1031ビジネス・コンサルティング

経営コンサルタントの目で、日々の出来事から、参考になるキーワードを取り上げて、解説したり、情報発信をします。

【3】SOCIETY5.0と農業

2024-06-17 22:48:05 | 独り言
これからの日本の農業について本来最初に触れておくべき内容かもしれないテーマはSOCIETY5.0と農業の関係かもしれません。少子・高齢化の進展による労働力不足が懸念される中、生産性の向上を図るためには高度な社会資本の有効活用が求められます。そのため国はSOCIETY5.0の推進を図っています。
 内閣府のHPで、「新たな価値の事例(農業)」として次のような内容が書かれています。(以下の番号は筆者加筆)
 「Society 5.0では、気象情報、農作物の生育情報、市場情報、食のトレンド・ニーズといった様々な情報を含むビッグデータをAIで解析することにより、「①ロボットトラクタなどによる農作業の自動化・省力化、②ドローンなどによる生育情報の自動収集、③天候予測や河川情報に基づく水管理の自動化・最適化などによる超省力・高生産なスマート農業を実現すること」「④ニーズに合わせた収穫量の設定、⑤天候予測などに併せた最適な作業計画、⑥経験やノウハウの共有、⑦販売先の拡大などを通じた営農計画の策定すること」「⑧消費者が欲しい農作物を欲しい時に入手が可能になること」「⑨自動配送車などにより欲しい消費者に欲しい時に農産物を配送すること」といったことができるようになるとともに、社会全体としても食料の増産や安定供給、農産地での人手不足問題の解決、食料のロス軽減や消費を活性化することが可能となります。」
いま我々に求められているのは限られた経営資源の有効活用であり、現在の社会基盤を活用した地域の生産性向上、サービスの充実を図り、今始まっている未来に備えることです。
 次項では少しそうした始まっている未来について触れてみたいと思います。
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参考:栽培計画表

