ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

“底着き” は2度ある ― 再び “精神的底着き” について

2016-09-16 09:36:41 | 病状
 私自身「“底着き” は2度ある」などと聞いたことはありませんでした。もし、“底着き” を何度も経験したとでも言おうものなら、それは真の “底着き” を経験していない者の戯言で、よくある思い込みや勘違いと見做されるのが落ちです。

 にもかかわらず私は、断酒を継続して10ヵ月後のちょうど今頃、2度目の “底着き” を経験したと公言して憚りません。“精神的底着き” と呼ぶことにしており、断酒開始前後に経験した “身体的底着き” に続き2度目の “底着き” になります。断酒と向き合う上でこれが転機となり、以後、断酒にばかり囚われていた心境から脱して “酒を飲まないでいる方が自然(普通)で楽” と思えるようになりました。この経験を断酒歴1年未満の方々と是非共有したいと思い、今回再びテーマに取り上げることにしました。

 2年前のちょうど今頃、私には画期的な出来事が3つありました。ひとつはこのブログに投稿し始めたこと。二つ目は “キツーイ” ドライドランクに見舞われ、すぐにネットで調べてその詳細を知ることができたこと。もう一つは、俗に言われる “憑きモノが落ちた” とも言うべき経験をし、それが言語化の成果だと知ったことです。

 ブログの開設は、後の二つがキッカケだったと思います。その一つドライドランクですが、症状を現場で即座に自覚できたのは初めてのことでした。それだけに印象が強烈で酷く動揺しました。忘れない内にとすぐさま記事にまとめ、このブログに投稿したほどです。ネットで調べた特徴から、それまでに幾度となく経験していたことにも気づきました。

 一方の “憑きモノが落ちた” 体験については、日にちが特定できないものの2年前のこの時期のことに間違いありません。主治医に言語化の成果と教わったことでひとまず安心してしまい、アルコール依存症から回復するのに有効とされる言語化の方にばかり意識が向かってしまいました。

 納得がいく説明がつくと、すぐ安心してしまうのは私の習性です。日が経つにつれ、この体験が重大な意義を持つことに気づかされ、“底着き” の一つに間違いないと結論づけるに至りました。こうなるまで1年ほどの時間を要しました。

 繰り返しになりますが、当初、私の関心事は言語化でした。言葉で気持ちを表現することによって悩みを解消することを言語化と言い、書くことが最も効果的だと教えてくれたのは主治医でした。言語化が回復への認知行動療法の一つということも知りました。すべて “憑きモノが落ちた” 体験を相談したお蔭です。以来、認知行動療法の実践と酒害体験の記録を兼ねて、自分史『アルコール依存症へ辿った道筋』の執筆に取り掛かることになりました。誤魔化しが一切効かない自分自身との対話が始まりました。

 一連の叙述作業のお蔭で、さまざまな新しい経験を積むことができました。それらの内、主なものをいくつか挙げてみます。


 (1)なぜアルコール依存症になったのか、その経緯と要因を詳らかにする
    ことができました。
 (2)まるで傍から自分自身を客観的に見ているかのように、自分の気持ち
   (感情)の変化がリアルタイムで自覚できるようになりました。(変
    化を自覚するだけで結果的に感情の自制が可能となります)
 (3)想起障害のために頭(考え)が混乱する思考プロセス障害を身を以て
    体験してしまいました。(あまり知られていませんが、これらは断
    酒後に経験する遅発性の急性離脱後症候群:PAWSと呼ばれているも
    ので、ドライドランクとほぼ同義です)
 (4)脳機能の回復プロセスを想像しては、自分なりの仮説を立てて知的楽
    しみと安心を得ることができました。


 “精神的底着き” と言うほどの過酷な経験はなかったにしても、相当の長期間断酒を継続できた後、初めてアルコールが完全に抜けた実感があったと話してくれた人がいます。“精神的底着き” の有無にかかわらず、断酒を継続できていると誰にも必ず画期的な心境の変化が訪れるようです。繰り返しになりますが、
“酒を飲まないでいる方が自然(普通)で楽” と思える心境の変化のことです。要は、それが早いか遅いかの違いだけです。“精神的底着き” を経験する方が早く変化が訪れるだけの話だと考えています。

