愛詩tel by shig

プロカメラマン、詩人、小説家
shig による
写真、詩、小説、エッセイ、料理、政治、経済etc..

梅雨入り

2009年01月18日 21時20分47秒 | 

僕はたばこ屋のテントの下で雨宿りをしていた。
参ったなあ。梅雨入りって言ったって朝は晴れていたのに。
そのとき自販機でたばこを買った女の子が言った。
「傘持ってないの?こんな雨降りの中。いいわ。ちょっと待っててね」
 彼女は駆けていった。綺麗な走り方だった。
 5分後彼女は帰ってきた。透明のビニール傘を持って。
「じゃあね」
自分の傘を持って立ち去ろうとする彼女を僕は止めた。
「なあに?」
「僕はまだお礼を言ってない。それに傘代もまだだ。お礼をさせてください」
「あら、気にしないでいいのよ。300円の傘だし」
「僕は大いに気にする。ちょうどランチタイムだ。ランチをごちそうさせてください」
「んー、そうね。じゃあお言葉にあまえて」
「どこがいい?」
「近くで洋食やさんがあるの。美味しいわよ」
 と言うわけで僕の前にはオムライスを食べている女の子がいる。
 とっても綺麗な子だ。
 僕はおずおずと聞いてみた。
「ねえ、彼氏いる?」
「空き家よ。あなたは?」
「いない」
「じゃあ、つき合いましょうか?」
 僕は跳び上がった。
「嘘みたいだ。梅雨がこんな素敵な彼女を連れてきた」
「ほんとはね、雨宿りしているあなたに一目惚れしたの。だから傘、買ってきた」
 嘘みたいな話をレストランの玄関のあじさいが聞いていた。

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