2024-06-10 11:42:46 | 独り言

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【2】農業で儲ける・成功する

2024-06-10 11:25:14 | 独り言
①売上公式の深さを知る
 いろいろなセミナーや農家での支援を行う際、売上公式を必ず説明することにしています。農業で成功するためにはこの公式を忘れては、ご自身の事業を考えることができません。
売上公式とは、
売上=販売価格×販売数量
のことです。
いつ頃学んだ公式でしょうか。しかし、この基本公式をしっかり頭に入れて商売を行っている方のなんと少ないことでしょう。
商品を販売することによって売上が上がり、初めて利益を生むわけですが、商品の一つ一つにつけた値段が販売価格であり、その売上が利益に結び付き、そこに農家の儲けが含まれていること、そして数量は販売した数量であり、生産した数量ではないということ、当たり前のことですが、この関係をつい忘れて農家の皆さんはものづくりにのみこだわりがちです。結果、値付けが分からない、ロスが多いなどと悩む方が多く存在します。
お蔭で小生のような者でも仕事がいただけるわけですが、儲けるためにはこの基本を押さえていただきたいと思います。
 納品先が道の駅であろうとスーパーであろうと、顧客に買ってもらうためには、良い品質の商品を「お値段以上」の価値があると判断して買ってもらう必要があります。
 しかし、値段を勝手に上げるだけでは販売につながりません。そこに付加価値、「ストーリー」が無いと顧客の買おうという共感を得ることはできません。
 次の項で詳しく述べますが、価格設定で、直接生産に掛かった経費しか計算しないで値段設定をする方がいます。ご自身の時間給はいくらに設定しているのでしょうか。儲けることが悪いことではないといつもお話ししています。
「儲」の字を分解すると「信者」となります。事業を成功させるためには自らのフアンを作らないと売上は上がらず、利益にはつながらないわけですから、儲けることが悪いことではありません。年齢の高い方や女性の経営者の中には儲けることに対する罪悪感を持つ方がおられますが、そうした説明を行い理解してもらうことにしています。
では皆さんが努力して生産した商品を、どのように販売すればよいのでしょうか。
②価格設定について
競争が激しい中で勝手に値段を上げるわけにはいきませんが、最近は道の駅でもそれなりの価格設定でしっかりと新鮮な商品を販売して、利益を上げているところが増えてきました。むしろ安い価格では売っていないところが多いのではないでしょうか。生産者の名前を明示しながら、POPなどで、新鮮さやおいしさを訴求しています。
朝採りであったり、水のおいしい環境であったり、無農薬(特別栽培の表示)であったり、有機栽培であったり、いろいろな情報を提供しながら販売していることに気が付きます。生産への努力をそうした情報発信で付加価値を顧客が感じる価値つまり「顧客価値」として考えて販売しているのです。
値付けをする場合に積み上げ方式もあれば、競合農家への同調価格の設定もあります。儲けるためには、努力に見合う価格設定をしなければ利益を生み出すことはできません。そのためにはその努力を販売する商品を見れば分かるようにし、情報発信のツールなどを活用し説明する必要があります。多くの消費者・顧客にフアンを作ることで自然に販売数量が増え、売上が上がります。そのための努力をどのように商品や情報提供で行うか、それがものづくりの課題です。
ではどのように値付けをしていけばよいのでしょうか。
■販売価格を上げるためには
販売価格の設定について農家の方の多くが悩みを持っておられます。自ら直接小売業を営む方は少なく、道の駅に出品したり農協や仲介業者を通じて販売したりするやり方が多いと思います。農協では集荷した農産物に対して一定の金額を支払う方法を採っていますが、取り扱い量も多いため、農産物の等級など一定の基準で一律に価格を決め支払いを起こします。そのため、優良農家などは流通業者が直接取引を行い、囲い込むことで少々高めに仕入れを行うケースが見られます。
店頭で農家の固有名詞(名前)を使いながら販売し、農家の名前がブランドになっている事例があります。コメの販売では近年、直接農家から購入する個人客が増加しています。郵送料を支払って購入しても、生産者が分かるおいしくて安全なお米が直接手元に届くから非常に便利で、わざわざスーパーなどで買う必要がなくなります。この方式に対抗するために、流通業の店頭では小分けにしたりパッケージを変えたり、涙ぐましい努力が行われています。百貨店やスーパーなどの食品売場だけではなく、インテリアショップなど思わぬ店舗での販売がお米だけではなく、最近はいろいろな加工食品にもみられるようになってきました。
 売上公式で分かるのは、みずからの栽培面積が決まっているわけですから、収量が実は決まっているということ。したがって面積を見れば栽培している品種などで、年間売上はある程度決まってしまうということです。販売数量が決まっているのなら、売上を上げ利益を確保するためには、付加価値のある商品を作り、販売しなければ、毎年同じ売上か、むしろ少なくなりかねません。価格設定で今よりも高く販売したければ、いかに商品に付加価値をつけるか、工夫やそのための努力が求められます。
 徳島のいちご農家では大阪の中央卸市場で一粒1,000円のいちごを販売しています。「幻のいちご」として数量は少なくとも、付加価値生産をうまく生かした販売を行っているわけです。さらには少数の農家でその上を行くイチゴを栽培、その名は「さくらももいちご」です。いちごに関しては日本国内のいろいろな場所で本当に多種多数のおいしいいちごの栽培がおこなわれていますが、岐阜県羽島市の奥田農園では「美人姫」という一粒5万円もするいちごを開発販売しています。
 すべての農産物にこだわりを持って付加価値生産を行うのは、実は体力的にも費用的にも負担やコストがかかるものです。一つの畝、ある部分の果樹、努力できる範囲での付加価値生産をお勧めしています。その部分の収穫した商品に対しては、それなりの価格設定を行い、商品構成の価格帯を「松・竹・梅」などのランク付けをして販売するわけです。いわゆる「松竹梅の法則」の活用です。
 工夫し努力した分、付加価値を乗せた価格での販売を目指す一つの方法ではないでしょうか。そのランクに応じて販売先を変えることも可能ですし、一つの売場で少し高額なものから比較的価格のこなれた商品まで、いろいろな顧客を集客し販売することもできます。
③生産・販売数量について
 限られた圃場での生産数量は限られています。だからといって勝手に価格を上げても売上は上がりません。販売の現場には競争相手がいます。ではどうすれば価格を維持したり、上げながら、生産数量を増やすことができるでしょうか。
 最近では植物工場でも、例えばほうれん草の収穫が年19回ほどになっているなどとの報道があります。静岡県沼津市では菱電商事株式会社と株式会社ファームシップの合弁会社・ブロックファーム合同会社は、ほうれん草の大量生産・安定供給を実現する次世代型の植物工場「Block FARM」を建設、世界初となるほうれん草の次世代型植物工場として使用電力を削減しながら1日3トン・年間1000トンの生産量を見込んで活動しています。
面積を広げたり収穫量の拡大を目指したり、収穫効率を上げる方法はそれなりにありますが、身の丈に合った運営をしないと、人手不足で苦労したり、人件費倒れになったりします。そのうえで、生産数量=販売数量に近づけるためには、売れ残りをなくし、B級品を抑える必要があります。B級品を少なくして販売に持っていけるか、また「もったいない」からB級品をいかに活用するかも課題になります。すぐに6次産業化を頭に浮かべ、B級品を加工品にしようとするのは問題です。これに関しては後述します。

