蔵書目録

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『ヴイルヘルム・ケンプ ピアノ独奏会』 札幌・名古屋 (1936.4)

2014年03月07日 | ピアニスト 3 ルービンシュタイン、ケンプ他

 

 ヴイルヘルム・ケンプ ピアノ独奏会

  曲目と解説 

  昭和11年 〔一九三六年〕 4月20日(月)午後7時 於 〔札幌〕寶榮座
  主催 北海道タイムス社 市教育会 札幌音楽協会
  
  日本ポリドール蓄音機株式会社

 

  曲目

  1.a)カンタータ前奏曲 … バッハ
       ー神に謝す
    b)コーラル前奏曲  … バッハ曲・ケンプ編
       ー醒めよ、と呼ぶ聲あり

  2.ピアノ奏鳴曲 嬰ハ短調 作品27ノ2 … ベートーヴェン曲
      (月光奏鳴曲)
         アダジオ ソステヌート
           アレグレット
             プレスト アジタート

  3.a)アラベスク 作品18 … シューマン曲
    b)翺翔 作品12 … シューマン曲

  4.ピアノ奏鳴曲 ヘ短調 作品57 … ベートーヴェン曲
      (熱情奏鳴曲)
         アレグロ アツサイ
           アンダンテ コン モト
             アレグロ マ ノン トロツポープレスト

 

 ヴイルヘルム・ケンプ 
   ピアノ独奏会
 
  管絃楽 東京 新交響楽団 指揮 アウグスト・ユンケル 〔Augusut Junker〕 
  曲目と解説 

  昭和11年 〔一九三六年〕 4月26日(日)午後7時 
  於 〔名古屋〕市公会堂 

  主催 中部日本児童愛護聯盟 
  後援 名古屋新聞社 

  日本ポリドール蓄音機株式会社 22.2センチ、16頁。

  
  
  曲目 

1.a) ピアノ奏鳴曲 嬰ハ短調 作品27ノ2 ‥‥ ベートーヴェン
     (月光奏鳴曲)
      アダジオ ソステヌート
        アレグレツト
            プレスト アジタート
  
  b) トルコ行進曲 K.331 ‥‥ モーツアルト曲
     (イ長調奏鳴曲より)

2.交響曲 第八番 ヘ長調 作品93 ‥‥ ベートーヴェン曲
     アレグロ ヴイヴアーチェ エ コン ブリオ
       アレグレツト スケルツアンド
         テムポ デイ メヌエツト
           アレグロ ヴイヴアーチェ

3.ピアノ協奏曲 第五番 「皇帝」 変ホ長調 作品73 ‥‥ ベートーヴェン曲
     アレグロ
       アダジオ ウン ポコ モツソ
         ロンド アレグロ

    (日本楽器会社提供ピアノ使用)

 新交響楽団メンバー表

 

 「ヴィルヘルム・ケンプ〔Wilhelm Kempff〕」推薦の辞           伯林国立「宗教音楽」音楽院長
                 哲学博士 カール・ティール教授に依る

 ヴィルヘルム・ケンプは、現代に於ける最も特質あるピアニスト中の一人である。彼は一個の音詩人であり、その演奏によつて我々の生活にもたらすものには真に感銘深いものがあり、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスの解釈に於いて特にその著しいものがある。最も強力な独創的才能をもつ者のみが真に即興の再現芸術を生かし得るのであり、さうした者のみが真に原作家の芸術的意図を伝へ得るのである。此の意味に於いてケンプは、現代少壮ピアニスト中の最も優なる者である。と言ひ得よう。
 ケンプ自身の発展は特に彼が尊敬された名指揮者の子弟として、且つまた技術的要素以外、特にその基礎教育を施してくれた名教師の子弟として受けた音楽教育そのものからの感化、それは勿論であつたであらう、だが彼自身のもつ即興演奏的才斡の開発に基く音楽的智力の産物であつたこともまた歪めない。それはまさに驚くべき一つの事実であつた。といふのは、彼ケンプ九歳にして、音楽学校への入学試験に際し演奏したといふのがバッハの名曲『平均率ピアノ』用曲の『前奏曲と遁走曲』であつたことであり、而も彼はそれを技術的にも音楽的にも完全に弾きこなしたといふ。更にその曲を幾たびか移調して弾くことを即席に命ぜられたのであつたが、それをしも尚よく易々としてやつてのけたといふ。まだその上、與へられた主題による即興の演奏を命ぜられたが、それもまた堂々大人並みに演奏し終つたといふ。かくて彼は校内最高のクラス編入を許されたのであつた。そして着々その行程を「速歩行進曲」風に築いていつた。
 彼の公開演奏家としての経歴は、提琴家アドルフ・ブッシュとの共演に始まり、以後急速に内外到る処の大都市に於ける演奏会に出場することになつた。年を逐ふて此の少壮芸術家は特に各方面の音楽学校からの演奏会出演を懇望されるようになつた。勿論それは彼の卓抜な奏法とさうして完璧に近い理想的な演技とが汎く認められたかれでありそしてそれによつて独逸古典音楽の真価を充分に発揚することを得たからであつた。彼は演奏会への出場度数が余りに多いため、重要問題の協議に関して、独逸の演奏会管理者が直接彼を捕へる位のの他、殆ど家庭に在つての活動が意の如くならぬといふのは気の毒である。
 併しながら真に我々が理想的な方法として望む処のものつまり此の親愛なる芸術家に対して望む処の心からなる独逸人としての気持、それは彼以外の人間を以てしては置換へることの出来ないといふ音楽の教訓に関して、どんな抱負を彼が来たるべき時代のために用意してゐるであらうかといふことに就て、如何なる期待を我々がもつてよいのであるか、既に幾たびか彼にむかつて呼び求めた独逸アカデミーの一人からの声に対して必ずや彼がよき応答を與へてくれるであらう、といふことである。
 若しも真にケンプの演奏に就ての完全な印象を望むならば、常に彼が聴衆といふものに対して無関心であり、恰も自分自身のためにのみ演奏を続けてゐるかの如くに見え、そしてそれによって示される芸術そのものに対しての心からなる没頭、さうしてそれらのものを通じて示し出されるそれゞの曲目に対しての極めて独創的で自由な解釈法、並に原作者のもつ理想への喚起など、それらすべてのものが彼のもつ異常なる能力の現はれえあるといふことを無視されることがあってはならない。かくて此の古典物の演奏者が而も尚最も現代風な解釈者であるといふことになり、二つの時代に関する文化過程の最よき媒介者であるといふことになる譯なのである。  

 曲目解説 
       モーツアルトの作品   牛山充 
       ベートーヴエンの作品  鹽入亀輔

 



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