先輩たちのたたかい

東部労組大久保製壜支部出身
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総同盟の分裂まとめ(その四) 総同盟右派の「団体協約」運動(読書メモ)

2024年01月15日 07時00分00秒 | 1927年の労働運動

総同盟の分裂まとめ(その四) 総同盟右派の「団体協約」運動(読書メモ)
参照「協調会史料」

 総同盟の分裂後、資本と官憲は左派・右派、評議会・総同盟双方問わずストライキや大争議に激しい弾圧を加えた。弾圧を受けた総同盟右派幹部は労働者のストライキを押さえた。しかし、現場の一般労働者は総同盟、評議会とも果敢に闘いを続けていた。総同盟本部右派幹部は以前からストや労働争議に替わる政策として「現実主義的」「改良主義的」な手段を強固に建てようとした。その一つに「団体協約」運動による「上からの組織化」と「職場から左派の排除」があった。

(総同盟の「団体協約」運動)
 総同盟右派は1924年ごろから「団体協約」運動を強力に呼びかけ進めていた。 
①岡部電機製作所と総同盟・東京鉄工組合(1924年)
②大阪の川北電気製作所と純向上会(1924年)
③東京製綱株式会社と総同盟関東労働同盟会会長松岡駒吉(1926年)

 総同盟と会社との団体協約の中身
  一 従業員は総同盟組合員たること
  一 会社は総同盟組合を公認し、団体交渉権を認めること
  一 労資双方とも、いっさいの労働条件の改善に関しては、一般製鋼産業の条件を十分に考慮すること
  一 組合は不良組合員にたいしてその責任を負うこと
  一 会社はできうるかぎり従業員を優遇し、組合は作業能率の増進に努力すること

(上からの組織化、東京製綱株式会社の例)
 友愛会発足以来、鈴木文治会長が、まず会社と接触し社長らを説得して職場に組合を作る、このような「上からの組織化」の方法は友愛会・総同盟のもともとの伝統的手法であったが、今回の「団体協約」はそれをもっと強力に、いわば会社の力で強制的に労働者を総同盟組合に加盟させることができ、かつ評議会や組合同盟など反総同盟の組合員は組合が除名すれば自動的に会社が団体協約に基づき、その労働者をクビにして職場から排除することができるのが、この団体協約運動であった。
 1926年2月、全国に工場を持ち労働者2,300人の製鋼製造大手の東京製綱株式会社で争議が起き、会社と総同盟関東労働同盟会会長松岡駒吉との間に上の団体協約が結ばれるや総同盟はただちに全国の東京製綱の工場(東京深川、川崎、横浜、神戸、小倉)労働者の組織化にまい進した。東京製綱の各工場に次々と総同盟組合支部が結成され組織化は順調に進んだが、小倉工場で大騒動が持ち上がった。

(反総同盟労働者の排除)
 東京製綱小倉工場では労働者280名は総同盟に加入した。しかし小倉工場には、以前から評議会・九州鉄工組合の組合員と無産青年同盟の会員がいた。これら220名は総同盟加入を拒否した。220名は会社に15項目の待遇改善要求を提出し、1926年4月1日、争議団を結成しストに突入した。しかし、会社は「団体協約」により、争議団を一切相手にせず、要求をすべてはね付け、争議団に対して熾烈な攻撃と弾圧を続けた。争議団から脱落者が続出し、最後には50余名が解雇されストライキは全面敗北した。総同盟と会社が一体となり、上から組織するだけでなく、闘う労働者を根こそぎ排除することで東京製綱は総同盟がすべて制覇した。

(岡部電機製作所「団体協約」の場合)
 1924年4月総同盟右派は、「岡部電機製作所」のストライキでも<労働者は総同盟鉄工組合に所属し、組合を脱会もしくは除名された時は、会社はただちにこの労働者を解雇する>という団体協約を会社と結んでいる。会社と総同盟が結託して労働者を支配するための団体協約であった。

(1927年岡部電機製作所の東京鉄工組合8人を除名)
 1927年3月、総同盟東京鉄工組合は岡部電機製作所の東京鉄工組合大崎第六支部の支部委員長ら組合員8名を除名にした。岡部製作所は団体協約に基づき8人を即座に解雇、職場から放逐した。8名は総同盟第二次分裂でうまれた組合同盟系の「日労党」支持の組合員であり、先に第六支部総会で支部の総同盟からの脱退と新組合結成を決議していた。総同盟東京鉄工組合は「組合の統制を乱す労働階級の裏切者」との理由で、除名と解雇は当然の事だと声明をだした。

(総同盟の「締付工場の特権」) 
 この団体協約に基づく東京製綱や岡部電機製作所のような工場を、総同盟は自ら「(総同盟の)締付工場の特権」と呼んで組織化や反対勢力排除に積極的にその威力を示そうとした。

(感想)
 現在でもユニオンショップ協定を会社と結んでいる労働組合は沢山ある。ユニオンショップとは、労働組合と会社がユニオンショップ協定を結び、採用した労働者がその労働組合に必ず加入しなければならないという制度で、加入しない、あるいは組合から脱退し、もしくは除名された場合は会社はその労働者を解雇する義務を負う。大体が大企業でその多くは御用組合であることが多い。入社した時にもともと御用組合であった労働組合への加入が義務付けられ高い組合費だけとられるというケースが一般的だ。これらの会社では、職場の長時間労働やサービス労働や非正規労働者への差別も、管理職のセクハラやパワハラもみて見ぬふりをする組合役員。組合役員に訴えたら逆に会社から虐めれる。組合員で過労死になったのに、そこの労働組合は「(過労死は)その人が労働時間を自己管理できていなかったのが原因だ」という始末だ。

 御用組合を脱退したらクビにされると怖れている皆さん!  心配ありません。職場の中でもう一つの労働組合を仲間たちと立ち上げるか、一人でも入れる東部労組やユニオンに加入すれば会社はあなたを解雇できません。これが戦前の総同盟が進めた「団体協約」とは異なる点です。とはいっても今でもユニオンショップが労働者に対する職場支配、同調圧力としての会社側、御用組合の武器として使われていることには変わりません。労働者一人一人の自由意思により団結した労働組合、会社ときちんとたたかえる戦前の先輩に負けない労働組合を作りたいですね。

以上

次回
総同盟分裂まとめ(その五) 分裂後の左右の組織化 東京鉄工組合の組織化とストライキの場合(読書メモ) 



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