■販売数量を上げるためには
販売数量を上げるためには、面積を増やして収穫数量を上げるか、収穫効率を高めるしかありません。売上公式はシンプルですが、自らの事業をどのように維持し、拡大していくのか、事業推進の基本となるものです。
最近は販売数量を上げるために海外に進出している企業も少なくありません。
事例を挙げると、銀座農園、ジャパン・ファーム・プロダクツ等シンガポールやカンボジアなどに進出し、地元のスーパーやイオンなどの日系スーパーに販売、さらにはまたそうした地域で現地の方に農業を教える人たちが出てきています。地元で栽培したものを地元のスーパーや日系スーパーなどで販売するだけでなく、日本からも農産物や果物を輸出しています。東南アジアでは日本の商品は好評で、日本の倍から4倍近くの価格で販売されています。(2024年2月のシンガポールでの現地価格を見て驚きました。)加工品においてもしかり、現地に対応した独自の加工品ブランドで販売を行う企業もあれば、世界中同じブランドで販売している日本企業があります。ビジネスモデルとしてどのような形態で販売するか、進出するかは、それぞれの企業などの事情にもよると思われますが、大いに農業の事業化を推進していただきたいものです。
 また後述しますが、ICTなどを活用した「スマート農業」などへの挑戦も行い、オランダに負けない生産効率の高いおいしい農産物作りによる収量の拡大などにもトライしていただきたいものです。

