コロナ禍が過ぎた現在、セミナーで最初に話題として取り上げていることからお話ししたいと思います。それは消費者の購買行動の変化についてです。コロナの最中からコロナの後、2021年年末から2024年の年始にかけて首都圏をはじめ関西圏から九州までいろいろな市場、中でも百貨店、地元スーパー、道の駅や直売所を見て回りました。巣ごもり状況の中で消費者はどのような食生活を送っているのか、食品の買い物や食事はどのように行っているのか興味があったからでもあります。強制貯蓄やリベンジ消費という言葉が日経新聞などで取り上げられましたが、年末年始緊急事態宣言が繰り返される中、解除後の消費者の動きはまさにリベンジ消費といわれるそのままで、有名外食店舗では集客もすごく予約が取れない店もありました。銀座のあるビルの9階にある「Bills」などはこんな場所なのにと思われるのですが、予約で朝食時間?の10時にはすぐに客席がいっぱいになる状況でした。コロナ禍でも集客できる店があることにまず驚かされました。工夫すれば窮地も乗り越えることができるのだと感じた次第です。それは全国のいたるところで見ることができました。単にリベンジ消費の動きではなく、消費者が本当においしいものを、今の生活を心から満足するための消費行動として楽しんでいるのだと感じました。消費者はこれでいいやというのではなく「これでなければ」という消費行動をとっているということです。インスタ映えという言葉がありますが、情報発信している人たちの声はまさに、苦しい時期をいかに乗り越え、自分なりの生活や消費を楽しむのか多くのヒントがもらえます。したたかに生きる消費行動を目の当たりにし、逆に心強く感じたものです。
ところで話は変わりますが、皆さんはアマゾンがなぜアメリカの自然食品スーパーマーケット「ホールフーズ」を買収したと思われますか。ネットの企業がなぜリアルな店舗を買収したのか。セミナーではいつもこの話題から始めます。本文の中でホールフーズの内部の写真などもご紹介しますが、アマゾンの怖さを知る必要があるというより、アマゾンの事業戦略を見続けることがこれからの流通の変化に対応できる手段になると考えられます。すでに多くのアマゾンについて語られた本が出版されており、小生のような素人が話すべきものではありませんが、流通の変化、アマゾン効果(エフェクト)などの影響を見聞きするにつれ、これからのいろいろな変化にどのように対応していくべきかを知る手掛かりになるのではと思うからです。ニューヨークやハワイ、ロスアンゼルス、サンフランシスコ、さらにはカナダのバンクーバーなどでホールフーズだけでなく有名百貨店をはじめウォルマート、コストコ、セーフウエイ、シアーズなどのスーパーを見てきましたが、世界一の小売業ウォルマートでさえ、ストアーズの名前を消し、店舗だけでなくネットでの販売で対抗せざるを得なくなった「アマゾン・エフェクト」。
日本では物流量の多さ、人材不足等からクロネコヤマトの値上げをアマゾンも飲まざるを得ない状況ですが、海外の動きを見ていると日本の物流もいつかまた変化していくのだと思わずにはいられません。アマゾンがジャンボ輸送機を何機保有しているか。ドイツなどの空港入札で空港自身を手に入れようとしていたか、実際には中国企業に入札で負けたりもしていますが、世界「地図」をにらんだ戦略は日本の物流をあっという間に変えていくと思われます。ドローンや倉庫の中などでのロボットの活用、身近では2018年10月に関西の茨木市に大型センターが開設され、2019年4月から本格的な稼働が始まりました。そうした表面的な部分の変化だけではなく、アマゾンフレッシュの動き、今後の生鮮品などの販売など、特に注目しているのは日本で業績の良いスーパーのライフやクックパッドなどとの連携の仕方、ネットで販売するためにプライム会員は月額5,900円(2024年現在値上げした金額)の手数料で可能にするなどいろいろな生鮮品などの販売に力を入れようとしている点です。
ホールフーズは売上1兆円以上の自然食品取り扱いの大型スーパーですでにネット販売のノウハウを持ち、しかもMBAのケーススタディなどにも使用される話題の豊富な企業ですが、日本のスーパーでも行われているように、店頭を倉庫代わりとして販売できるようにし、受注商品を直接店頭から新鮮なまま配達するシステムはどこの企業でも考えていること。配達内容というより、購買内容のビッグデータをアマゾンでは蓄積し分析、個人のライフスタイルを分析することで、リコメンド(お勧め)商品を提案したり、事前に届けたりいろいろなシステム上の特許を取得していることの怖さを知る必要があります。カナダのホールフーズで初めてアマゾンの「アレクサAIスピーカー」の販売されているのを見て気が付きました。アマゾンは顧客の囲い込みを目指している。そのために生鮮食品スーパーでAIスピーカーを販売、顧客のすべてのライフスタイルを把握し利便性を訴えチャーンレート(解約率)を低め、顧客の囲い込みを目指しているのだと。消費者としてうまく活用するのか、ライバルとしてどのようにそうしたアマゾンの戦略に対応していくのか、アマゾンのいろいろな「サ-ビス」を知る必要があります。プライム会員になって、サービスを活用しながら、いつの間にか彼らの「思うツボ」顧客になってしまう「怖さ」。アマゾンと組んでそのシステムを活用する農家も今後はたくさん出てくると思われます。お互いにデータをうまく活用し、どのようなWIN-WINの関係を作っていくか。アマゾンの怖さを知りその「プラットフォーム」をいかに使ってビジネスとして成功していくか。どのようにアマゾンというネット企業と、リアルな店舗を生活の中で利用していくか、我々の生活自体にも課題を投げかけられていると思われます。