先輩たちのたたかい

東部労組大久保製壜支部出身
https://www.youtube.com/watch?v=0us2dlzJ5jw

1921年燎原の火のストライキ (読書メモ―)

2021年09月11日 09時19分23秒 | 1921年の労働運動

写真・1921年石川島造船所罷業記念バッチ
「失うものは鉄鎖のみ」

1921年燎原の火のストライキ (読書メモ―)

(参照)
「激動の日本労働運動」島上善五郎
「社会・労働運動大年表Ⅰ」大原社研編 労働旬報社
「日本労働運動史年表第一巻」青木虹二
「日本労働組合物語大正」大河内一男・松尾洋 
「日本労働年鑑第3集1922年版」大原社研編)

燎原の火のストライキ

1921年とは
 1921年に入って恐慌はさらに深刻となり、物価高騰、賃金の低下、失業の脅威という労働者にとって、とりわけ造船と海運関連の資本の残酷な攻撃が労働者におそいかかりました。しかし攻撃がきびしくなればなるほど今や労働者は激しく抵抗します。横浜、神戸の造船労働者を中心に労働者は立ち上がります。とりわけ戦前最大の争議、川崎・三菱両造船所の3万5千人労働者の闘いは、軍隊出動銃剣を突き付けられた弾圧にも負けず45日間にわたる長期戦となり、神戸市内は階級戦の戦場と化しました。

 足尾、大電、藤永田、川崎・三菱造船、石川島、横浜船梁などの大争議が、「組織的に且つ明瞭な闘争意識を以て行われ」、「労働運動の福音や社会主義の主張は、目覚しい勢いを以て工場に、労働者の群れに宣伝せられて行った」。また「労働者の知識欲は高まり、労働者団結思想の普及の拡大で、労働組合は少数の優越者の指導を離れ、多数者の意志の上にその基礎を置くようになります」。「協調会」や企業内組織の温情主義の正体は白日の下に曝されます。工場委員会制度設置の要求も強くなります。こうして階級対立の意識の濃度を増すにつれ、普選要求、治安警察法第17条の撤廃、労働組合法、社会保険制度に対する意識も高まります。農民小作人も全国で決起し小作争議は前年度343件の4倍の1254件と激増しました。 
 
(直接行動)
 この労働者・農民の決起と運動の高まりは「直接行動」主義ともいえる怒涛のような潮流を全国に生みだします。「直接行動」、これがこの年の労働運動の大きな特徴です。足立機械製作所(機械打ちこわし)、園池製作所(工場占領宣言)、川崎造船所(工場管理)は、象徴的出来事です。流血の惨事も頻発します。友愛会員もこの闘いの先頭に立ち、最高幹部をはじめ、200名近くの活動家が投獄され、友愛会創立以来の労資協調主義が事実上塗り替えられたのです。

(感謝状)
 この獄中にいる仲間たちに対して、10月に開催された友愛会第10回大会では、足立機械製作所泉留吉以下24名を筆頭に、園池、藤永田、香焼、夕張、川崎鉄工などで今なお投獄されている西尾末広、麻生久ら同志174名に対して、
「資本主義の根本に大斧鉞(ふえつ)を加えんとする陣営にたち、ついに牢獄につながれたる諸君のご活躍に対し、満腔の敬意を表す」との感謝状贈呈(案)動議が読み上げられ、満場割れんばかりの拍手で可決されました。

 そして第10回大会の新綱領、
「ニ、我等は断固たる勇気と有効なる戦術をもって資本家階級の抑圧、迫害に対し徹底的に闘争せんことを期す」
「三、我等は労働者階級と資本家階級とが両立すべからざることを確信す。我等は労働組合の実力をもって労働者階級の完全なる解放と自由平等の新社会の建設を期す」を採決します。友愛会当初の綱領と比較するならばまさに隔世の感です。

(感想) 
 敵の長年にわたる酷使・暴虐・差別・弾圧に労働者や民衆がついに怒りを爆発させた時、それは行き過ぎもあるだろう、乱暴狼藉も勃発するだろう。あやまちもするだろう。しかし、その時にまさに支配者や資本家と同じ地平で「ルールを守れ」とか「やりすぎだ」とか「労働組合に帰れ」とか先頭で闘い傷ついた仲間たちに向かって訳知りしたり顔で説教したり非難したり、足を引っ張るのでなく、まず私たち自身はどちらにつくのかと「民衆史的視点」(「植民地朝鮮と日本」趙景達)から評価するこのような友愛会第10回大会での「獄中の仲間への感謝状」の思想こそがいかに大切かとつくづく思います。米騒動(暴動)、炭坑暴動、3.1運動、秩父蜂起、足尾銅山鉱毒押し出し闘争、数限りない民衆暴力、・・・・そして私たちの日常の労働運動や市民運動でも絶えずぶつかるテーマです。