④損益分岐点の必要性を知る
 農業生産や販売・販路開拓などいろいろなセミナーを担当する機会がありますが、農家の皆さんが課題とされるなかで価格設定の問題があります。
 よく言われるのが、「こだわりの農業を進めるたびに経費が掛かり儲からない。」「人材も不足している。」「積み上げ方式の価格設定では、競争相手に勝てない。」「取引先からはコストダウンを要求される。」などの言葉です。
あるコンサルタントの「農業で成功するためのセミナー」では固定費と変動費について学び、損益分岐点の把握の必要性について教えています。しかし農家の皆さんが、経営に関してどこまでいろいろな数値の把握をされているでしょうか。そもそも固定費や変動費をわざわざ算出して経営を見る時間はあるのでしょうか。少なくとも掛った経費は把握していると思いますから、売上からその経費を引けば、いくら儲けたかくらいは把握できます。そうすればザックリとしたご自身の売上に対する利益と儲けた利益率の把握ができます。ご自身の生活費をどれくらいほしいか目標を立てれば、それも経費に含み、その利益率で割れば、必要な年間売上が算出できます。
 仮に売上が500万円あり、掛けた経費が350万円とすれば、粗利益は150万円あったわけですが、生活費はそれで足りるでしょうか。兼業農家の多い地域では、別途収入がありますが、専業農家の皆さんは、その利益金額が年収ですから、それで生活する必要があります。売上がいくら多くても経費がそれ以上なら赤字で生活できません。倒産企業の多くが赤字補てんの借金をし、払えなくなり事業をたたむケースが見られます。計数はシンプルに把握する必要があります。
どれくらい儲けたいから、いくら販売する必要があるか、そのためには年間何をどれくらい栽培し、販売しなければならないか、それをどこで販売するか、しっかりと計画し、販路を持つことが求められます。さらにはリスク管理が求められます。最近のように自然災害が多発すると、大きな負担を強いられることになります。手元準備金も必要です。こうしたことに、先ずは計画を立て、着実に実行していく姿勢が必要です。毎日の苦労をその努力に見合う収益とするためにも、基本公式を理解し、そのために目標設定を行い、どのように事業を進めていくか、後述する農業経営におけるマーケティングの基礎知識だけは持つようにしたいものです。しかし日々の忙しさを考えると、少なくても経営に必要な数字だけでも把握する必要があります。経営をむつかしくしないことが重要です。
 農家の支援を行っていると、最近は県によっては普及員の方が「農業簿記」を教えるところも出てきています。ほとんどの農家が仕分けや記帳などの煩わしいことを嫌い、税理士さん任せにされています。それはそれで自分の事業を把握していただいておればよいのですが、自分が時給いくらで働いたことになるのか、儲けはいくらくらいになるのかなど、あいまいな方や把握していない方が多いのに驚きます。
 トラクター1台は幾らとか、米1表は何キロでいくらくらいかは、把握されていますが、事業の結果いくら儲けたのか、なかなか把握されていないのに驚きます。農業にはいろいろな支援制度があり活用することで、逆に真の利益がどれくらいになるのか、把握できない状況なのかもしれません。
 最低限自分の事業のコストがどれくらい掛っており、年間売上からそれを引くといくらになり、自分の時給は幾らと計算できるのか。生活するためには本来幾らの原価でいくら最低限儲ける必要があるのかなど把握したうえで、だからどのように自らのビジネスモデルを構築していくのか、工夫をしてもらいたいものです。
 農家の支援を行う際、農産物別に月別の生産から収穫までのガントチャート(表)を作ってもらい、それぞれの農産物ごとに販売先を数量や売上ごとに記述し、それぞれの合計から年間売上や目標設定を行うよう提案をしています。
 参考に簡単な表を載せておきますので、自らの目標設定などに自らの表の制作を行い、事業推進の参考にしてください。その際作物別の合計、販売先別の合計なども忘れないようにすることです。
 作物別の季節別生産チャートは商談会等で役に立ちます。バイヤーに年間を通じてどれほどの量が供給できるのか一目瞭然で理解してもらえます。仲間を募って、地域としての出展の際などにも役に立ちます。この表こそご自身のビジネスモデルを表しています。青色申告をされている方は、その記帳にも連動していることがお分かりになると思います。できることなら各月別・品目別に労働時間を集計しておくと、雇用やアルバイト・パートの方をどのように採用する必要があるかも把握できます。
また忘れないでほしいことは、資金繰りについてです。税理士の方に資金繰り表の作成まで依頼するとなると別途料金を要求されるかもしれませんので、ほとんどの農家の方はそこまでされる方はいません。兼業農家が多い地域などでは、裕福な方が多く、そうした資金繰りの必要はないのかもしれません。しかしいろいろな農家を訪問していると、親の代から過剰な投資で大きな負債を抱え、生活に四苦八苦されている方もいます。非常に高い料率のカードローンの支払いや多額の借入金の返済、農協のリボ払いのような借り入れ等々、料率変更や支払いの減額交渉すらできずに、寝ることもままならない日々の業務に追われ、支援の時間すらハウスの中での立ち話のような方もいました。
税理士の皆さんや普及員の方にお願いしたいのは、帳簿を付けたり栽培の支援を行うだけではなく、農家が期待している生活全般のコンサルティングをお願いしたいということです。現状で何に気を付けなければならないのか、農業を通して豊かな生活を送るための方法を、訪問の都度支援してほしいものです。農山漁村発イノベーションプランナー(旧6次産業化プランナー)のように訪問回数が制限されているよりは、毎月のように訪問できる税理士や普及員の方などのほうが、より身近で相談相手になれるのではないでしょうか。

