蔵書目録

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『恩賜財團 濟生會協贊趣意書』他 (1911.7発送)

2021年03月20日 | 医学 1 医師、軍医、教育

 

  恩賜財團 濟生會協贊趣意書

 濟生救療ノ事タル救濟事業中ニ在リテモ民ノ休戚ニ最モ緊切ナル關係アルコトハ今更言ヲ須タス又之ヲ國家衞生ノ上ニ觀ルモ將タ之ヲ一般經濟ノ上ニ察スルモ其影響スル所極メテ大ナルモノアリ殊ニ國運ノ進暢ニ伴ヒテ之カ施設ヲ爲スコト更ニ一層ノ急ヲ感セスンハアラス抑〻救濟事業ノ我邦ニ於ケル其由テ來ル所頗ル舊シ然レトモ世人ノ汎ク之カ必須ナルコトヲ認識スルニ至リ施設ノ亦隨ヒテ稍〻觀ルヘキモノアルヲ致シタルハ蓋シ極メテ近年ノ事ニ屬セリ顧ミルニ明治三十年  英照皇太后陛下御崩御ノ事アルニ丁リ慈恵救濟ノ資トシテ特ニ内帑ノ資四十萬圓ヲ各府縣ニ下賜セラレテヨリ以來歳ヲ閲スルコト十有四年資金モ亦今ヤ積テ二百八十萬圓ニ垂ントス其中央地方ヲ通シテ救濟事業ノ上ニ一段ノ振色ヲ加ヘタルモノ 皇室仁慈ノ餘光ニ荷フ所極メテ大ナリトス今ヤ救濟事業ハ公私ノ施設ヲ通シテ其數既ニ四百有餘ニ達シ其經營往々觀ルヘキモノナキニアラサルモ而カモ之ヲシテ益〻改善ノ實ヲ擧ケ其内容ヲ整齊シテ以テ完成ノ域ニ達セシメンコトハ前途尚頗ル遼遠ナリト謂ハサルヘカラス 畏クモ本年紀元ノ佳節ニ當リ
 今上陛下ニ於カセラレテハ親シク桂總理大臣ヲ御前ニ召サレテ世界ノ大勢ニ隨ヒ倍〻憂勤シテ業ヲ勸メ敎ヲ敦ウシテ以テ健全ノ發達ヲ遂ケシメ先ツ無告ノ窮民ニ對シテ施藥救療以テ濟生ノ道ヲ弘メヨトノ 勅語ヲ賜ハリ特ニ内帑ノ資百五十萬圓ヲ下賜シ給フ旨ノ 御沙汰アラセラル 天徳宏遠ニシテ窮民ヲ軫念セラルヽノ渥キ誰カ感奮興起セサルモノアランヤ
 今ヤ泰西ノ諸國ニ在テハ何レモ其力ヲ濟生救療ノ事ニ致サヽルハナク或ハ公費ニ依テ自宅救療又ハ入院救療ノ普及ヲ圖リ或ハ各種ノ慈善團體又ハ富豪ノ寄附等ニ依リテ幾多ノ施療病院ヲ建設シ其他各種ノ施藥救療ノ方法ヲ立テヽ以テ療病ノ途ヲ得セシムル等孜々トシテ其及ハサランコトヲ是レ恐ルヽノ狀アリ然ルニ顧ミテ是ヲ我邦ニ察スルトキハ一般救濟事業ノ數近時漸ク增加スルニ至リタリト雖モ之カ施設ノ實狀ハ尚遠ク泰西ニ及ハサルノ憾アリ殊ニ施療救濟ノ事ニ至テハ其數ヨリ謂フモ將又其實狀ヨリ謂フモ更ニ著シキ遜色ナキヲ得ス現ニ公費救護ノ法規ニ據ルモノ、外之カ機關トシテ經營ノ蹟稍〻觀ルヘキモノハ二三ヲ算シ得ルニ過キス其他團體及個人ノ經營ニ係ルモノ固ヨリ之ナシトセサルモ規模何レモ小ニシテ其施設尚頗ル不完備ナルヲ免レサルモノ多シ殊ニ我邦近時ニ於ケル經濟狀態ノ推移甚著シキモノアリ多數ノ細民ヲシテ爲ニ益〻生計ノ難ヲ感セシムルノ傾向ナキニアラス隨テ貧民ノ疾病ニ罹ルモ容易ニ醫療ヲ受クルヲ得ス空シク病苦ノ爲ニ呻吟シテ長ク業務ニ就クコト能ハサルモノ亦勢其多キヲ加ヘサルヲ得ス固ヨリ救療ヲ爲スニ當テハ先ツ施療ノ要否如何ヲ甄別シ以テ其事ヲ愼ミ苟モ濫施ニ亙リテ爲ニ惰民ヲ助長スルノ弊ナキヲ期スルハ言ヲ俟タスト雖モ其能ク勞務ニ堪ユヘキモノニシテ醫藥ヲ得サルカ爲メ不幸ニシテ容易ニ快復シ得ヘキ病患タモ勢益〻重カラシムルノ外ナク往々ニシテ其天壽ヲ完ウスルコトヲ得サラシムルハ獨リ其人ノ爲ニ憾事トスヘキノミナラス一人ノ疾病ハ更ニ他ノ勤勞ヲ妨ケ延テハ老弱ヲ飢餓ニ瀕セシメ之ヲシテ又同一ノ窮地ニ陷ラシムルモノナキヲ保セス此ノ如キノ類若シ各地到ル處ニ多々之アリトセンカ一國ノ活力ハ之カ爲ニ著シク消耗セラルヽヲ免カレスシテ一國ノ生産力ハ亦爲ニ減殺セラルヽニ至ルヘシ今試ニ我邦ノ死亡統計ヲ以テ之ヲ英獨ノ諸國ニ比センカ彼ニ在テハ近年著シク一般ノ死亡率ヲ滅シ英國ノ如キハ人口千ニ就キテ僅ニ一四、四ヲ示シ獨逸ノ如キハ亦同シク遞減シテ一八、ヲ示スニ係ハラス我ニ在テハ今尚依然トシテ千分ノ二十内外ヲ示シ毫モ減少ノ傾向アルヲ見ス加フルニ庶民病トシテ最モ恐ルヘキ結核死亡者ニ至テハ明治三十二年ニ於テ全國死亡總數百分ノ七、二五ナリシモノ爾来ハ漸次ニ增加シテ今ヤ百分ノ十内外ヲ算シ就中大市街地ニ在テハ百分ノ十八乃至ニ十一ノ高率ヲ示スニ至レリ殊ニ小兒死亡率ノ如キハ從來彼ニ比シテ遙ニ少數ナリシヲ誇リタリシニ近年彼ニ在テハ著シク其減少ヲ示セルニ係ハラス我ニ在テハ却テ漸次増加ノ勢ヲ呈セリ此ノ如キハ其由テ來ル所固ヨリ獨リ公私救療ノ不完備ニノミ是レ歸スヘキニアラスト雖モ若夫貧民救療ノ施設ニシテ其宜シキヲ得疾病ノ未タ甚シカラサルニ先チテ早ク醫療ヲ加ヘ一ニハ此ノ如クニシテ其天壽ヲ完ウセシメ一ニハ此ノ如クニシテ能ク其勞務ニ從フコトヲ得セシムルコトハ其一國ノ活力ニ裨補スル所必ス大ナルモノアラン施藥救療ノ殊ニ今日ノ我邦ニ急ナルヲ感スルハ蓋シ之カ爲ナリ
 今上陛下ノ深ク 大御心ヲ貧民ノ救療ニ注カセラレ特ニ内帑ノ資ヲ下シ賜ハリテ濟生ノ途ニ充テシメラレタルハ殊ニ救濟事業ヲ以テ念ト爲スモノヽ寔ニ感激ニ堪ヘサル所ナリ依テ茲ニ朝野力ヲ勠セ同志胥謀リ恩賜ノ資ヲ基本トシテ更ニ加フルニ有志ノ義金ヲ以テシ普ク全國ニ亙リ弘ク救療ノ途ヲ講シテ以テ 聖旨ノ普及貫徹ヲ期セントス