 この年の友愛会大会では名称も友愛会が消えて「日本労働総同盟」と変わり、鈴木文治は名誉会長に祭り上げられ、指導者の地位は帝大出身の法学士から、旋盤工出身の松岡駒吉主事に譲ることになりました。労働運動現場でもインテリの指導者から次第に現場出身の活動家とかわっていきます。 

 一方首相原敬から「労働争議はこれから仮借なく取り締まるから、資本家よ、他の工場に影響を及ぼすような譲歩はするな」と叱咤激励された資本家側は、神戸の川崎・三菱争議にみられるごとく官憲と軍隊の動員、暴力団の雇いいれなど苛烈な弾圧と圧迫を一層激しくしてきます。これに抵抗した労働者は、官憲との乱闘、格闘、検束、入獄は日常的茶飯事となります。先にあげた友愛会大会での「感謝状」贈呈すら治安警察法第9条に違反するとして鈴木会長と松岡主事が起訴され罰金刑を科される始末です。

 下の毎月の表のように当時多くの主要工場にストライキが燎原の火のように燃え上がり、頑迷頑固の資本家もやむなくある程度の譲歩を余儀なくされました。これらの争議は不況下の資本攻勢に対する労働者の生活防衛であり、解雇、賃下げ、工場閉鎖に対する要求と共に、団体交渉権と横断組合への加入の自由の要求が、特に関西で目立っています。

1921(大正10)年労働争議
(ストライキ件数と参加者数)
      1919年497件、63,137人
    1920年282件、36,371人
    1921年246件、58,225人
    1922年250件、41,503人
    1923年270件、36,259人
    1924年333件、54,526人
    1925年293件、40,742人
    1926年495件、67,234人
    1927年383件、46,672人
    1928年393件、43,337人

  1921年のストライキ件数は246件、参加した労働者は58,225人です。燎原の火のごとく燃え上がったストライキは、前年より一挙に2万2千人も増加しています。「ストライキの年」とよばれる所以です。それにしても今の日本と比べて驚くべきスト件数と参加労働者数です。

1月
 1.01 元旦午前2時三越本店・大阪支店争議全面勝利解決
 1.11 足立機械製作所(東京吾嬬町)争議、90名全員解雇でスト、工場襲撃勃発
 1.11 日本鉄工所(品川)、90名解雇に反対し、「団結権」「団交権」の承認を要求してスト。解雇手当と「労働組合の自由」だ妥結 
 1.13 函館船渠会社、400人賃上げ要求拒否されスト
 1.23 園池製作所(東京大崎)争議、120人スト工場占拠宣言(弾圧により未遂)
 1.27 橋本造船所(神戸)、140人工場閉鎖に反対し争議(解雇手当支給で妥結)
 ~2月 炭鉱機船会社(北海道)、賃金引き下げに反対して全山スト。のち会社が協定を守らないため7月14日労働者と警官が衝突

2月
 2.01~2.18 鉱夫総聯合夕張総聯合、三井系夕張炭鉱2.1から1万人スト労働者賃下反対、団交権要求。
 2.01 京都刷子工組合争議、勝利
 2.27 東亜セメント150人賃上スト
 2.27 市川紡績(山梨)百数十人が解雇され退職手当要求
 2-     大阪活動写真台詞弁士組合組織254人

3月
 3.09   時計組合幹部14人解雇で、ナプボルツ時計工場閉鎖反対で400人スト~3.23。15日デモで警官隊と乱闘9人検束
 3.21 ドイツ共産党、中部ドイツで警察軍に抵抗し武装蜂起
 3.25 日本鋳鋼会社240人スト(東京大島町)
   3.25    東洋鑪伸銅会社、160人賃下げ反対スト
 
 4月
   4.01   全英坑夫連盟スト~6月敗北
 4.02~18 全日本鉱夫総聯合会足尾聯合会、足尾銅山1700人全山スト~4.18(337人解雇)
 4.03 大阪造船労働組合発会式(友愛会地域支部を産別組合への再編成)
 4.20 足尾争議報告演説会、麻生久ら幹部批判の野次激烈
   4.11   横浜市電、747人手当要求しサボタージュ闘争からスト
 4.12 神戸消費組合設立
 4.24 社会主義婦人団体<赤瀾会>結成。山川菊栄ら
 4.25 労資協調を目的とする海洋統一協会発会(500人)
 4.25 東興業会社(福岡)、400人賃金3ヶ月不払いのためスト
 4.28 合同紡績(大阪)、150人夜業廃止による賃下げとなりスト 
 4.28 大阪電灯会社889人解雇で5.6からスト。5月9日900人が警官隊と乱闘(150人解雇)→藤永田造船所争議、住友大阪3社争議→川崎・三菱神戸造船所争議に引き継がれる
 4.28 日出紡績(姫路)、150人の朝鮮人女性労働者が、日本と朝鮮人女性労働者との間の賃金差別に怒りスト