⑤決算書をどう見るか 数字は簡単に把握し活用したいもの
事業を行う以上決算書の提出が義務付けられていますが、税理士さんに頼むだけで、いくら今季利益があり税金はどれくらい収めたのか、もしくはどれくらい返ってくるのか、皆さんは興味をまずどこに持たれるでしょうか。
コンサルタントが事業経営を見る場合にどこに目を付けるのか少し考えてみたいのですが、大手コンサル会社のように細かく細部にわたって検討していくのではなく、瞬間的にどの項目を見て、状況把握をしているかを考えてみたいと思います。
我々が知りたいのは農家の皆さんが現在どのような状況になっているのか、それはどのような流れからきているのか、せめて3期分の内容把握を行い比較します。
損益計算書の売上高、売上原価、販売管理費の内容、減価償却費、人件費、営業利益、それに貸借対照表では短期・長期の借入金などの項目を見ます。
 つまり、いくら経費を掛けてその事業を行い、どれくらいの売上を上げ、いくら儲けているのか、その事業を行う上でいくら借金をしているのか、そこのところを知りたいわけです。それをだいたい3期分、決算ごとの流れを見ていくことで、どこに良い理由、悪い理由があるのかを判断していきます。流れを読むことは必ず行ってほしい作業の一つです。そのうえで、毎期ごとに売上総利益率など自らパーセントで把握すべき項目を出して比較してほしいと思います。
その比較を行うことが絶対額を見るよりも大切かもしれません。つまり粗利益率とも言いますが、売上総利益率がどのように変化しているのか、増減を見ながら取引相手との交渉、経費率の変化を見ることによる、経費削減項目の見直しなど、経営者としての目も養ってほしいと思います。大切なのはポイントを押さえて経営判断を行うことです。
本来なら月次決算を行いながら、事業にいそしんでいただきたいのですが、農業に関しては月中での数字把握はむつかしいと思います。しかし営業するということは月半ばで、その月の終わりの結果がどのようになるのか、売上動向を把握しながら次の手を考える必要があるのです。近隣スーパーなどでの催事販売などに参加したり、軽トラ市に参加するなど自ら売りに出るなど工夫が必要です。せっかく努力し栽培した農産物を残さず、売り切るためには栽培の途中途中で、つまりは月の半ば半ばで販売の状況を把握しながらいろいろな手段を講じる必要があるということです。観光農園などの支援でも、期間が短い場合などでも期中管理をすることで、追加の集客対策を練ることなどを提案しています。
⑥経営分析
 この項では少し細かく経営分析もしくは財務分析といわれる内容について触れておきたいと思います。いろいろな補助金の申請や審査において、重要なのは経営する企業における収益性、安全性、成長性、生産性などの経営内容を把握すること、もしくはそうした指標を把握して経営に活かしていること、今後に生かすことが重要です。
参考までに中小企業基盤整備機構のHPにある経営自己診断システムをご紹介します。実際のコンサルティングでも活用できるシステムです。自園や自社の状況を素早く知ることができます。同業者の中での位置づけなども知ることが可能です。
経営分析行うにあたっては財務諸表(貸借対照表、損益計算書等)を手元に、各項目の比率分析や実数分析を行います。従業員数や労働時間数などの把握も必要です。個人経営の場合でも、少なくとも上表の数字だけは把握し分析を行うようにしたいものです。
 近年指導員の皆さんも農業簿記を学び、栽培だけでなく農業経営などへのアドバイスなどに役立てるようになってきています。農業簿記は減価項目の特殊性もあり、材料費などは種苗費・素畜費・肥料費・飼料費・農薬費・諸材料費んどに細分化されており、製造原価報告書の内訳などは本来、労務費や製造経費に加えこれらの材料費が区分されています。
 年末や決算でせっかく作成した財務諸表ですから、指標分析を行い、次年度の事業に活かしていきたいもの、そのためには毎年作成を継続し、分析した指標などはベンチマーク(他社分析との比較)を行い、経営に生かしてほしいものです。

