ見破られそうな簡素な変装をあえて施し、「変装とは見た目のリアリズムではなく、観客と登場人物の心理上の手続である」、と説明していることが番組で示された。

なるほど婚約者の貞操を試すためにアルバニア人に変装して互いの相手に別人としてアプローチするわけだが、2人の男性の変装は誰が観ても本人だとバレる変装だ。また、姉妹の召使いデスピーナが2人の男性の変装に気付かないと言うのもおかしい。ただ、デスピーナが医者や公証人に変装した姿はかなり奇抜なものになっており、気がつかないことも有り得るかな、と思わせる。

また、この2つのカップルであるが、歌手の音域による本来の婚約者の組み合わせは、

  • バリトン(グリエルモ)とメゾソプラノ(ドラベッラ)
  • テノール(フェルランド)とソプラノ(フィオルディリージ)

となるが実際は、

  • バリトン(グリエルモ)とソプラノ(フィオルディリージ)
  • テノール(フェルランド)とメゾ・ソプラノ(ドラベッラ)

が婚約者となっている。それが変装したアルバニア貴族のアタックにより本来の組み合わせになり、最後にまた元に戻るストーリーになっている。

これは意味深である。老哲学者の話に乗ってしまって、姉妹が婚約した相手男性と別の、姉は妹の、妹は姉の、変装した婚約者に言い寄られて、なびいてしまう。なぜなら、このオペラは女とはそんなものだ、と言うことにしているが、元々この2つのカップルは相思相愛のカップルではなかったからこそ、本来自分にふさわしい相手が出てきたので、そちらのアタックに陥落したとも言えるからだ。それをこの歌手の音域の組み合わせで暗示していると言うわけだ。

フィオルディリージを演じたエルザ・ドライジグは貞操を象徴するイタリア語で「ユリの花」という名の令嬢だが、そのイメージにピッタリの歌手だったし、姉と比べて男性に積極的なのは妹で、姉より先に陥落した妹のドラベッラを演じたマリアンヌ・クレバッサも、その役柄にピッタリの演技をしていた。2人とも美人で歌唱力もあり、将来が楽しみな歌手だ。

さて、指揮者のヨアナ・マルヴィッツ(女性)だが、ウィキで調べてみると、今回の指揮がザルツブルクデビューであり、ザルツブルク音楽祭でオペラ作品を指揮した史上3人目の女性指揮者である。彼女は、2006年からハイデルベルク劇場管弦楽団の指揮スタッフとして働いていたが、勤務の 3 か月目に新作『蝶々夫人』の初日の夜に、6 時間前の予告でプロの指揮者としてデビューを果たした、とある。

ピンチヒッターでデビューしてその後一気にスターダムを駆け上がるというのはトスカニーニがそうだったし、確か、バースタインもそうだった。さらに彼女はニュルンベルク州立劇場の2018-2019シーズンから有効となる新GMDとして、5年間の契約を結んだとある。先日旅行してきたニュルンベルクに縁があったとは驚きだ。

若干単調さがあるオペラだが、楽しめました。



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