 ここで話を男性に限定すると、アルコール依存症となったからには、他にもギャンブル依存とかセックス依存とかにクロスアディクション(cross‐addiction:多重嗜癖)を持っている可能性が高いと思います。私自身がそうだったからと言うわけではありませんが、アルコールは自身の持つ嗜癖への衝動を増幅させる作用があり、断酒しても相当長期間にわたって残存するようです。つまり、酒を断っても賭け事や性的なものへの病的衝動は依然として残っており、その上に断酒に囚われた強迫観念が却って強いストレスとなって、一層衝動が煽られる懸念があるのです。特に、断酒1年未満が危険だと考えています。

 回復のプロセスからみると、断酒1年未満の方は移行期にあり、一過性のドライドランクを初めとした情動不安定な時期にあります。これにめげてはいけません。むしろ、本格的な回復段階に入った証と考えた方がよいのです。「~し(で)なければならない」という強迫的心理状態に囚われたままの方には、是非私の経験を参考にしていただき、もう暫くの間辛抱してもらいたいと願っています。


参考のため、当時の模様を綴った記事の抜粋をお示しします。是非ご参照ください。
この記事では【アルコール依存症の回復プロセスと心構え】についても触れています。
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“身体的底着き” の後から “精神的底着き” も・・・(下)

(前略) どうにもならない状況だったので、しばらくして仕方なしに始めたのがAV動画作品の品定めでした。しかも場面展開ごと要点をすべて書き出した上での批評でした。
・・・(中略)・・・ 半ばヤケクソで始めた行動でしたが・・・、20本以上の作品に試みたころ、驚くべき心境の変化が訪れました。エロティックとか、卑猥とか、性的興奮が刺激される感覚がすっかり消え失せ、単にヒトの生物学的生殖行為、つまり交尾の客観的映像記録としか見えなくなったのです。
 さらに驚くべきことは、長年溜まりに溜まったモヤモヤしたものが消えてなくなり、平穏な心理状態になれました。同時に、真綿のような薄物のヴェールで長年脳が覆われていた感覚も消えました。正確を期すると、いつもと違う感じがしたので、
「そう言えばちょと前まで、ずっとシビレのような変な感覚があったなぁ~」と初めて気付いたのです。“憑きモノが落ちた” とはこのことかと思いました。何とも摩訶不思議で神秘的とも言える体験でした。継続断酒を始めて10ヵ月後のことでした。
 この出来事があってからというもの、アルコール依存症の回復は一体何が目安となるのか、回復するまで他にどんな離脱症状を覚悟しておくべきかに関心が向くようになりました。一時的に、早くも回復したのかと錯覚したほどだったのです。断酒に囚われてばかりの状態から明らかに闘病意識が変化し始めていました。医師の診察を受ける都度、手を変え品を変え何を目安に回復と診断するのか質問攻めにしたものです。
 意識の変化と一体のものかもしれませんが、この体験が転機となって、まるで傍から自分自身を客観的に見ているかのように、気持ち(感情)の変化がリアルタイムで自覚できるようにもなりました。たったこれだけのことで結果的に感情を自制できてしまうのが不思議です。ドライドランクを初めとした急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)をはっきり自覚するようになったのはこの時期からでした。“正気に戻る” とはこんなことかもしれません。
・・・(中略)・・・
 「AV動画など性的なものに全く興味がなくなってしまった」と主治医に相談したところ、一言「年齢(とし)のせいで、老いて枯れたんじゃないの!?」と冗談半分に言われてしまいました。そこで、“憑きモノが落ちた” と実感するに至った経緯を詳しく話すと、恐らく “言語化” の効用だろうと説明してくれました。叙述作業に集中したことで、前頭葉の機能がフル回転し活性化した結果だということです。

                                続きを含め全部見る
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次の記事も併せてご参照ください。
どうにもならない “生きづらさ” って?
“身体的底着き” の後から “精神的底着き” も・・・(上)


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