ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

再びアルコール急性離脱後症候群(PAWS)について(上)

2016-02-12 17:35:54 | PAWS
急性離脱後症候群
 症状は、断酒開始後3~6ヵ月目で最も強くなり、6ヵ月~2年で回復する。
  ○ 思考プロセス障害(脳の働きにムラがある;頑なで諄(くど)い
    思考、因果関係を理解できない)
  ○ 情動障害(情動の揺れ)
  ○ 記憶障害(短期記憶の障害)
  ○ 睡眠障害
  ○ 身体的協働性に問題
  ○ ストレス感受性に変化

                  (アルコール依存症専門クリニック教育資料より)

 以前にも取り上げたことがある急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)です。

 ウイキペディアで調べてみると、遷延性離脱症候群(protracted withdrawal syndrome)とか離脱後離脱症候群(post-withdrawal withdrawal syndrome)とも呼ばれ、アルコールばかりでなく、ジアゼパムなどのベンゾジアゼピン系精神安定薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を含む抗うつ薬、アヘンなどのオピオイド類の離脱(使用中止)でもみられるもののようです。

 概して不安、興奮、易刺激性(すぐにイライラ)、抑うつなどの精神的症状が、身体症状よりも顕著であるとされています。

 アルコール依存症のPAWSは、断酒後、急性期の離脱症状を経て身体的な健康を取り戻した頃に、上記のような障害を伴って襲ってくる症候群のことです。個人的には上記の直訳よりも “遅発性離脱症候群” の方が実態に即したピッタリな病名ではないかと考えています。

 実際、上記障害の症状は個々に現れて来るというよりも、波状的に強弱を繰り返し、ほぼ同時並行して現れるもののようです。しかも、各症状が一様に持続するわけではなく、ピークの状態であればあるほど異常と自覚しないまま過ごしていることが多いと思います。

 ずっと後になって気付くことが多いので、医師に相談せずに済ましている患者が少なくないのでは(?)と私は睨んでいます。こうしたことから、再飲酒して再発と認定された症例のみに注目が集まり、再飲酒に至っていない症例のPAWSについては等閑視されているのかもしれません。


 今、「再飲酒して(依存症が)再発・・・」と書いてしまいましたが、ドライドランクとも言われている情動障害が断酒継続中に認められた場合、通院中の専門クリニックでは病気の再発と捉えているようです(ご参考まで)。

 断酒歴が2年3ヵ月となった私は、このPAWSを一通り経験したと思っています。結論から先に言うと、PAWSでは各障害が複合的に絡み合って、再飲酒しやすくなる危険性が極めて高いと思います。

 そこで、PAWSについて再び取り上げてみようと思い立ちました。お復習いのため、今までこのブログで述べてきたものを整理してみます。

 まず、1番目の “思考プロセス障害” ですが、以前も述べたように記憶障害や想起障害と深く結びついた障害ではないかと考えています。いざ文章を書こうとする際、似たような言葉や文案が飛び交って頭が混乱し、なかなか考えがまとまらないという障害だからです。(「PAWS(急性離脱後症候群) ― 断酒してボケが始まった?」)その具体的事例についても、PAWSによる悪文見本市として連載記事にしております。

 2番目の “情動障害”(情動の揺れ)とは、所謂ドライドランク(状態)のことと理解しています。ドライドランク(状態)については、今まで何回か繰り返し述べて来ています。ドライドランクという言葉通り、素面でいながら、あたかも酒に酔ったときと同じ気分なのだと思い知らされました。今ではこれが、再飲酒へと誘惑される最も危険な状態だと考えています。具体的には次のようなことでしょうか。

 会話中は妙に浮かれてハシャギ過ぎの傾向になりますし、他人の断酒にもお節介を焼きたくなります。一人静かにしているとき、明鏡止水とでも表現すべき穏やかな気分にもなります。この穏やかな気分になれたことで、妙に(なぜか)回復できたと自信過剰になりやすいのです。これが見かけ上の回復と言われている所以のようです。

 他方、自分の思い通りにコトが運ばないと、気持ちが空回りしたり、胸がザワザワして不吉で不穏な気分に襲われたりもします。要は、飲酒時代にどんな心の動き方をしていたのか、それをまざまざと教えてくれるのがドライドランク(状態)なのだと納得させられました。

 3番目の “記憶障害” については、断酒後の誰にでも必発する障害です。想起障害をも伴うためか、大事なことほど後になってから “気づく” ことが多いようです。価値判断が鈍くなることにもどうやら関係ありそうだと考えています。これについては、今までも散々、悩ましい具体的な事例を上げて述べてきています。(「あなたは “脳組”? それとも “肝組”? (下)」ほか)

 4番目の “睡眠障害” については、頻回の中途覚醒が主でした。断酒10ヵ月後には中途覚醒が1日1回までとなり、現在はほぼ解消しています。また、5番目の “身体的協働性に問題” については、別稿で改めて述べてみようと考えています。

 次回の投稿では、6番目の “ストレス感受性の変化” についての具体的な事例(“情動の揺れ” を伴った実例とも言うべき典型的なエピソード)をご紹介するつもりです。

 PAWSになりやすい時期は情動が不安定のままであること、しかも肝腎の本人がそれを自覚しにくい(自覚できない)ことが最大の問題です。再飲酒した人の体験談を聴けば聞くほど、本人が気付かないまま無意識に飲んでしまったという例が少なくありません。健常人ならば些細なストレスと受け流すところを、PAWS中なら強いストレス並みに過剰に反応してしまうところがあります。感情が大きく動揺している原因が、実は些細なことだとは全く気付いていません。無意識のうちに再飲酒してしまったという事例には、このような “ストレス感受性の変化” が介在していたのではないかと考えています。

 繰り返しになりますが、急性期の離脱症状から身体的な健康を取り戻したこの時期は、ストレスにとても脆弱であり、必然的に受け止め方も偏りがちです。些細なストレスでも、とても危なっかしい反応をしやすい心の状態にあるようです。

 というのが私なりの結論です。もしも、こんな状態でありながら、どうしても仕事をしなければならないとしたら、一体どれだけストレスに耐えられるものなのか? 私には、このような状態でも「真っ当に仕事をして見せてやる」という自信がありません。年金生活者でいられる現在の身分がどんなにありがたいことか、心からそう思っています。

 断酒歴2年3ヵ月となった現在、“断酒に3年 回復に7年” この言葉の意味がやっと分かった気がしています。どうぞ、次回をお楽しみに。



PAWSについての概論はこちらをご参照ください。
 
こちらも併せてご参照ください。
あなたは “脳組”? それとも “肝組”? (下)
 

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