十一月十四日(木)午後七時
於日本靑年舘
二宮秀 管絃樂作品發表會曲目解説
指揮 作曲者
管絃樂 新交響樂團
曲目解説
作曲者 二宮秀
=〔第壹部〕=
音詩「バベルの塔」(夜と夢の世界のさすらひ人の歌へる)
ーその昔、ノアの子孫等が天上なる神に至らんとしてバベルの塔を築いた樣に(舊約聖書・創世記參照)今もなほ人々は天上なるものに憧れ、それを得んとして喘ぐ。ー
第壹「序曲」
人生の序曲ー多くの夢ー止度を知らぬ情熱ー殉情ー憂鬱ー希望ー等々ーそれ等のモザイク。
第貳「稚き日に」
夢ばかりなる世界。
第參「靑春黯黒」
若人の胸はともすれば傷き黯むのである。
第肆「薄暮哀唱」
まひるよりも、たそがれにーよろこびの歌より哀みの歌をーそれは害はれ傷ついた靈の浄化のために‥‥‥‥。
第俉「終曲」
地上巡禮者の終曲ーなほそこにあるものは盡きせぬ思慕と、見果てぬ夢である。
=〔第貳部〕=
Ⅰ 管絃樂への編曲
モツアルト作曲ピアノ・ソナタ・イ長調
第壹樂章「主題と變奏曲」による。
Ⅱ 「辰子姫」(出羽國田澤湖の傳説より)
この樂曲の主題ー不易の美(老衰と死の運命より解放されんとの願望)
傳説の梗概ー
辰子姫と云ふ世にも美はしい容姿の持主が、その美を永遠に保ちたいとの願ひに驅られて觀世音菩薩に願かけをする。百夜參籠し滿願の夜、神靈の御告げによれば、さる泉の水を呑めば願の叶ふ由を聞き、直ちに赴きて靈水を呑みし所、忽ち天地荒れ狂ひ雷鳴豪雨となり附近一帶は湖水と化し、彼女はその主 ヌシ (精)となった。
斯くしてうつせみの人間の美は、うつらはぬ湖の美と變じたる事によって、「不易の美」を保ちたる所以である。
第壹 プレリュウド
湖の持つ素晴らしい澄明な美しさーそれはやがて辰子姫の美しさでもある所の。
第貳 祈願
萬人の抱く老衰と死の運命より解放されんとの。
第參 轉身
嵐ー變容( Transfiguration )
Ⅲ 「酒顚童子」(日本在來の口碑による)
第壹 或る晩春の夕べ
彼は未だ生國の越後のさる寺院にて、修行中の若僧である。
第貳 脱走-道行
女との戀故に寺を脱走し二人で道行する。
第參 情死ー死別
二人は遂に情死する。けれども運命は彼のみを生き殘し女を死に伴ひ去る。彼は惡鬼となる。
第肆 放浪
彼は漂泊者となりて苦しむ。
第俉 大江山山塞に於ける酒宴。
豪華なる酒宴ー彼は醉を發して眠りに入るー稚き日の生國の祭の夢ー覺醒ー酒宴。
第六塲 戰ひ
彼の運命の最後の日ー殺戮。
Ⅵ 行進曲
普通の三部形式による作曲。無題。
〔蔵書目録注〕
なお、昭和十一年一月一日発行の 『寶塚少女歌劇脚本解説』 寶塚少女歌劇團發行 の 「寶塚音樂歌劇學校と寶塚少女歌劇團の説明」 に、下の記載がある。
囑託 二宮秀(關西學院)