僕の庭に一本のもみの木がある
三年前に加奈子と植えた
12月になると加奈子がデコレーションをたくさん買ってきて
飾り付け、電飾を巻き付けた
暗くなるときらきらと光って、クリスマスムードを高めた
加奈子は時折やってきて、僕の居間からクリスマスツリーを眺めていた
「きれいね、私の心も照らしてくれればいいのに」
イヴには七面鳥のローストを焼いた
そして12/25の昼、電飾や飾り付けを取り外し、加奈子は言った
「またね、守さん」
それっきり、加奈子は現れなかった
もともと電話も携帯も教えてくれてなかった
僕の心にぽっかりと穴が空いた
寂しかった
裸のもみの木も僕の心を締め付けた
でも僕は新しい相手を見つけようとはしなかった
加奈子でなくてはならなかった
帰ってくることを毎晩神に祈った
しかし三年
僕は忘れようとしていた
12/24の朝、チャイムが鳴った
小包が届いた
中は電飾と飾りだった
メッセージはなかった
でも僕はわくわくしながら飾り付けをした
そして夕方6時、チャイムが鳴った
加奈子だった
「お帰り」
「なにも聞かないの?怒ってないの?」
「いいんだ、君が帰ってきてくれた、それだけでいい
でもね、もうどこへも行かないと約束してくれ
君なしで生きるのはもう僕にはできない」
「私、私・・・」
加奈子はぼろぼろと泣き始めた
そして彼女の目にあふれた涙に映ったイルミネ-ションがきらきらと輝いていた