ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

ヒゲジイのPAWSによる悪文見本市(その6)

2016-05-27 08:31:04 | 悪文見本市
 アルコールの急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS≒ドライドランク)は、断酒を始めて3~6ヵ月で自覚するようになると言われています。

 前回(5月20日付)の記事では、その症状の一つ “思考プロセス障害” の、脳内で繰り広げられる様々な葛藤と混乱について述べてみました。今回はその具体的な現れと思われる悪文事例を久々にご紹介します。いずれも集中力に欠け、脳がストライキを起す寸前の状態で書いたものと思われます。

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 今回は事例を2つ取り上げました。いずれも昨年6月26日に投稿した「アルコール依存症へ辿った道筋(その34)サラリーマン人生の終着駅」からのものです。どちらも記事の後半部分に当ります。

【事例32】

「あのとき教育しておいてくれたなら、と今でも思うことがあります。当局が比較試験を重視する理由(情報公開という政治的意味合いも含まれていること)。対照群を設定するときの諸々の留意点(一発勝負もアリ)。盲検化の方法(薬剤の盲検化一つだけが採りうる手段はではないこと)。この3点だけではきかないのですが、当時は会社として臨床開発の経験が乏しい(承認取得6成分)ことを考えると仕方ないことかもしれません。」
         
「あのとき教育しておいてくれたなら、と今でも思うことがあります。ここでは重要なポイントを3つ挙げておきます。いずれも臨床開発に欠かせないノウ・ハウで、これらがなかったばかりに悔やんでも悔やみきれない思いが強いのです。
 ● 当局が比較試験を重視する理由
   優劣は比べれば誰の目にも一目瞭然。情報公開が必須という政治的
   意味合いも含まれていること。
 ● 対照薬を選定するときの諸々の留意点
   申請後の審査過程でも通用する対照薬を選定すること。薬効を実証
   する目的での対照薬か? それとも特長を引き出す目的での対照薬
   か? 審査過程で拗れた問題への回答には、イチかバチかの一発勝
   負なので、道ならぬケモノ道に賭ける対照薬選定もアリ。常識に囚
   われてはダメ。
 ● 盲検化の方法
   外観に施す常識的な “薬剤の盲検化” ばかりでなく、データの測
   定 ― 解析段階で行う “データの盲検化・匿名化” もあり得る
   こと。
 この3点だけではきかないのですが、当時は会社として承認取得が6成分だけと、臨床開発の経験が乏しかったことを考えると仕方がないことかもしれません。」


 読み手の第一印象は、「何のコッチャ!? さっぱり分からん!」だったと思います。下線部だけを見ても、忘れないようにと書き残した雑な私的メモ同然です。頭に浮かんで来たものを、思い付いた順に、そのまま書き散らかしたとしか思えません。説明不足を後から気付き、それらを( )内で補足して済ますなどはガサツすぎます。集中力に欠け、読んでもらおうという丁寧さがちっとも感じられません。

 “対照群を設定” という言葉も不用意な使い方です。本来は対照薬とすべきところですが、“対照” という言葉だけに気を奪われ、その後の注意(力)が途切れたのだと思われます。対照群は試験デザインを論ずる場合の用語ですから、群ならば “設定” というふうに、自動的に言葉が決まったのでしょう。正しく “対照薬” と改めると、“選定” という言葉になり、( )内の「一発勝負もアリ」の意図と合致します。両者とも “セ” という音で始まりますから、「もうこれで良し」としたのだと思います。


【事例33】
「健康面ではアルコール依存症ばかりでなく49歳で “死の四重奏” まで抱え込むことになりました。52歳でサラリーマン人生の終着駅にも早々と着いてしまい、図らずも窓際族としての余生しか残っていないように思えました。老後に対する展望にしても明るさは一向に見えません。これらのどれをとっても執行猶予付きながら死刑を宣告されたも同然と将来を悲観的にしか考えられませんでした。私に課せられ、まだ宿題として残っていたものは二男の結婚、住宅ローンの完済、地元での墓地の取得ぐらいで、他には何も思い付きませんでした。現在から見ても当時は暗澹たる状況だったことに違いないのですが、ここまで落ち込んだのはアルコール性鬱が進行していて加勢したのだと思わずにはいられません。」
         
「 以上のように、健康面ではアルコール依存症ばかりか、49歳で “死の四重奏” まで抱え込むことになりました。その後会社勤めでは、Ca拮抗薬Pの承認申請取下げや、昇進・昇給の道が閉ざされ、52歳にして早くもサラリーマン人生の終着駅に到着してしまいました。
 会社では、最早窓際族としての余生しか残っていないように思えました。これらのどれをとっても将来は悲観的で、老後の明るい展望など一向に見えませんでした。まさしく執行猶予付き死刑宣告を受けたも同然でした。
 辛うじて私に課せられ、まだ宿題として残っていた問題は、二男の結婚、住宅ローンの完済、地元での墓地の取得ぐらいで、他には何も思い付きませんでした。
 現在から見ても、当時は暗澹たる状況だったことに違いないのですが、ここまで落ち込んだのはアルコール性うつ症状が進行し、加勢していたのだと思わずにはいられません。」


 この段落でも、説明不足が目につきます。既に上段で説明済みとは言え、いきなり「サラリーマン人生の終着駅に早々と着いて・・・」はアンマリです。なぜ終着駅と考えるのか、まずその根拠を具体的に述べるべきだと考えました。

 この記事は、夢も希望も断たれた人生がテーマです。この段落では、“死の四重奏”、“サラリーマン人生の終着駅”、“窓際族の余生”、“老後の展望なし”、“執行猶予付き死刑宣告”、“将来を悲観”、この順で言葉が登場しています。これらの言葉の間には因果関係があるとみる方が自然ですが、述べたい言葉がランダムに飛び交い、整理がつかなかったのです。

 因果関係の中で原因に当るのは、“死の四重奏” と、“サラリーマン人生の終着駅” = “窓際族の余生” となります。その帰結は、“将来を悲観” して、“老後の展望なし” に行き着き、だからこそ “執行猶予付き死刑宣告” に思えたハズなのです。そのような順に整理し、記述を改めました。

 過去形で記述すべきなのか、それとも現在形で記述すべきなのか、文脈上時制に迷った節も見受けられます。回りくどい表現もみられます。「老後に対する展望にしても明るさは・・・」は「老後の明るい展望」で十分です。

 このように“思考プロセス障害” で頭が混沌として来ると、どうしても混乱したままうまく始末を付けられなくなることが往々にしてあるのです。

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 今回取り上げた事例は、投稿してから3週間後に一度見直しをしていました。もちろん、初回の投稿時にも推敲していたはずなのですが、いずれの点検でも読み手としての醒めた目が不足していたようです。記事の後半部分になるにつれ、集中力が薄れているのも読み取れます。間違いなく “思考プロセス障害” の脳の為せる業と納得できました。これからも折を見ては、“悪文”の見直し事例をご紹介するつもりです。ご期待ください。



こちらもご参照ください。
アルコール依存症へ辿った道筋(その34)サラリーマン人生の終着駅


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