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「紫陽花の花って大きいわよね。手まりみたい」陽子は大振りの傘を斜めにして花の前で座り込んでいる。「違うと思うな。一つ一つの花が重なって咲いているんだ」「あら、花に詳しいのね」陽子は嫌みを言う。僕だって自信はない。けれどこの紫陽花寺の紫陽花は、とんでもなく広い範囲で咲いている。「有り難う、連れてきてくれて。それも二年続けて」それは去年彼女に約束させられたことだ。僕は約束は守る。「ねえ、ここの紫陽花の . . . 本文を読む
いつものように朝10時頃、郵便受けを開けた。葉書が一枚、はらりと落ちた。拾って差出人を見る。瑠璃子だ メールで済むものをなぜ葉書なんか・・文面を見た「暑中お見舞い申し上げます。光さん、お元気でしょうか。私は今、苦しいです。何もやる気がなくなって、死にたいと思うようになりました。お医者さんを訪ねたら、鬱と診断されました。安定剤を貰い、夜眠れるように眠剤を処方されました。それでも苦しいのです。光さん . . . 本文を読む