昨日、大腸内視鏡検査を受けました。胃の内視鏡は何回か受けたことがありますが、大腸は初めてです。検査前日から1日量750Calの食事制限を受け、当日は腸内洗浄液を2L飲んだだけの絶食状態で臨みました。
さあ、検査が始まりました。まず先端から空気を注入するらしく異物が腹の中を動き回る感覚です。「もう、虫垂付近の上行結腸まで行っているんですか?」と訊くと、まだカメラを入れたばかりという答え。そのうち腹の中でエイリアンが暴れる感じで、手で押さえるように言われました。期待通りの抑え方ではなかったようで、看護士が見かねて手を添えてくれました。
見たいとは思わなかったのに腸内の映像を見せられました。ポリープが2つ、それとアザのような周りの粘膜とは色の異なる部分もあると告げられました。しかも医者がそのアザのようなものは「初めて見た」というのです。これは患者にいらぬ不安を与えかねないので、臨床医としては失格だと思ってしまいました。ポリープの切除は入院が必要なので改めて行うということになり、検査だけで終了しました。
検査が済んだ後、アルコール依存症患者の集まる自助グループAAの例会に電車で向かいました。自助グループでは、出席した患者一人ひとりが自らの体験談を語り、周りにいるその他の人は黙ってそれを聞くだけというものです。まさに話しっぱなし・聞きっぱなしです。AAでは毎回テーマが出され、座長から指名された発表者がそのテーマについて思いつくまま酒にまつわる体験を語ります。
今回のテーマは「どうやれば、(断酒が)うまくいくのか?」でした。発表者の多くは皆、再飲酒に繋がりかねない “空白の時間” を作らないように例会に出続けるという類のものでした。誰もが時間をうまくコントロールすることに苦労しているのです。「そんなことは当たり前で、より新しい、何か画期的なことはないのか?」と私には白々しく聞こえてきました。「こんな程度なら、ひょっとして独力でも断酒が続けられるかもしれない・・・」と高慢ちきで不遜な考え(自信過剰)がよぎりました。気持ちが何故かハイテンションになっていたのです。
AAからの帰り道、一時的に胸がひどくザワザワした不吉で不穏な感覚に襲われました。断酒後に度々襲って来る、酒を飲まずにはいられないような一過性の情緒不安定な心理状態です。
帰宅してからネットでアルコール依存症に関するサイトを検索しているうちに、「ドライドランク」というのを見つけました。ドライドランクというのは、酒を飲んではいないが、まるで酒を飲んだ時のような状態にあることを言います。再飲酒の危険性が非常に高い状態です。サイトでは以下のように説明していました。
・酒に対する無力という基礎が薄れている。断酒に関する自信が増大する
(自信過剰)
・自助グループの仲間の体験談が、白々しく感じられて来る
・自我が肥大(何かとお節介をしたがること)
・万能感
・コントロール欲求の強まり
・他罰的な心のあり方
・自己憐憫と恐れ
・飲んでいた時の郷愁が蘇ったり高まったりする
(ノンアルコールのビールなどを飲み始める など)
・無意識の「飲酒欲求」をマスキングしている抑うつ状態など
まさしく自分の置かれている状態です。ドライドランク状態に陥りかけていたのか、完全に陥っていたのかはわかりません。その最中には全く自覚ナシなので始末が悪いのです。肝を冷やしました。
前日から大腸内視鏡検査に気持ちが囚われ、強いストレスを受け続けてきていたのだと思いました。検査が終わり、ひとまず酷いストレスから解放されたのが原因だと思います。ハシャギ過ぎ、ハイテンションになった時は危ない。実感しました。
***********************************************************************************
ここにご紹介したのは断酒11ヵ月目に入った頃のことです。ドライドランクは断酒を始めた後に大分遅れて現れる最も特徴的な遅発性の離脱症状(急性離脱後症候群:PAWS)です。この時には飲酒欲求に似た、不穏でどこにも遣り場のない感覚:一過性の情緒不安定にも襲われました。
振り返ってみると、断酒5~6ヵ月後ぐらいから妙に気分が高揚し、会話の際に無意識に駄洒落を飛ばしてみたり、ちょっとしたことにでも滑稽味を感じて笑い転げていたことがありました。実感としてあったのは、頭の回転が別人と思うほど速く、口が驚くほど達者になっていたことが特徴的でした。
もちろん気分の高揚には波の強弱があり、上に述べたエピソードは強い方のケースだったと思います。強いエピソードの多くは自信過剰と万能感だったでしょうか、自己憐憫などは一度もありませんでした。
このブログを始めて間もなく、長く苦しめられてきた性的妄想や、脳に薄物のヴェールを被っていたような感覚から解放されました。さらに上のエピソードが転機となって、ドライドランクというものが十分理解できるようになり、再び見舞われても即座に落ち着いて対処できるようになりました。回復期の遅発性の離脱症状は、それから脱した後になって初めて自覚できるもののようです。
次の記事も併せてご参照ください。
「断酒中のドライドランクを自己診断できますか?」
「再びアルコール急性離脱後症候群(PAWS)について(上)」
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
↓ ↓
どうか健康を取り戻される日の訪れますことを祈ります。