5月
 5.01 第二回メーデー
 5.05 黒色労働会結成(友愛会城東・亀戸両支部が合同で独立組合を結成)
 5.07 日本海員組合発会式
 5.08 ノルウェー海員スト~5.26ゼネストに発展
 5.09 日本社会主義同盟第2回大会開催、直後に治安警察法により解散命令。検束者49名
 5.16 明治大学学生2千人、植原悦三郎教授の復職と学の自由を要求し示威行動~5.25全学スト
 5.21 友愛会、労働組合同盟会脱退を決議
 5.24 田中機械製作所(大阪)、200人賃下にサボタージュ闘争
 5.28 藤永田造船所(大阪)1200人~6.8スト

6月
 6.01 村尾造船所(大阪)、100人団体交渉権、賃上げ、8時間制要求(妥結)
 6.06 増田伸銅所(大阪)、300人8時間制、賃上げ、団交権の承認でサボタージュ闘争(妥結)
 6.06 相沢造船所(大阪)、300人藤永田造船所争議に同情、8時間制、賃上げでサボタージュ闘争とスト(妥結)
 6.06 小野造船所(大阪)、500人藤永田造船所争議に同情、8時間制、賃上げでサボタージュ闘争、7.3スト突入(妥結)
 6.08 山中精練所(大阪)、200人団交権の承認、賃上など要求(妥結)
 6.08 藤永田造船所(大阪)、2884人争議再発、スト。19日警官隊と衝突(妥結)
 6.11 大阪機械労働組合発会式
 6.13 福岡県4ヵ村小作1千名不耕作同盟結成
 6.13 住友電線・住友鋳鋼・住友伸銅の3社(大阪)、2千人、団交権要求などで共同闘争スト~6.30
 6.17 神戸桟橋会社造船部800人、藤永田造船所争議に同情、8時間制、賃上げでサボタージュ闘争
 6.20 大阪書籍(大阪)国定教科書専門工場印刷工、230人残業代増額、定昇、一時金、皆勤手当て要求(勝利)
 6.22 内田造船所(横浜)500人(妥結)
 6.25 東京砲兵工廠熱田製造所で向上会員300人争議(妥結)
 6.28 三菱造船所(長崎)、400人サボタージュ闘争
 6.29 伊藤製銅所(大阪)、190人団交権の確認、賃上、解雇手当、定昇の実施等を要求し、30日サボタージュ闘争。7月10日100人が工場襲撃、21日支援もいれた300人が寄宿舎おそい破壊(妥結)
 6.29 三菱内燃(神戸)団交権、賃上げ求め200人、サボタージュ闘争、スト(不貫徹)

7月
 7.02 川崎造船所、組合加入の自由を求めて争議始まる
   7.03   プロフィンテルン創立大会(コミンテルンの下で赤色労働組合インター、41か国1700万人)  
   7.05 友愛会東京聯合会大会、急進派の台頭で対立激化~7.7棚橋小虎辞任
 7.05 久保田鉄工所高岸・恩貴島工場(大阪)、700人尼崎工場と提携し横断工場委員会制度の実施、賃上などでサボタージュ闘争
 7.05 久保田鉄工所尼崎工場(大阪)、500人工場委員会制度の導入要求サボタージュ闘争。21日百数十名解雇(妥結)
 7.05 三菱神戸造船所に争議波及
 7.06 古河鉱業目尾炭坑、1100人賃下反対でサボタージュ闘争
 7.08 川崎・三菱労働争議団結成参加3万余人~大デモ、工場管理宣言、資本はロックアウト、7.29幹部検挙、8.9敗北就業
 7.08 三菱電機(神戸)、1200人三菱造船所の争議に呼応してスト
 7.13 神戸製鋼所(神戸)、2020人団体交渉権の確認でサボタージュ闘争
 7.14 ダンロップゴム会社(神戸)、2000人工場委員会制度、解雇手当など要求サボタージュ闘争(妥結)
 7.19 大日本紡績大和田工場(大阪)、200人賃上要求(160人解雇敗北)
 7.23    中国共産党創立大会(陳独秀、毛沢東ら13名上海)
 7.24 大日本木管会社(兵庫)、200人工場委員会制の要求
 7.24 石川島造船所労働者、機械技工組合から独立し造機船工組合結成
 7.28 東京砲兵工廠麦稈工場、1000人工場閉鎖で騒動