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【1】農業の基本

2024-05-27 10:30:01 | 独り言
①食へのこだわり 
 農業に携わる皆さんは生産者であり、また消費者でもあります。私も歳を取るにつれ食に対するこだわりが増し、コロナ禍以降おいしい食を探し求めていろいろなお店で自慢のメニューを味わって楽しんでいます。若い方たちのようにインスタでの情報発信はしていませんが・・・。
皆さんがちょっとこだわった食事を楽しもうと思い、レストランに行ったとします。その店のシェフやオーナーは、どのようなこだわりを持って、その店のメニューを提供しているでしょうか。
 お店のメニューやHPなどで、どのような言葉でそのこだわりを表現しているのか、そして写真やパンフレットなどで、どのようにその「味」を表現しているのか。一流のお店になると、丁寧にそのこだわりを表現してくれていますし、最近の「食べログ」などの情報提供ネットのグルメサイトなどで店舗検索すると、メニューだけでなく部屋の内部やトイレの様子まで店舗内情報を細かく教えてくれます。
 ミシュランで三ッ星を受けているレストランのHPなどを見ると、地元産の食材、生産者の紹介、おかれた環境の中でのものづくりへのこだわり、農薬や肥料、水に対してまでも、提供する「味」に対してのこだわりを表現しています。   
 皆さんは客としてどのような部分に共鳴しその店を利用しているでしょうか。提供されたお店の調理法、メニューの味付け、食材に対するおいしさはもちろん、その食材の栽培環境、加工の安心・安全、提供される器や盛り付け、部屋の雰囲気などいろいろな部分にこだわりを持って訪問していないでしょうか。
 若い方たちは、ネット検索し、その店を探すことを楽しみ、お店での食事の時間や空間、そして味、会話等を楽しみます。さらには食後の感想や写真をインスタグラムにあげSNSなどでシェアするなど、多種多様な食事の楽しみ方があり、その楽しみ方も時代とともに変化しています。「インスタ映え」がキーワードにさえなっています。そうした変化に気づいて、食や情報を提供しているお店こそ、多くのフアンを集めているのです。
②どこで食べる
 辻調理師学校の先生に教えていただきましたが、ミシュランのフランスでの星の数と日本の数は実は総数で日本の数が多いとのこと。
 それだけおいしいレストランに恵まれている日本、それならそうした店でどのような食材がどのようなこだわりで使われ、どのように提供されているのか、学ばない手はありません。そこに多くのヒントが隠されている気がします。
地元〇〇さんの旬野菜、水がおいしい、農薬不使用、それこそシェフが消費者に訴えるキーワードが並んでいます。消費者がその言葉に共感し、おいしさにリピーターとなってその店を有名にしていきます。そうした連鎖を生むキーワードは何か、それを理解し実現することが生産現場に最も必要なことではないでしょうか。コロナ禍でも野菜の旬ギフト売れていたようですが、パッキンに購入者への感謝の言葉を書いたり、野菜の彩に工夫を加えインスタ映えを狙ったり、今一段と工夫がされています。
 展示会や商談会などでFCP商談会シートを拝見する機会が非常に多いのですが、展示会会場でほとんどの農家はただおいしいから食べてほしい、買ってほしいとバイヤーに話し、ご自身が努力して生産したモノづくりの「ストーリー」についての話はほとんどありません。
 農家の皆さんは農業生産やものづくりの現場でどのようなこだわりを持って、日々の生産にいそしんでいるでしょうか。
 消費者目線で生産する必要性をどこまで感じているかによって、販売の店頭での売上に差が出ます。生鮮品でも加工品でも、そこに「顧客価値」を意識した「ものづくりのストーリー」が無ければ、消費者に受け入れてもらうことができません。後述しますが、この本では一貫して「顧客価値」への認識と、「ものづくりのストーリー」の重要性を説明して参ります。
 しかし結果として農業も経営ですから利益を生む必要があります。過剰な投資や出資が首を絞めてはせっかくの努力が水の泡となります。
6次産業化への挑戦に際し、コンサルから販路を約束してもらい700万円という費用を請求された農家があります。商品のブランド化、チラシ、パッケージなどデザイン的には優れた提案であっても、商品の価格が1,000円未満の商材で、資金の回収だけで何年かかるというのでしょうか。
 身の丈投資の必要があります。かっこいい提案に金額の多寡も忘れ飛びついて苦労をする農家が小生だけでなく、知り合いのプランナーの支援先にもありました。
 農業マーケティングとういう言葉があるのか分かりませんが、難しいことは分からずとも、商売の基本は押さえておきたいものです。
 では、どのようにして農業で儲けることができるのか、先ずはそのあたりから話を進めていこうと思います。

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シン・農業読本 コラム

2024-05-24 14:49:12 | 独り言
 コロナ禍が過ぎた現在、セミナーで最初に話題として取り上げていることからお話ししたいと思います。それは消費者の購買行動の変化についてです。コロナの最中からコロナの後、2021年年末から2024年の年始にかけて首都圏をはじめ関西圏から九州までいろいろな市場、中でも百貨店、地元スーパー、道の駅や直売所を見て回りました。巣ごもり状況の中で消費者はどのような食生活を送っているのか、食品の買い物や食事はどのように行っているのか興味があったからでもあります。強制貯蓄やリベンジ消費という言葉が日経新聞などで取り上げられましたが、年末年始緊急事態宣言が繰り返される中、解除後の消費者の動きはまさにリベンジ消費といわれるそのままで、有名外食店舗では集客もすごく予約が取れない店もありました。銀座のあるビルの9階にある「Bills」などはこんな場所なのにと思われるのですが、予約で朝食時間?の10時にはすぐに客席がいっぱいになる状況でした。コロナ禍でも集客できる店があることにまず驚かされました。工夫すれば窮地も乗り越えることができるのだと感じた次第です。それは全国のいたるところで見ることができました。単にリベンジ消費の動きではなく、消費者が本当においしいものを、今の生活を心から満足するための消費行動として楽しんでいるのだと感じました。消費者はこれでいいやというのではなく「これでなければ」という消費行動をとっているということです。インスタ映えという言葉がありますが、情報発信している人たちの声はまさに、苦しい時期をいかに乗り越え、自分なりの生活や消費を楽しむのか多くのヒントがもらえます。したたかに生きる消費行動を目の当たりにし、逆に心強く感じたものです。
 
