晴山雨読ときどき映画

“人生は森の中の一日”
山へ登ったり、本を読んだり映画を観るのは知らない世界を旅しているのと同じよ。
       

雨の日は映画 〈天はすべてを許し給う〉と〈エデンより彼方に〉を比較して

2010年07月07日 | 映画
(↑〈天はすべてを許し給う〉のワンシーンを宵乃さんが描かれました。”忘却エンドロール”には映画ファンなら見逃せない素敵なイラストが他にもたくさんありますよ)

雨が降っている。映画館に足を運ぶ”傘ではなく足がない”と恨めしく激しく降る雨を眺めていたら、新聞にBSで〈天はすべてを許し給う〉という映画タイトルを見つけました。何とも今日の私の境地にぴったりです。ネットで調べると、2002年作 "FAR FROM HEAVEN"〈エデンより彼方に〉の下敷きになった作品だと説明されているのです。


8年前、(エデンより彼方に〉は当時好きな女優だったジュリアン・ムーアが主演し、ヴェネチア国際映画祭最優秀主演女優賞を始めとして多数受賞した映画で、期待して映画館へ行きました。しかし夫が同性愛者だと知った上流階級の妻が黒人男性の庭師に恋をしてよろめき、無垢がゆえに次々と不幸に見舞われる設定。ジュリアン・ムーアが演じるキャシーには同情の余地も無く単なる転落悲劇ドラマにしか思えずにがっくりしたのです。ただ、カナダで撮影しただけあって、スクリーン全体に広がる高級住宅街のまばゆいばかりの紅葉には慰められました。



ところが、1955年に作られた〈天はすべてを許し給う〉は好きな映画でした。私がまだ生まれたばかりの頃に出来たアメリカ映画なのに〈エデンより彼方に〉よりはるかに優れていると思えます。主人公のキャシー(ジェーン・ワイマン)は凛々しい美人で、自分を持った女性だったことに好感が持てます。常識人である未亡人キャシーと年の差がある恋人ロンとの恋愛は素敵です。色んなことに阻まれながらも、こちらのキャシーは〈エデンより彼方に〉のキャシーより冷静に見つめ最後は自ら選んで恋を成就させました。恋人ロンはH・Dソローの名著”森の生活”をバイブルとして暮らす植物を愛する男性として描かれていました。作られた年代に関係なく良い物は良いのだとあらためて感じます。監督はメロドラマの巨匠と云われたダグラス・サーク監督ですが、〈天はすべてを許し給う〉はメロドラマではないでしょう。

ヘンリー・D・ソローは、
森のなか、ウォールデン池のほとりに家を建て、
2年2カ月のひとり暮らしを始めました。
『森の生活』は、
その森での一人暮らしの記録
文明から切り離された生活を試み、
そこで得た知恵や思想が語られています。


ロンがキャシーに手渡したシルバー・ティップスという木の枝が、キャシーのテーブルの上を飾っていました。調べると紅茶の木で琥珀色のティーを出す最高級の茶葉でした。
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2 コメント

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設定はメロドラマにありがちでも (宵乃)
2010-06-30 09:20:32
描いていたものは違いましたよね。
前日にオンエアされた同監督の「悲しみは空の彼方に」も、そういうタイプの作品でした。
なんというか、”逆境にめげず立ち向かう”というのではなく、”自分の考え方しだいで、逆境も逆境じゃなくなる”という感じなのかな?

「エデンより彼方に」は未見ですが、bambooさんの説明を読んだ限りではまるで別物ですね(笑)
まあ、どろどろのメロドラマを求めるなら、こちらの方がいいのかも。
返信する
Unknown (bamboo)
2010-06-30 10:07:16
>”逆境にめげず立ち向かう”というのではなく、”自分の考え方しだいで、逆境も逆境じゃなくなる”という感じなのかな?
その表現はぴったりで、上手く言い当てていると思います

>どろどろのメロドラマを求めるなら、こちらの方がいいのかも
そういうのも良い時ありだね〈笑)
返信する

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