晴山雨読ときどき映画

“人生は森の中の一日”
山へ登ったり、本を読んだり映画を観るのは知らない世界を旅しているのと同じよ。
       

白黒映画「雨のしのび逢い」を堪能

2010年08月05日 | 映画
辻原登著「許されざるもの」を読んでいますが、こう暑いと(昼間冷房は止めている)活字中毒の私でも活字を追っかけるのは苦難の技です。本を閉じて一昨日録画していた「雨のしのび逢い」を観る事にしました。

原題 : Moderato Cantabile
製作年 : 1961年
製作国 : フランス


ブレーはフランス西海岸のひっそりした田舎町である。そこの製鉄所長の妻アンヌ(ジャンヌ・モロー)は、ピアノ教師の家で、窓の外に突然女の悲鳴を聞いた。結婚以来八年、アンナはこの町に住んでいるが好きになれない。何一つ不自由のない名流夫人である。翌日、彼女は一人の男から話しかけられた。鉄工所の工員ショーバン(ジャン・ポール・ベルモンド)で、会話は当然のことのように昨日の事件に向けられた。二人はそれから毎日のように会い愛し合う仲となった。七日目、ショーバンは「君は死んだ方がいい」といい残して去った。激しい愛の言葉と知りながらも消えて行く男を見送ってアンナは号泣した。(goo 映画よりあらすじ)

(ヤナギトラノオ)



1961年作の白黒映画か・・・と落胆して観始めたのですが久しぶりに映画らしい映画を観れたと思います。ハリウッドにないヨーロッパ映画の醍醐味を持っていました。単なるメロドラマに終らせていない手腕が光ります。それもそのはず、原作が「愛人・ラマン」の著者マルグリット・デュラスによって書かれていました。ベトナムを舞台にしたこの映画も素晴らしかったけれど、今回は大人の恋愛や人生を感じさせます。

それにしても、原題がModerato Cantabileなのに、邦題を「雨のしのび逢い」とは!当時の日本の映画ファンをかなり見くびっていませんか。「モデラート・カンタービレ」の意味は、音楽用語で「普通に歌うように弾く」という意味合い。
映画の冒頭で主人公の子供がピアノレッスンを受けている場面で、モデラート・カンタービレに注意を払わないで弾いている子供に向かい、ピアノ教師が「モデラート・カンタービレの意味は?」と問いただします。子供は抗って弾こうとしない。付き添ってきたアンヌもいつかは分かるでしょう・・と行った具合。

これは彼女が置かれたブルジョア的な生活に嫌気がさしているのと同じであると暗に語っているようです。取りたてて何も起こらない人生に閉塞感を感じていたのはアンヌでしたから・・・。
鉄工所の工員ショーバンと製鉄所長の妻アンヌとの恋の行く末は、たぶんあの殺人事件のような結果を招くのだろうと推測しながら観終えましたが、そうはなりませんでした。ジャンヌ・モローが結末時に上げる悲鳴は壮絶でした。ジャンポール・ベルモントを凌駕する演技で賞をもらっています。反復して流れるディアベリのソナチネの中の“モデラート・カンタービレ"が効いていました。
「でもねアンヌ、あなたは世間知らずのまだ若い奥様よ。退屈な人生ってあるはずないじゃないの!」と、どこかで叱咤激励する先輩ママの私も居ましたね。

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4 コメント

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Unknown (bamboo)
2010-08-14 10:40:06
>最近の直木賞・芥川賞を受賞した作品も読んでみました。

私も今年の芥川賞受賞作品『乙女の密告』赤染晶子作に期待しているのですがどうなのでしょうか?でも芥川賞受賞作品は、今まで不可解で難解なのが正直な感想ー。直木賞がエンタメ要素を持っていますね。東野圭吾は猛スピードで書きまくっていて、出来不出来の差が多いのではと思っていますが・・・
返信する
映画 (CJN)
2010-08-12 10:03:39
ジャンヌ・モローとジャン・ポール・ベルモンドですね。懐かしいですね。昔はヨーロッパ映画はたくさん上映されていましたが、私はあまり見ておりません。今の琴寿になったら見る事が出来そうです。ようやく「借りぐらしのアリエッティ」と「ヒックとドラゴン」を見ました。どちらも子供文学が原作ですが、大人も鑑賞に堪える良くできた作品でした。本も以前より読んでいます。ミステリー(東野圭吾)が多いですが、最近の直木賞・芥川賞を受賞した作品も読んでみました。
山は無名低山専門です。九州の山1500座になりました。
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やっとコメント全文が貼り付けられました (bamboo)
2010-08-07 14:18:41
実は私もアンヌの生き方や人柄には感心できません。ただフランスは非婚者が多く、婚外子率が60パーセント以上だと本で読んだことがあります。驚くことに社会も認め保障制度が整っています。日本人が家庭を大事にするという感覚より、お互いの関係性を最優先するお国柄みたいです。そのあたりを考慮すると、アンヌが夫(男性)に愛を求めているのも理解できると思えたのです。
それと最近の早いテンポの映画に、私自身がついていけなくなっていて、風景描写などで心象をカメラワークで丁寧に表わしていると好感が持てたから。
昔の映画って時代遅れという先入観があったので、余計新鮮に映ったのでしょう。
それでもアンヌはあまりにも幼すぎて愛を一方的に求める夢見る少女でしたね。
彼女がショーバンに去られても仕方ないわけです。彼の方がずっと大人で2人が離れ離れになる結末がとても良かった!
ピアノ教師が「モデラート・カンタービレ!」と忠告しているのは、アンヌへ向けられた言葉で、もっと現時点をみつめて生きなさいということだったのでは・・・飛躍し過ぎかぁ~。
TVでオンエア~される映画を観れば、こうやって感想交換できるから楽しいですね!
トラックバックはPCのご機嫌しだいということで、またいつかこちらからも試みてみますね
返信する
Unknown (宵乃)
2010-08-06 12:12:13
この作品はあまり共感できませんでした。
彼女の、自分の周りのものがすべてくだらないという態度が、どうも中高生のように見えてしまったんですよね。
まあ、不倫ものが苦手なので、最初から冷めた目で見ていたのかもしれません。
あと、この邦題はないですよね~!

はなしは変わりますが、「太陽に灼かれて」のトラックバックが来てないようです・・・。fc2かgooの調子が悪いと失敗する事もあるようなんですよ。もうちょっと簡単確実ならいいんですけどね~。
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