ところで話は変わりますが、皆さんはアマゾンがなぜアメリカの自然食品スーパーマーケット「ホールフーズ」を買収したと思われますか。ネットの企業がなぜリアルな店舗を買収したのか。セミナーではいつもこの話題から始めます。本文の中でホールフーズの内部の写真などもご紹介しますが、アマゾンの怖さを知る必要があるというより、アマゾンの事業戦略を見続けることがこれからの流通の変化に対応できる手段になると考えられます。すでに多くのアマゾンについて語られた本が出版されており、小生のような素人が話すべきものではありませんが、流通の変化、アマゾン効果(エフェクト)などの影響を見聞きするにつれ、これからのいろいろな変化にどのように対応していくべきかを知る手掛かりになるのではと思うからです。ニューヨークやハワイ、ロスアンゼルス、サンフランシスコ、さらにはカナダのバンクーバーなどでホールフーズだけでなく有名百貨店をはじめウォルマート、コストコ、セーフウエイ、シアーズなどのスーパーを見てきましたが、世界一の小売業ウォルマートでさえ、ストアーズの名前を消し、店舗だけでなくネットでの販売で対抗せざるを得なくなった「アマゾン・エフェクト」。
日本では物流量の多さ、人材不足等からクロネコヤマトの値上げをアマゾンも飲まざるを得ない状況ですが、海外の動きを見ていると日本の物流もいつかまた変化していくのだと思わずにはいられません。アマゾンがジャンボ輸送機を何機保有しているか。ドイツなどの空港入札で空港自身を手に入れようとしていたか、実際には中国企業に入札で負けたりもしていますが、世界「地図」をにらんだ戦略は日本の物流をあっという間に変えていくと思われます。ドローンや倉庫の中などでのロボットの活用、身近では2018年10月に関西の茨木市に大型センターが開設され、2019年4月から本格的な稼働が始まりました。そうした表面的な部分の変化だけではなく、アマゾンフレッシュの動き、今後の生鮮品などの販売など、特に注目しているのは日本で業績の良いスーパーのライフやクックパッドなどとの連携の仕方、ネットで販売するためにプライム会員は月額5,900円(2024年現在値上げした金額)の手数料で可能にするなどいろいろな生鮮品などの販売に力を入れようとしている点です。
ホールフーズは売上1兆円以上の自然食品取り扱いの大型スーパーですでにネット販売のノウハウを持ち、しかもMBAのケーススタディなどにも使用される話題の豊富な企業ですが、日本のスーパーでも行われているように、店頭を倉庫代わりとして販売できるようにし、受注商品を直接店頭から新鮮なまま配達するシステムはどこの企業でも考えていること。配達内容というより、購買内容のビッグデータをアマゾンでは蓄積し分析、個人のライフスタイルを分析することで、リコメンド(お勧め)商品を提案したり、事前に届けたりいろいろなシステム上の特許を取得していることの怖さを知る必要があります。カナダのホールフーズで初めてアマゾンの「アレクサAIスピーカー」の販売されているのを見て気が付きました。アマゾンは顧客の囲い込みを目指している。そのために生鮮食品スーパーでAIスピーカーを販売、顧客のすべてのライフスタイルを把握し利便性を訴えチャーンレート(解約率)を低め、顧客の囲い込みを目指しているのだと。消費者としてうまく活用するのか、ライバルとしてどのようにそうしたアマゾンの戦略に対応していくのか、アマゾンのいろいろな「サ-ビス」を知る必要があります。プライム会員になって、サービスを活用しながら、いつの間にか彼らの「思うツボ」顧客になってしまう「怖さ」。アマゾンと組んでそのシステムを活用する農家も今後はたくさん出てくると思われます。お互いにデータをうまく活用し、どのようなWIN-WINの関係を作っていくか。アマゾンの怖さを知りその「プラットフォーム」をいかに使ってビジネスとして成功していくか。どのようにアマゾンというネット企業と、リアルな店舗を生活の中で利用していくか、我々の生活自体にも課題を投げかけられていると思われます。
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