  恩賜財團 濟生會寄附行爲

   第一章 名稱
第一條 本會ハ恩賜財團濟生會ト稱ス
   第二章 目的及事業 
第二條 本會ハ明治四十四年二月十一日内閣總理大臣ニ賜ハリタル 勅語ノ旨ヲ奉戴シ
 天皇陛下 皇后陛下至貴至高ノ保護ヲ仰キ施藥救療ニ關スル事業ヲ擧クルヲ以テ目的トス
第三條 本會ハ前條ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ行フ
 一 東京其他全國適當ノ地ニ漸次療病院ヲ創設シ之ヲ經營スルコト
 二 全國ニ渉リ施藥救療ノ普及ヲ計ルコト
第四條 本會ノ事業施行ニ付テハ年度ノ初豫メ主務大臣ノ認可ヲ受クルモノトス
第五條 本會ノ事業施行ニ付テ必要ナル事項ハ當該行政廳ニ之ヲ委囑スルコトヲ得
   第三章 事務所
第六條 本會ハ事務所ヲ東京市麹町區大手町一丁目無番地ニ置ク但評議員会ノ議決ヲ經テ之ヲ變更スルコトアルヘシ
   第四章 資産及會員
   第五章 總裁、會長、副會長及顧問
   第六章 役員
   第七章 評議員會
   第八章 補則
   第九章 附則

  桂總理大臣演述要綱  五月九日
 
  内務大臣演述要領   五月九日總理大臣官邸ニ於テ

〔蔵書目録注〕
  上の趣意書、規則書、総理大臣・内務大臣演述要領の四つは、県知事より個人に寄付依頼文と共に、まとめて明治四十四年七月二十一日付で発送されたものである。なお、この人物は三百円寄付したようで、同年九月ニ十二日付で東京の済生会から会長の桂太郎名義の礼状が送られている。



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