8月
 8.13 東洋紡西成工場、741人賃上要求~8.15スト(22人解雇、敗北)
 8.16 大阪毛織会社、700人賃上スト(12%の賃上勝ち取り妥結)
 8.20 自由法曹団結成
 8.22 山十組製糸(福岡)、890人賃上スト(妥結)
 8.31 横浜造船工組合結成
 8― 日本労働聯盟発足(小石川労働会の一部・工友会・芝浦枝友会などが連合)
 8-  岡山県藤田農場争議~27年まで続いた

9月
 9.01 大阪機械工作所(西成)600人、解雇者9名の復職求めスト(妥結)
 9.07 片倉製糸(下伊那郡)416人女工、スト
 9.10 酒樽工(西宮)、250人定休日、賃上等要求スト。西宮で最初のデモ
 9.14 木場人夫(和歌山新宮町)400人、スト
 9.15 空知炭田歌志、500人16日スト
 9.16 大分紡績会社、2500人手当要求
 9.16 日本労働学校設立
 9.22 横浜造船工組合加盟の横浜港労働者賃上争議~9.27からスト(勝利)
 9.26 朝鮮、釜山埠頭労働者約5千人賃上スト~10.1
 9.27 東京ガス大森工場、1500人夜間・戦時手当廃止反対スト
 9.28 浅野造船所2900人賃上など争議拡大、工場委員会制度要求サボタージュ闘争(妥結)
 9.29 横浜工作所争議200人賃上スト(4割値上げで妥結勝利)
   9.29   日本製紙(東京)、解雇反対でサボタージュ闘争からスト、要求拒絶され暴行(妥結)
 9.30 禅馬鉄工所(横浜)、ストライキ
 
10月
 10.01 友愛会創立第10年記念大会
 10.05 愛知時計(名古屋)1千人争議~10.12スト(3割5分値上げ勝取妥結)
 10.12 石川島造船所本工場と分工場労働者の共同闘争スト18日、22日と警官隊と衝突(工場閉鎖・弾圧で敗北)
 10.12 日本鋳造鶴見工場(神奈川)230人、賃上サボタージュ闘争から14日スト(妥結)
   10.12   暁民共産党事件
 10.17 賀川豊彦・杉山元治郎、日本農民組合設立で協議
 10.19 東京砲兵工廠1万人、工場委員会制度・賃上を要求し官邸に押しかけ23日警官隊と衝突(敗北)
 10.23 総同盟大阪聯合会大会、スト統制をめぐり論戦
 10.27 浅原健三ら、西部炭坑夫組合結成
 10.28 廻米問屋(深川)、1000人賃上スト
 10.31 三重県被差別小作人小作料減を要求し示威行動(3割5分減で勝利妥結)

11月
 11.01 信濃自由大学開講
 11.01 横浜の三井・古河・関東運輸など浮船人夫1000人賃上要求
 11.04 原敬首相、東京駅で中岡良一に刺殺される
 11.05 群馬県強戸村小作人組合結成(9支部520人)
 11.09 愛知県東春日井郡小牧町小作人500人地主宅を包囲、小作料減要求獲得
 11.17 芝浦労働組合結成(芝浦製作所労働者、東京電機、機械鉄工組合芝浦支部、芝浦枝友会など統合した企業内組合)
 11.20 本芝労働組合結成(池貝鉄工所、東京電機、機械鉄工組合本芝支部・大日本機械技工組合本芝支部を統合した企業内組合)
 11.22 浦賀船渠会社(神奈川)、266人解雇され争議
 11.23 堀川鉱業所宇美炭坑(静岡)、200人スト
 11.28 露西亜飢餓同情労働会組織
 11- 大阪府津田村小作争議(600人)府下初の日農支部となる
 11.20 暁民共産党事件(軍隊への反戦ビラ配布で検挙、壊滅)

12月
 12.07 横浜自由労働組合結成
 12.10 大阪砲兵工廠1000人、賃上サボタージュ闘争
 12.11 官業労働総同盟臨時大会(軍縮に伴う失業問題を協議)
 12.13 総同盟、関東労働組合同盟会結成を決定
 12.13 日本織布会社(愛媛宇和島市)、400人解雇反対でサボタージュ闘争
 12.15 総同盟野田支部発会式(千葉県野田の醸造工・製樽工の組合)
 12.15 軍縮・失業対策の労働組合大会(総同盟と労働組合同盟会共催)
 12.18 コミンテルン統一戦線戦術方針<大衆の中へ>
 12.27 古河炭坑(福島)、300人飯場から脱し会社直営と賃上げ要求



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